肩関節の評価を大きく3つに分けて考えた場合、①関節可動域の評価②筋力の評価③疼痛の評価に分ける事が出来ます。その中で①関節可動域の評価について説明を行います。 関節可動域制限の評価を行う時、肩甲上腕関節(以下GH)、胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲胸郭関節の制限因子も考える必要があります。その中で最も考える必要があるのがGHです。関節可動域の運動方向で屈曲・外転・伸展・水平屈曲・水平伸展の可動域を測定し、日常生活活動動作(ADL)と関係のある結髪動作、結帯動作時に制限があるのか確認を行い、更に詳細に肩関節のどの部位で拘縮があるのか特定するのに1st肢位(下垂位)での内旋・外旋、2nd肢位(90°外転位)での内旋・外旋、3rd肢位(90°屈曲位)での内旋・外旋を計測します。計測時は肩甲骨を固定しGHに他の関節の代償が入らない様に注意して行います。拘縮部位の特定を行い触診、メカニカルストレスを加え疼痛の出現の有無を確認します。肩関節疾患の評価では肩関節可動域がどの肢位で制限があり、その制限角度からどの様な要因があるのか推察していく事が重要です。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
膝関節は可動性と安定性の両方が必要とされる関節です。つまり膝関節に靱帯が多い理由は関節の安定性と関節の自由な動きの獲得、そして制動された動きの誘導の為と考えられます。膝関節には前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があります。前十字靭帯は大腿骨に対して脛骨が前方に引き出されるのを制動する作用があります。後十字靭帯は大腿骨に対して脛骨が後方に引き出されるのを制動する作用があります。内側側副靱帯は回旋・外反の制動作用、外側側副靭帯は回旋・内反制動作用があります。日常生活上の動作では荷重関節であるため安定性と同時にある程度の自由な動きが求められると考えられます。 膝関節は静的安定化作用である靱帯・関節包・骨と動的安定化作用である筋・腱などがバランスよく存在し膝関節の機能向上に関与しています。膝関節の屈曲、伸展においても屈曲は内旋をしながら最大屈曲時に大腿骨と脛骨、軟部組織が挟み込み接触(骨性のロック)することにより、最終屈曲となります。伸展は外旋をしながら最終伸展域に近づき最終伸展時に膝関節後方にある靱帯(ファベラ腓骨靱帯・弓状膝窩靱帯・斜膝窩靱帯・膝窩筋腱)が制動の役割を果たします。膝関節後方靱帯に不安定性が出現した場合、理学療法では動的安定化作用に働く筋機能を向上させます。その他にテーピング、足底板、装具なども考慮して理学療法を進めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
滑液包は水分(滑液)が閉じ込められた閉塞性の膜状の組織です。脂肪体は皮下脂肪の脂肪組織とは違う柔軟性があり流動性のある脂肪組織です。人間の身体はバラバラになっている骨が関節包、靱帯、筋で繋がり筋が収縮することにより、骨が関節構成体として動き関節機能が働きます。関節構成体の軟部組織が動いた場合、腱と骨、靱帯と骨の組織間では摩擦、ストレス、損傷が起きます。常に軟部組織は損傷の危険に晒されています。人の生体防御反応として少しでも、そこにかかる負担を減少させようと滑液包、脂肪体が効果的に存在します。身体の中でも安定性と可動性が求められる膝関節は脂肪体、滑液包ともに豊富に存在します。また、豊富に存在する両軟部組織は疼痛の要因にもなります。 理学療法は脂肪体、滑液包が拘縮、癒着によりメカニカルストレスに対して疼痛を発症した時、柔軟性、滑走性の獲得を目的に癒着剥離操作、筋の収縮・滑走性促進などの治療を進めます。滑液包炎などケミカルストレスに対しては注射など医師の治療が必要となります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
膝関節前十字靭帯(ACL)は脛骨が前方に引き出されることを防ぐ靱帯です。膝関節前十字靭帯(ACL)損傷は膝関節の外傷の中でも重症疾患の1つです。前十字靭帯(ACL)損傷は再建術を行うことが多く半腱様筋、薄筋で作る再建靱帯または骨付き膝蓋腱の再建靱帯を使用して施行されることが主流となっています。受傷者はバスケットボール、バレーボールなどスポーツを日常的に行っている10代の女性が多く、治療はほぼ再建術へと進めて行きます。 理学療法では再建靱帯の保護を最優先として理学療法を行います。理学療法の治療内容、メニューとしては膝関節の機能向上を目的に可動域の改善、筋力向上(再建靱帯使用で半腱様筋のない内側ハムストリングスを中心に)を行い、その他にバランス向上、筋の協調性向上、筋出力の改善、深部感覚の改善などを行います。重要なことは再建靱帯が再び断裂しないように注意を払うことです。膝関節の機能向上は無論、術後3か月未満の再建靱帯が脆弱な期間および9~10か月の修復停滞期間での慎重な行動等の指導を含め理学療法を進めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
疼痛は侵害受容器の刺激により神経を介して大脳で認識され痛みとして感じられます。疼痛を感知する神経にはAδとC線維があります。Aδ線維の方がC線維と比較して太さ、伝達速度ともに、上回っています。(Aδ線維:太さ2~5μm、伝達速度12~30m/s 、C線維:太さ0.4~1.2μm、伝達速度0.5~2m/s)です。例えば足趾の小指をイスの角で接触した時、最初に痛いと激痛を感じ、その後、じんわりとジンジン痛くなる理由として最初の激痛(早い疼痛)ではAδ線維が関与し、次にC線維がジンジンとした痛み(遅い疼痛)を伝えるからです。 理学療法では疼痛がどの様な場合で働くのか評価を行います。「チクチク」「ピリピリ」する疼痛なのか、「ジンジン」する疼痛なのか、針で刺した様な疼痛なのか、重だるい疼痛なのか疼痛の種類と疼痛が出現する状況を丁寧に聞いて行きます。治療を進める上で疼痛の解釈をどう捉えるのか考察する事が重要であると言えます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |