リハビリ通信 No.354 頚椎と姿勢について

2023年02月09日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

頸椎は7つの椎骨があり、第1頸椎は環椎、第2頸椎は軸椎と呼ばれ形態が他の頸椎の椎骨とは違います。第1、2頸椎は頭部を支え、あらゆる方向に動かすために特殊化され球関節と類似しています。

背中が丸くなった姿勢(胸椎が後彎)をすると頭部は前方に突出し平衡を保とうと下位頸椎は屈曲し上位頸椎は過伸展します。頭頚部(後頭下筋群・僧帽筋上部線維・肩甲挙筋)肩甲帯(胸鎖乳突筋・大胸筋・小胸筋・菱形筋・前鋸筋上部線維)は過緊張し、頭頚部の(頭長筋・頸長筋・前頭直筋・外側頭直筋)肩甲帯(僧帽筋中・下部線維、前鋸筋中・下部線維)は弱化します。

理学療法では胸椎の柔軟性を含めた頸椎軟部組織の改善、治療を行います。また、self exも合わせて実施し、脊柱(頸椎・胸椎)の姿勢を良肢位になるように理学療法を進めます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.353 アキレス腱炎について

2022年12月06日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

アキレス腱炎はアキレス腱実質部、アキレス腱付着部周囲2~6cmでの障害、炎症です。アキレス腱付着部2~6㎝近位は血流の少ない部位があり、アキレス腱実質部は腱鞘に包まれておらずパラテノンという膜に覆われています。アキレス腱自体はストレスを受けやすく付着部にかかる牽引ストレスはとても大きいのですが、解剖学構造(enthesis organ wrap around 構造、滑液包、Kager’s fat pad脂肪体、アキレス腱付着部での捻じれ構造)で強い牽引ストレス、つまり力学的ストレスの分散作用と栄養血管を供給する作用があります。しかし、アキレス腱炎・障害の患者さんは何らかの要因によりアキレス腱に負担がかかり炎症を惹起していると考えられ、理学療法ではアキレス腱周囲部、股・膝・足関節全体を評価し筋の柔軟性低下によるものなのか、その他軟部組織(脂肪体、靱帯)の癒着・拘縮、滑液包の炎症、距骨下関節の拘縮などを考えます。同時に足底板・インソールの処方も考えて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.352 小児の肘骨折について

2022年10月30日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

小児肘関節周辺骨折は小児の全骨折の5~10%を占めています。肘周辺骨折の中でも多い順から①上腕骨顆上骨折(50~70%:4~7歳に好発)、②外側顆骨折(10~20%:4~10歳に好発)、③内側上顆骨折(8~10%:7~15歳に好発)です。小児の肘関節は軟骨成分が多く主体になっています。受傷時の負荷は脆弱な部分に伝わり骨折に至ります。また、軟骨成分のため、成長過程において骨端核が出現し、位置・形態などの理解が必要です。

理学療法では小児の骨折に対する知識・理解が必要であり、理学療法の対象が小児であるため治療時にとくに疼痛を出さない様に理学療法を進める工夫が重要です。疼痛を出現させた場合、理学療法を拒否される可能性がある事と精神的に未熟な小児では治療での疼痛が情緒不安にさせてしまうため注意深く肘の関節機能解剖(軟部組織の癒着剥離操作、肘関節周囲筋の収縮)を踏まえて理学療法を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.351 肩関節の評価(関節可動域)について

2022年10月09日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

肩関節の評価を大きく3つに分けて考えた場合、①関節可動域の評価②筋力の評価③疼痛の評価に分ける事が出来ます。その中で①関節可動域の評価について説明を行います。

関節可動域制限の評価を行う時、肩甲上腕関節(以下GH)、胸鎖関節、肩鎖関節、肩甲胸郭関節の制限因子も考える必要があります。その中で最も考える必要があるのがGHです。関節可動域の運動方向で屈曲・外転・伸展・水平屈曲・水平伸展の可動域を測定し、日常生活活動動作(ADL)と関係のある結髪動作、結帯動作時に制限があるのか確認を行い、更に詳細に肩関節のどの部位で拘縮があるのか特定するのに1st肢位(下垂位)での内旋・外旋、2nd肢位(90°外転位)での内旋・外旋、3rd肢位(90°屈曲位)での内旋・外旋を計測します。計測時は肩甲骨を固定しGHに他の関節の代償が入らない様に注意して行います。拘縮部位の特定を行い触診、メカニカルストレスを加え疼痛の出現の有無を確認します。肩関節疾患の評価では肩関節可動域がどの肢位で制限があり、その制限角度からどの様な要因があるのか推察していく事が重要です。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.350 膝関節と靱帯の制動性について

2022年08月04日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

膝関節は可動性と安定性の両方が必要とされる関節です。つまり膝関節に靱帯が多い理由は関節の安定性と関節の自由な動きの獲得、そして制動された動きの誘導の為と考えられます。膝関節には前十字靭帯(ACL)、後十字靭帯(PCL)、内側側副靱帯(MCL)、外側側副靭帯(LCL)があります。前十字靭帯は大腿骨に対して脛骨が前方に引き出されるのを制動する作用があります。後十字靭帯は大腿骨に対して脛骨が後方に引き出されるのを制動する作用があります。内側側副靱帯は回旋・外反の制動作用、外側側副靭帯は回旋・内反制動作用があります。日常生活上の動作では荷重関節であるため安定性と同時にある程度の自由な動きが求められると考えられます。

膝関節は静的安定化作用である靱帯・関節包・骨と動的安定化作用である筋・腱などがバランスよく存在し膝関節の機能向上に関与しています。膝関節の屈曲、伸展においても屈曲は内旋をしながら最大屈曲時に大腿骨と脛骨、軟部組織が挟み込み接触(骨性のロック)することにより、最終屈曲となります。伸展は外旋をしながら最終伸展域に近づき最終伸展時に膝関節後方にある靱帯(ファベラ腓骨靱帯・弓状膝窩靱帯・斜膝窩靱帯・膝窩筋腱)が制動の役割を果たします。膝関節後方靱帯に不安定性が出現した場合、理学療法では動的安定化作用に働く筋機能を向上させます。その他にテーピング、足底板、装具なども考慮して理学療法を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸