上肢が挙上をする時、肩関節では上腕骨大結節部(棘上筋・棘下筋・小円筋が付着する骨隆起)が肩甲骨の肩峰下をくぐり抜け中へ滑り込み、徐々に最大挙上(肩関節屈曲180°)に近づくと上腕骨大結節部が外旋をしながら後方へ出て行きます。 つまり肩関節屈曲位と外転位、二つの動きの挙上範囲が肩関節の関節窩と上腕骨頭の動きで言えば、烏口突起〜肩峰の範囲と言えます。烏口突起に近い挙上経路(anterior path)は屈曲内旋位での挙上、肩峰下での挙上経路(posterolateral path)は外転外旋位挙上と考えます。 肩関節周囲炎により拘縮・癒着があり大結節が肩峰下に滑り込めず、正常な動きが出来ない場合、どの部分が原因で上腕骨頭が動けないのか評価し改善することを理学療法では進めていきます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
立ち上がり動作や歩行では、自分の身体をしっかり支持するだけの下肢筋力が必要となりますが、その下肢筋力が低下し、支持が少し困難な方、支持できないために動作が不安定な方がおられます。当院にも各動作が不安定な方が来院され、そのような方が院内を移動する際、スタッフが動作の介助をさせていただくことがあります。そのため、当院ではミーティングの際に「動作介助のコツ」について情報共有し、安全に介助する上で注意すべき点を意識するようにしています。 ヒトが立ち上がる際、両足を地面につき、その両側の足底面で身体を支えますが、その際に「身体重心(図1)がどのような位置に存在するのか」ということが非常に重要となります。この重心が両側の足底とその間のスペース(図2)で構成される面(「支持基底面」といいます)の中におさまっていれば安定して立ち上がることができます。しかし、介助方法が不適切で、身体重心がこの支持基底面から逸脱しているとふらついたり、場合によっては転倒につながってしまうことがあります。そのため、立ち上がり動作を介助する際には、介助される方に前屈みとなっていただき、身体重心を支持基底面内に移動させた状態で立ち上がり動作の介助するようにしています。 このようにして、当院ではスタッフ全員で情報共有し、より安全に来院していただけるように努めています。 リハビリテーション科 小野正博 |
理学療法の運動療法を行う時に筋を収縮させ治療を進めますが、筋の収縮方法が大きく2つに分かれます。等張性収縮と等尺性収縮です。等張性収縮には求心性収縮と遠心性収縮があります。重い物を持った時に関節を近づけ筋が縮みながら収縮することを求心性収縮と言い、筋が伸張しブレーキをかけながら収縮することを遠心性収縮と言います。等尺性収縮は関節が一定の位置を維持し、固定された関節の状態で筋が収縮することを言います。 各々に治療を行う目的によって使用方法も変わります。基本的に理学療法士の治療対象は軟部組織です。自ずと出来ることも限られ、関節可動域の改善、筋力の向上、バランスを覚えさせることが主な治療になると考えられます。筋の形状、走行、構造、機能を理解し動かし方、つまり、収縮方法を適切に行うことはとても重要です。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
病院では様々な治療が行われており、その治療に関して意義や方法、治療行為におけるリスク、メリットとデメリットなどといった事を私達医療従事者は患者様にしっかり説明しなければなりません。わかりやすく、丁寧で、患者様にご理解いただけるような説明が必要となってきます。 しかし、実際は使い慣れた専門用語を交えて説明してしまったり、説明したつもりでも相手に伝わっていないといったことがあります。そのため、当院では朝礼の際に主治医、看護師、理学療法士、受付スタッフ、リハスタッフの方々で、各自が説明方法に意識を向けることができるように、具体的な事例を少し交えながら知識の共有や丁寧な言葉の確認などを行っています。 当たり前のことではありますが、こういった事を日々確認していくことが重要であるため、院内スタッフで取り組んでいます。 リハビリテーション科 小野正博 |
膝関節は屈曲制限よりも伸展制限を改善する方が重要になります。とくに膝関節完全伸展を獲得することは膝の治療を考える上で最も難しく重要であると思われます。 日常生活の活動動作で立位保持、立ち上がり動作、歩行は必ず行われ必要です。しかし、完全屈曲である正座が出来なくても日常生活上では、困ることは少ないと考えられます。 膝関節完全伸展位、つまり立位姿勢の場合、解剖学的に大腿骨と脛骨による支持性が起き、骨のロックによる安定性が確保されています。また、膝関節は靱帯の関節とも呼ばれ、「内側側副靭帯、外側側副靭帯、前十字靭帯、後十字靭帯」の4つの靱帯が骨による支持性と共に静的安定化機能として働きます。例えば変形性膝関節症の患者さんに伸展制限がある場合(スクワットが続いている状態)、活動動作時に常に筋が働き負担がかかっています。つまり損傷・炎症が常時、関節、軟部組織に起こり疼痛が誘発されます。 理学療法では膝関節の伸展制限を改善することにより、静的安定化機能を促し膝関節の支持性および安定性を高めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |