膝関節には4つの靱帯があります。内側側副靱帯、外側側副靭帯、膝関節前十字靭帯、膝関節後十字靭帯です。特に重要な靭帯は前十字靭帯です。前十字靭帯は脛骨の前方への移動、つまり前方への引き出し制動作用があります。 近年、前十字靭帯が損傷した場合、二重束での再建術(半腱様筋腱を用いた再建靱帯)か、BTB(膝蓋骨付着膝蓋腱を用いた)の一束再建靱帯による手術が多いようです。二重束での解剖学的再建術(半腱様筋腱使用の再建靱帯)は再建靱帯を2束使用します。 前十字靭帯の前内側線維束(AMB:anteromedial bundle)・後外側線維束(PLB:posterolateral bundle)の2つの移植腱の働きを考慮して設置します。前内側線維束(AMB:anteromedial bundle)は相対的に膝関節屈曲位において緊張し主に屈曲位で前方制動性に関与します。一方、後外側線維束(PLB:posterolateral bundle)は相対的に伸展位において緊張し、伸展位で前方および回旋制動性に関与します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
参考文献:膝MRIより
半月板の役割は大腿骨の接合部の安定性と荷重分散、衝撃吸収、関節軟骨の保護です。 半月板は内側半月板と外側半月板があり、内側半月板はC型をしていて、外側半月板はO型に近い形をしています。外側半月板の幅は前方から後方にかけて一定ですが、内側半月板は前方に比べ後方の幅も広く、高さも高いようです。内側半月板の辺縁部は内側側副靭帯(MCL)深層と関節包へ比較的強固に結合し、後方辺縁部では半膜様筋腱と内側半月板が線維結合し膝関節屈曲時に大腿骨と半月板の引っかかり(インピンジメント)が起きないように半膜様筋腱が働き、内側半月板を後方に引っ張る作用が起きます。反対に外側半月板では関節包への結合が弱く背側部の膝窩筋腱溝部ではわずかな線維で関節包に支持されています。膝関節の屈曲・伸展に伴う半月板の動きは内側に比較して極めて大きいようです。外側半月板も内側半月板と同じく動的安定機能があります。膝窩筋が収縮することにより外側半月板が後方に引き出され大腿骨と半月板のインピンジメントを防止しています。 半月板の疾患で円板状半月(discoid meniscus)があります。東アジアに多いと言われています。胎生期の半月板形成過程でC字型の中央部が吸収されずに遺残し円板状を呈します。円板状半月は圧倒的に外側半月板に多く、正常な半月板に比べて変性や断裂の頻度が高く、軽微な外力で損傷をします。小児の誘因の無い膝痛で発見される事が多いようです。その他に膝関節の可動域制限、膝が外れるような脱臼感、引っかかりが起きるロッキング現象が生じます。また、手術になった場合、正常な半月板に形成する切除術を関節鏡視下で行います。理学療法の治療では膝関節の機能を考え半月板の動きを筋の収縮を促すことで引き出し可動域制限、疼痛など膝関節の機能を改善します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
intrinsic plus (イントリンシックプラス)
intrinsic minus(イントリンシックマイナス) 手関節に関する筋は大きく分けて2つの筋に分類できます。手内在筋(intrinsic muscles)と手外在筋(extrinsic muscles)です。手指・手関節の巧緻動作を行う時は手内在筋と手外在筋がお互いに協調し合い、握る・つまむなどの一連の動作を行います。手内在筋が優位に働く肢位を intrinsic plus (イントリンシックプラス)、手外在筋だけが働く肢位をintrinsic minus(イントリンシックマイナス)と言い、各々の肢位で働く筋力を上手に練習に組み込み、手内在筋と手外在筋を協調して働かせるように練習を行えば筋出力(握力)は改善します。 手指の手外在筋の屈筋腱には腱の浮き上がりを押さえる靱帯性腱鞘と言うトンネルがあります。屈筋腱と靱帯性腱鞘の間で炎症が起こると指の付け根に疼痛、腫れ、熱感が生じます。これを腱鞘炎と呼び、進行するとばね現象が生じます。これがばね指です。ばね指はMP関節を曲げながら手を使うことにより手外在筋に負担がかかり、腱自体が肥厚し発症します。MP関節を曲げずに手外在筋だけが働けば、(intrinsic minus肢位でDIP・PIPが屈曲・伸展を行う)腱鞘炎も起こりにくいと言われ、ばね指は発症しないと言われています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
(コトバンクより)図を一部改変
握るという動作を行う時、様々な場面が考えられます。水の入ったバケツ、やかん、掃除機など、握る力を入れつつ持ち上げる動作を同時に行います。公共交通機関の乗車時に手すりを握る、鉄棒などを握りながら自分の身体を引き寄せ固定するなど、その時の状況により、強く握ろうとする時、人は無意識に手関節を背屈位にして前腕屈筋群を効率よく働かせるような肢位をとります。また、更に強く握る時、手内在筋をより良く働かせるために、手掌正面から見て示指、中指MP関節を中心に環指、小指MP関節が下にまわる様に下がって手掌内横アーチを形成します。 握る動作時に強く筋出力を発揮させるには手関節が背屈位になり手掌内MP関節の横アーチを保持し効率よく各々の筋が、働きやすい様に環境を整えています。骨折、手術等で拘縮になり、可動域制限を呈して、握る動作ができない患者さんの理学療法を行う場合、手関節、手指は無論、手掌内アーチも意識して治療を進めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
手関節には背屈、掌屈、橈屈、尺屈の動きがあります。背屈、掌屈は橈骨と近位手根骨からなる橈骨手根関節と手根骨の中間にある手根中央関節の2つの関節の合成された動きで成り立ちます。 理学療法士は拘縮で可動域制限がある場合、治療時に橈骨手根関節と手根中央関節の両方の動きを改善する様にアプローチを進めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |