肩関節は棘上筋・棘下筋・肩甲下筋などcuff筋とouter muscleの三角筋、肩甲骨を固定する時に働く僧帽筋中部線維・下部線維、菱形筋、前鋸筋などの肩甲骨固定筋との協調した働きで挙上が可能となります。腱板断裂、腱板損傷が起きた時、棘上筋・棘下筋などcuff筋が上肢挙上時に上腕骨頭を関節窩に引き寄せcuff筋の働きを中心とする支点形成が、できにくい状態になります。つまり上肢が挙上する時に必要なouter muscle、肩甲骨固定筋、cuff筋の協調した働きが起こりにくい状態になり、上肢挙上が不可能になります。 肩関節の解剖学的機能としてcuff筋の支点形成が行いやすい様に肩峰〜烏口肩峰靭帯が「てこ」となり上腕骨頭が関節窩に引き込まれ、支点形成が行いやすい構造になっています。 中高年者は若年者に比べると腱板の表層が肩峰〜烏口肩峰靭帯に接触する数が必然的に多くなり、腱板表層部分が加齢による変性により損傷、断裂する可能性が高いのです。理学療法では損傷、断裂した腱板を代償する様に、その他のcuff筋、肩甲骨固定筋の筋力向上exを行います。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
THA(股関節全人工骨頭置換術)では術後の問題として人工骨頭股関節の脱臼があります。 脱臼を防止するために手術時には術式、手術の侵入方法、ステム、オフセットの選択、筋・軟部組織、関節包の縫合を行い、理学療法では臼蓋と大腿骨のインピンジメント(骨盤臼蓋部と大腿骨頸部との衝突)により脱臼が起きない様に、インピンジメント防止を目的に筋のバランス・協調性を考慮に入れた筋力向上訓練を行います。また、臼蓋と大腿骨頸部がインピンジしにくい環境(骨盤の前傾が強いと衝突しやすいため骨盤後傾が十分に行える柔軟性の改善)を獲得します。 そして、日常生活では可能な限り低い椅子に座らない、正座を極力行わないなどインピンジメントに注意する様な動作と姿勢について指導を行います。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
FAI(Femoro acetabular impingement以下FAI)は股関節を構成している大腿骨と骨盤・臼蓋周囲部の骨形態異常が要因となり、衝突・引っかかりが起き関節唇および軟骨に損傷が生じ疼痛を誘発するといわれています。 FAIは骨性の形態異常の問題(大腿骨頸部の骨形態異常によるCAM type、臼蓋の骨形態異常によるpincer type、両方の骨形態異常が混ざり合うMixed typeがある)と軟部組織の損傷・炎症による問題があります。 理学療法では軟部組織へのアプローチを行い軟部組織への負担を軽減する事により疼痛を緩和します。具体的には股関節周囲筋、関節包、靱帯の柔軟性、滑走性の改善を行い股関節の正常運動軌跡(normal tracking)に近づけます。軟部組織の改善によっても疼痛の変化が見られない場合は手術の適応になります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
腰椎分離症は椎弓の関節突起間部の骨連続性が途絶えた状態です。原因は先天的要因と疲労骨折要因があります。酒巻らは分離症の発症時期は圧倒的に中高生が多かったと報告しています。腰椎分離症の治療は骨癒合を優先的に第一目的とするが、病気・病態・時期・環境(スポーツの中止ができない、装具が使用できない等)により、骨癒合を優先的に行うのか、除痛を優先とするのか判断されます。分離症が終末期に進行し問題になるのは、①分離すべり症への進展 ②分離部滑膜炎 ③骨増生による変形・先鋭した部分(ragged edge)による神経根症状の三点が挙げられます。 理学療法としてはスポーツ由来による脊椎障害は股関節・腰部を含めた体幹・下肢の柔軟性低下に基づくものと考えられており、分離症発症、再発予防として柔軟性の獲得、筋力の向上、可動域の改善、筋出力の協調性獲得など行っています。 リハビリテーション室長 見田忠幸
参考文献 MB Orthop Vol.27 No.13 2014 |
肘関節は上腕骨、尺骨、橈骨の3つの骨から成り立っています。従って肘関節は3つの関節から構成されているとも言えます。上腕骨と尺骨の腕尺関節、上腕骨と橈骨の腕橈関節、橈骨と尺骨の橈尺関節から構成されています。腕尺関節が主として肘関節と呼ばれ、屈曲、伸展と運動方向が一軸性の関節で、一度、拘縮が起きると改善しにくく難渋する事も多い関節です。 症例としては骨折、骨折の術後、リウマチ、自己免疫疾患などを要因とする拘縮、投球肘障害、外側上顆炎など使いすぎなどが要因となり拘縮になる症例が治療の対象になりますが治療期間も長くなる事も多い様です。 理学療法士は早期より拘縮を予防しつつ、治療を進め、拘縮が進んだ場合、治療対象の軟部組織を評価し改善できる様に理学療法を継続して行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |