リハビリ通信 No.21 肩の静的安定化機能について

2012年04月14日(土) QAリハビリテーション科1新着情報

肩関節安定化機構には動的安定化機構と静的安定化機構があります。

静的安定化機構の中には①関節唇の作用②関節内圧(陰圧)による作用があります。①関節唇の作用について説明します。関節唇の存在が関節窩の深さを2倍にし、脱臼の防止・関節窩への求心力向上など安定性を高めています。

また、②関節内圧(陰圧)は正常肩に比べ陰圧になっており上肢の負荷に抵抗し関節の安定性に関与しています。肩関節は自由度が高い多軸性の関節であるため、他の関節に比べると安定性は低いが動的・静的安定化機構を併用することにより自由度と安定性の両方を獲得した関節になっています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.20 膝外側支持組織の柔軟性の評価

2012年04月05日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

膝の外側にある組織の柔軟性を評価する方法としては、Ober test(オベールテスト)が有名です。

Ober testは、被験者が側臥位となり、上方の脚の膝関節を90°屈曲位、股関節を伸展位に保持したまま内転し、膝の内側が床面に着けばテストは陰性となります。ただし、骨盤の動きが入ってしまうと正確な評価ができないため、下方の脚の股関節を最大屈曲位に保持した状態でテストを行うと骨盤が固定されてより鋭敏な評価が可能になるといわれています(図1)。

膝の内側が床面につかずに浮いてしまう場合、テストは陽性となり大腿の外側にある大腿筋膜張筋の伸長性が低下しています。

その他に各軟部組織の触診、疼痛の再現性の確認などを行い、原因組織を特定して治療に繋げていきます。

外側の硬さにより膝痛を生じている場合では、Ober testの陰性化により疼痛が軽減または消失することを多く経験します。

図1  Ober test    (林典雄:運動療法のための機能解剖学的触診技術下肢・体幹改訂第2版より引用)

リハビリテーション科 奥山智啓


リハビリ通信 No.19 肩の動的安定化機能について

2012年03月29日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

肩関節は自由度が高い関節です。言い換えれば安定性が低いとも言えます。そのため肩関節は動的安定化と静的安定化の2つの機能で安定性を補っています。

動的安定化はローテーターカフ(回旋腱板)筋、大円筋等が上腕の挙上と同時に関節窩へ上腕骨頭を引き付ける様に作用し安定性を高めることです。また、上腕二頭筋長頭腱も上腕二頭筋が収縮すると緊張が高まり、同時に上腕骨頭を関節窩に押さえつける様に作用する。つまり、筋と腱が収縮・滑走しながら安定性を高めていることを動的安定化機能と呼んでいます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.18 膝前面痛の原因 -膝外側支持組織の柔軟性低下-

2012年03月22日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

 

膝関節の外側を支持する組織には、外側広筋、外側膝蓋支帯(縦走線維・横走線維)、腸脛靭帯、大腿筋膜張筋、大腿筋膜などがあります。これらの組織は層構造をなしており、互いの線維が連結して密に絡み合っています。何らかの影響でこれらの組織の伸びや滑りが悪くなると、膝前面痛や階段昇降時痛、さらには腰痛の原因となりやすいことが報告されています。

例えば、大腿骨外側上顆の膨隆を腸脛靭帯が繰り返し乗り越えることによって摩擦による炎症を生じたり(腸脛靭帯炎)、膝蓋骨の外上側部に牽引力が生じて有痛性の分裂膝蓋骨や膝蓋骨脱臼の原因となったりします。また、膝を曲げていくときに膝蓋骨が外側に引っ張られながら動くことで、膝蓋骨が不安定となり膝蓋大腿関節周囲の軟部組織に疼痛を生じることもあります。

筋の収縮訓練やストレッチングにて、膝関節の外側を支持する組織の柔軟性を改善することが重要となります。

リハビリテーション科 奥山智啓


リハビリ通信 No.17 筋の種類について

2012年03月13日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

筋は形状によって種類に分けることができます。棘上筋に代表される鳥の羽様な形状をした羽状筋、上腕二頭筋に代表される紡錘状の形をした紡錘筋があります。

上腕二頭筋は二関節筋でもあり、より力が発揮しやすくなっています。また、収縮する場合、紡錘筋は起始と停止方向が近づくように収縮を行いますが、羽状筋は筋線維方向の斜めに向かってより収縮が起きやすくなっています。

ローテーターカフ(回旋腱板)筋は、ほとんどが羽状筋であり、持久力とわずかな力で関節運動が行える性質を利用し、肩関節における役割を担っています。

リハビリテーション室長 見田忠幸