理学療法士は機能の向上を目標に理学療法を実施しますが、単純に機能を向上するだけではなく日常生活の中で使用する機能を意識して治療をすすめてゆきます。 肩関節のADL(Activities of Daily Living 日常生活活動動作)は肩関節の機能を考えた場合、挙上・結帯動作・結髪動作が重要になってくると思います。 とくに女性は髪を後ろで束ねたり、下着の着脱、エプロンを結ぶなど日常生活の中で実際に使っている動作が多岐にわたり、機能回復と同時に、これらのADL(日常生活活動動作)の向上が治療の最終目標になります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
外傷や過度な運動などで運動器の組織が損傷すると、炎症反応が起こり、腫脹(腫れ)を生じます。 腫れは関節の内圧を上昇し、痛みを感じやすい状態にしてしまいます。つまり、腫れていると皮下の組織はゆとりがなくなり、関節運動をするときに圧の変動が大きくなるため痛みが生じやすくなります。さらに、腫れは筋の働きを抑制したり、関節の周りにある軟部組織の伸張性を低下させたりすることが報告されています。 腫れが長く溜まったままの状態は痛みを感知しやすくなるだけでなく、関節可動域の制限や筋力の低下を引き起こす原因の一つとなってしまいます。そのため、運動療法を行う前に腫れを十分に管理することが必要となります。 腫れを軽減するためには、炎症が起きた直後はRICE処置(リハビリ通信No.38参照)が重要です。しかし、ある程度炎症が落ち着いてきても腫れが残存している場合は、軽い筋の収縮運動によって循環状態を改善することが効果的です。 身体の窪みのある部位や心臓から遠い部位などの腫れが溜まりやすい部位は、ガーゼやパットをあてがい弾力包帯などで軽く圧迫しながら、心臓より高く挙上した状態で筋の収縮運動を行うとさらに腫れが軽減しやすくなります。 リハビリテーション科 奥山智啓
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肩関節は自由度が高い関節です。 上肢はどの方向にも動くのですが、運動の方向を3つの軸に集約することが出来ます。 1つ目の軸は、基本軸を横にした時の屈曲・伸展(前後方向の動き)。2つ目は基本軸を前後方向に設定した時の外転・内転(外と内側の方向の動き)。3つ目は軸を上下の縦方向に設定した時の内旋・外旋(上腕を固定し前腕を内外にまわす動き)です。 日常生活の中で、物をとる・エプロンを結ぶ・顔を洗うといった動作を考えた場合、1つの動作の中に屈曲・伸展・外旋・内旋・外転・内転を伴った複合的な動きを含んでいます。肩関節疾患は軟部組織が問題になる場合、軟部組織の炎症・癒着・短縮・断裂を要因として疼痛と同時に動きの制限が見られます。 理学療法が各々の複合的な動きを引き出すことにより、日常生活で使える動きへと改善していくことが治療へと結びついて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸
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痛みには「急性の痛み」と「慢性の痛み」があります。急性の痛みは、外傷や手術侵襲、運動での使い過ぎによる強い負荷などにより炎症が生じて起こるもので、腫脹や熱感を伴います。 外傷などを受けたときは、患部の出血や腫脹、急性の痛みを防ぐことを目的にRICE処置を行うことが基本となります。RICEとは、Rest(安静)、Icing(冷却)、Compression(圧迫)、Elevation(挙上)の四つの処置の頭文字を並べたものです。つまり、捻挫や肉離れなどの怪我をした際は、患肢や患部を安静にし、氷などで冷却し、弾性包帯やテーピングで圧迫し、患肢を挙上することが、急性の症状を最小限に抑え回復を早めるために重要となります。 リハビリテーション科 奥山智啓 |
筋には起始と停止があり、関節を跨ぐように付着しています。 筋の付着している骨の部分では腱という組織になり、固定性を高めると同時に機能が発揮しやすくなっています。筋が収縮する場合、基本的には(一部の筋では逆も有り)停止部から起始部へ直線的に収縮し作用します。筋は収縮することにより筋実質が縮んだり、伸びたりしますが、腱は変化することなく滑走をします。 理学療法を実施する上で、押さえて痛いのか?伸ばして痛いのか?を診ることにより筋が短縮しているのか、腱の部分で癒着しているのかを評価します。 筋の起始・停止部から筋全体を把握し触診する能力が理学療法では重要です。 リハビリテーション室長 見田忠幸
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