骨は骨折しても治癒する能力を備えています。ただし、骨のつきやすさには個人差があります。一般的に骨折部のズレや動きが少なく、骨折部に元気な細胞が多ければ、骨はつきやすいといわれています。 骨折の際には、受傷の外力によって周囲の軟部組織も損傷を受けていることが多く、関節の周囲は腫れが生じます。そこに、固定に伴う不動状態が続くと、時間の経過とともに組織が硬くなってしまいます。そのため、骨折後に固定期間が長くなる場合は、いかに早期から関節が固まらないように適切な運動を行うかが機能を再獲得するために重要となります。 リハビリテーション科 奥山智啓 |
筋肉は筋線維のタイプにより分類することができます。 収縮時間が長い遅筋は赤く、筋線維の直径は細いが持久力があります。いわゆるマラソンランナーはこのタイプの筋が発達しています。 逆に収縮時間が速い速筋は白く、筋線維の直径が太く瞬発的な爆発力があります。100mのスプリンターに多く見られます。 代表的な筋で言うとヒラメ筋は遅筋、前脛骨筋は速筋です。肩関節を構成するCuff筋も遅筋が多く含まれ、外側(アウターマッスル)の速筋とバランス良く共同で働き、その機能を発揮しています。 日常生活での環境や使用頻度により、筋はバランス良く速筋と遅筋が構成されています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
損傷した軟部組織が修復にかかる時間は、損傷した組織によって異なります。 組織が修復する時間的経緯は一般的に表層の組織ほど早く、皮膚は1~2週、筋肉は3週、腱・靭帯・関節包は6~8週である程度の修復が得られるといわれています。しかし、これらはあくまで目安の期間であり、損傷の部位や程度、年齢などによっても多少異なってきます。そのため、十分な経過観察と評価が重要となります。 理学療法では、医師の指示のもと、受傷からの時期に加えて、画像所見や徒手検査などから損傷組織の状態を考慮し、修復時期に応じた運動療法の実施を目指していきます。 最近では超音波画像診断装置(エコー)の発達により、組織の修復状態をエコー画像で確認しながら評価を行うことで、修復時期に応じた運動療法をより安全で確実に実施することが可能となってきています。 リハビリテーション科 奥山智啓
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痛みには何もしなくても痛い安静時痛と肩を動かした時に痛い運動時痛があります。 夜間痛は夜、就寝時に痛くなる安静時痛です。 原因は肩峰下滑液包の内圧による変化で、強い疼痛が出現します。通常、上腕骨は筋・靱帯・関節包など軟部組織を介して肩甲骨と繋がっていますが(ぶら下がっている状態)、肢位により上腕骨と肩甲骨の間の上部軟部組織の肩峰下滑液包(痛みを感じやすい自由神経終末が豊富)に刺激が入り痛みとして発症します。 一時的ではありますが、痛みを少しでも早く低下させるには、寝る時に、上腕骨と肩甲骨が動かない様に肩甲骨の背中側にバスタオル、枕、クッション等を置き侵害刺激を入れない…つまり内圧を変化させない事です。 長期的には理学療法で癒着している部分を剥離させ滑走性を高める治療を行います。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
外傷や手術などで組織が損傷すると、脳は緊急事態と判断して体を守るための炎症反応を起こします。 そして、炎症反応が生じた後には損傷した組織を修復する反応が起こります。修復反応は、損傷した組織が周囲の組織とくっついたり(癒着)、かさぶたのような本来の組織とは少し異なる組織(瘢痕組織)に置き換わったりすることで、時間とともにある程度修復された状態となっていきます。 修復過程において、損傷組織に早い時期から負荷をかけすぎると修復を阻害してしまい、治癒が進まなくなります。一方で、必要以上に癒着や硬い瘢痕組織を形成してしまうと、筋収縮が不十分になったり、関節可動域が制限されたりする要因となり、日常生活活動(ADL)に支障をきたしてしまいます。 修復反応にかかる時間は、損傷の程度や損傷した組織によって異なります。整形外科のリハビリでは、損傷した組織の修復過程とその時期に合った治療プログラムを選択していくことが重要となります。 理学療法では、組織の治癒を進めながら癒着や瘢痕化を最小限に予防することで、関節可動域や筋力を確保し、日常生活活動(ADL)能力の低下を防いでいきます。 リハビリテーション 奥山智啓 |