筋膜は簡単に言うと筋を覆う膜です。 働きとしては①筋を区分けしている②筋の引っ張る力に対する強さを持っている③筋の張力を腱に伝える働きを持っている④筋の滑走性を高めるなどがあります。 実際の臨床では筋の打撲・骨折など炎症が起きると、筋膜と言う容器があることにより筋の内圧を一層、高め疼痛が出現し、関節が動かしにくい状態になります。また、発症経過後、筋と筋膜に癒着が起きると拘縮の一要因になります。 人間の体は筋肉と骨の働きだけで、スポーツ・日常生活の動作を行うのではなく、その他の軟部組織も関与して動作を遂行しています。治療は様々な軟部組織の影響を考慮しながら進める必要があります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
関節が動く範囲を維持または拡大する訓練を関節可動域訓練といいます。 例えば、膝を曲げる方向に可動域を拡大したい場合、膝を無理やり曲げたり、痛みを我慢して押し込んだりしても、膝は綺麗に曲がるようになるわけではありません。 関節にはそれぞれその人が本来持っている運動軌跡があります。痛みが生じているということは、その人が本来持っている運動軌跡から逸脱していたり、組織に何らかの負担がかかり炎症を起こしている可能性が考えられます。そのため、無理な関節運動は痛みや筋の緊張を助長して、余計に関節の可動域を制限してしまうことがあります。また、硬い組織と柔らかい組織のバランスが悪い状態で無理に組織を伸ばそうとすると、柔らかい組織ばかりが伸びてしまい、関節が不安定な状態になる可能性があります。そのため、無理なストレッチングには注意が必要です。 関節の運動軌跡は、関節の形態や軟部組織の状態、普段の動作での使い方などが影響して、その人なりの軌跡ができあがっていきます。つまり、片側に外傷や障害、変形がある場合には、良い側の関節の動きが一番のお手本になります。また、両側に何らかの問題がある場合でも、基本的には痛みが出ないこと、関節が硬い状態で無理に動かさないことが綺麗な運動軌跡を引き出していくために重要となります。 関節可動域訓練では、軟部組織の硬いところや短くなっているところ、周りの組織と引っ付いているところなどを改善し、組織の柔軟性のバランスを整えることが重要となります。また、痛みや安静固定などにより関節が不動の状態となるような場合では、関節の拘縮ができる限り起こらないように予防を行うことが重要です。そして、関節の周りにある軟部組織が柔らかくなった分、痛みのない範囲で可動域を拡げていくことで、その人なりの正常な運動軌跡を引き出すことを目指していきます。 リハビリテーション科 奥山智啓 |
僧帽筋は〝 肩こり 〟と深い関係があります。 肩こりは僧帽筋の上部線維が過緊張によりスパズム(れん縮)・循環障害になっている状態です。僧帽筋は外後頭隆起(頭蓋骨の底部)、項靱帯(首の後部)から肩甲骨を包み込むように付着しており、治療としては頚部(首の部分)、肩関節の周囲筋も含めて考える必要があります。 そもそも、疼痛が出現するのは、炎症、筋の緊張などが要因で痛み発痛物質が、その場所に留まる事により痛みとして感じます。従って、痛み発痛物質を血流循環により除去することが重要です。ストレッチ・軽い運動により筋の収縮を促し血流循環を良くすることが改善に繋がると考えられます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
関節包は関節の連結する部分の全体を覆う線維性の膜であり、関節の可動性や安定性に関与しています。 関節包は部位によってはハンモックに例えられ、関節の運動に伴って拡がる組織です。この関節包が拡がるパターンは各関節によって異なり、関節包の中で各関節は綺麗な運動軌跡を保ちながら動いています。 しかし、関節の運動に伴って関節包が大きく拡がる部分のゆとりが無くなると、骨の動きは偏位し、関節は綺麗な運動軌跡を描くことができません。それにより、関節の可動域制限や痛みが生じる原因の一つとなります。 そのため、関節が綺麗に動くためには関節包のゆとりを維持することが大切になります。一度硬くなってしまった関節包を拡げていくには、関節包を適度に伸ばしていく必要があります。関節包はムリに伸ばすと痛みや関節の不安定性を伴うため、弱い力での伸張を繰り返しながら、持続的に伸ばしていきます。また、関節包は深部にあり、筋肉や靭帯など周囲の組織と連結しているため、周囲の組織も含めた全体的な柔軟性が必要となります。 リハビリテーション科 奥山智啓 |
投球肩障害は大きく分けると肩関節の前方部分(棘上筋・肩甲上腕靭帯)、上方部分(関節唇)、後方部分(棘下筋)に対しストレスが加わることにより投球動作時に損傷と疼痛が発症すると考えられます。要因として、①投球フォーム②股関節・下肢の硬さ③筋のバランス(肩関節インナー・アウターマッスル、肩甲骨固定筋、体幹・下肢のバランス)が考えられます。 投球肩障害の中でも関節唇損傷は上腕二頭筋長頭腱の付着部がストレスにより、剝がれてくるもので、SLAP損傷と呼ばれ、損傷度合いによりタイプが分類されています。場合により手術も行われます。 理学療法では病態に至る経緯を評価し、癒着・拘縮を除去するのと同時に筋の協調性を高め、投球フォームの指導を行います。また、手術をしているのか、保存療法か、スポーツ復帰の時期を考慮しながら理学療法を実施します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |