リハビリ通信 No.331 肘関節と日常生活動作について

2021年07月29日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

肘関節は3つの関節から成り立っています。1つ目は上腕骨と尺骨で構成される腕尺関節、2つ目は上腕骨と橈骨で構成される腕橈関節、3つ目は橈骨と尺骨で構成される近位橈尺関節です。肘関節の運動作用は基本的には屈曲・伸展(*近位橈尺関節を含めた前腕運動を加えると回内・回外も作用)です。

肘関節は可動域制限の影響を受けやすく、可動域制限を受けた場合、日常生活上での動作に支障をきたします。例えば洗顔、洗髪などの入浴動作、ブラシ・ドライヤーで髪を整える整容動作、食事をする時、茶碗を持つ、箸で食べ物、飲み物を口に運ぶ、飲むなどの食事動作、トイレ動作など日常生活の動作では肘関節の制限が起きると、ほぼ日常生活が営めない状態になります。

理学療法では可動域制限の改善を主として治療を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.330 変形性膝関節症の障害部位について

2021年07月18日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

坂井建雄(訳):プロメテウス解剖学アトラス 解剖学/運動器系.医学書院,2007. を参考に作図

 

整形外科医や理学療法士は、適切な治療を実施するには痛みを解釈することが必須となります。

変形性膝関節症における障害部位は、大腿脛骨関節(以下、FT jt)障害と膝蓋大腿関節(以下、PF jt)障害に大別されます。FT jt障害は、日常生活中でも特に、歩行時に痛みが生じます。

一方、PF jt障害は階段昇降時や椅子からの立ち上がり動作時に痛みが生じます。

我々、理学療法士はさらに各関節でどの組織が痛みの出現に関わっているか問診や理学所見をもとに解釈して理学療法を提供しています。

リハビリテーション科 河田龍人


リハビリ通信 No.329 膝関節の負担と周囲筋について

2021年07月01日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

膝関節にかかる負担は静止立位時に比べ歩行時3~4倍、階段降段時には7~8倍の負担がかかると言われています。つまり、体重が増加すれば日常生活上での動作時、膝関節にかかる負担は大きくなり、変形性膝関節症へ進行を早めることが考えられます。

体重をコントロールする事は無論、大事ですが膝関節にかかる負担を軽減する一手段として筋力向上、安定した筋出力の発揮が重要と考えられます。膝関節を安定化させる筋として大腿四頭筋があります。大腿四頭筋は大腿直筋、中間広筋、外側広筋、内側広筋と4つの筋線維の集合体として筋活動を行います。大腿四頭筋の中でも大腿直筋は二関節筋として骨盤(下前腸骨棘)から膝蓋骨を介して脛骨粗面に付着し4つの筋の中でも一番大きな筋となっています。股関節、膝関節2つの関節に関与します。その他の大腿四頭筋は単関節筋で膝関節だけに関与します。単関節筋である中間広筋、外側広筋、内側広筋を如何に安定して筋出力、収縮させるかが大事になってきます。

理学療法では選択的に単関節筋の収縮を促し膝関節の安定化を行います。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.328 痛みの病態について

2021年06月10日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

痛みの要因にはメカニカルストレス由来とケミカルストレス由来によるものとがあります。メカニカルストレスの場合、軟部組織の短縮・癒着・拘縮が原因となり圧迫・伸張・牽引刺激による疼痛発症、ケミカルストレスの場合、炎症物質による化学物質刺激が原因となり疼痛発症が考えられます。侵害受容器には機械的侵害刺激、炎症などに伴うケミカルメディエーター(ブラジキニン、プロスタグランジン、ヒスタミン、カリウム)が働くと神経は興奮性が亢進し痛みを伝達しやすくなります。この様な病態下ではpH低下が起こり、疼痛・違和感が発症することが知られています。また、痛覚線維は筋線維を含む結合組織である筋膜、細動脈の周囲および筋と腱の結合部に見られ、毛細血管や筋線維には痛覚線維は分布しないと言われています。

運動により筋腱付着部に機械ストレスが加わると骨膜、腱に微細な断裂、腱膜炎、骨膜炎腱炎が生じ断裂を起こし剥離部分では局所的な出血、炎症が起きます。結果、痛覚線維の自由神経終末を刺激し、疼痛・違和感を生じると考えられます。

理学療法ではメカニカルストレス由来の疼痛である癒着・拘縮の改善が治療対象になります。ケミカルストレス由来である炎症要因の疼痛は医師による治療対象となります。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.327 膝関節の機能と解剖について

2021年05月04日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

膝関節(脂肪組織、滑液包の図)

参考文献:「膝エコーのすべて」中瀬順介著、日本医事新報社、2020

 

膝関節は荷重関節であると同時に移動動作、歩行など支持性と可動性、両方の機能が必要である。膝関節における支持性つまり安定化は骨と軟部組織によるものとがある。

骨による膝関節の安定化は膝関節完全伸展位(立位)で起き、軟部組織による安定化は筋、靱帯、関節包などが収縮・滑走を行い安定化に寄与する。軟部組織について更に具体的に述べると膝関節は動的安定化機構である筋と静的安定化機構である靱帯(ACL:前十字靭帯、PCL:後十字靭帯、MCL:内側側副靭帯、LCL:外側側副靭帯)が協調して働き、安定化を構成している。とくに膝関節に大きく関係している大腿四頭筋は筋出力も強く腱付着部にかかるストレス、負担は大きいと考えられる。皮下組織、腱付着部、筋間での摩擦、損傷を防ぐため膝関節には滑液包、脂肪組織(fat pad)が負担のかかる組織間では多く見られる。

リハビリテーション室長 見田忠幸