腱損傷は筋収縮を含めた急激な力によって損傷されます。損傷される部位は加齢、慢性の機械刺激による軟部組織の変性、RA(リウマチ)など病態により、脆弱化した筋腱移行部に見られます。また、損傷が強い場合、腱断裂も考えられます。修復過程は周囲組織を取り込みながら、瘢痕組織となり修復されます。つまり、周囲組織と癒着・拘縮が起きやすく理学療法としては癒着・拘縮の剥離を行い機能の改善を行います。 筋損傷は直接的な外力、自己収縮力の張力により損傷されます。別名、肉離れとも呼ばれます。例えば筋肉が疲労・運動準備不足により筋線維束は正常なリズム(収縮・弛緩)を失い攣縮し損傷へと至ります。とくに、二関節筋であるハムストリングス・下腿三頭筋に多く見られます。修復過程は腱と同じく瘢痕組織となり修復されますが、筋損傷が大きい場合、陥凹・瘢痕が残存するため再損傷の可能性があり、理学療法としては再損傷を起こさない様に柔軟性を獲得し、局所にストレスが加わらない事が治療の目的になります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
股関節は、寛骨臼(大腿骨頭を覆う部分)と大腿骨頭からなる球関節であり、三次元的な動きと十分な荷重に耐えるだけの支持性が必要とされます。寛骨は、腸骨、恥骨、坐骨の3つの骨が結合したものです。左右の寛骨に仙骨を加えたものを骨盤と言います。寛骨は、内臓臓器を支えるために広く発達し、二足歩行に適応した特徴的な形態をしています。 股関節は、身体の移動のために大きな荷重を受けるので骨頭を覆う部分が大きく、支持性の高い構造となっています。同じ球関節である肩関節と比較すると、肩関節は様々な作業を遂行するためにより大きな可動性が必要となるので、骨頭を覆う部分が小さい構造となっています。このように関節により求められる機能が異なり、適した構造をしています。 リハビリテーション科 服部 司 |
筋力トレーニングによる筋力の増加は、神経系の改善と筋の肥大に伴う変化であるといわれています。 そのメカニズムとしては、筋力トレーニングの開始初期は、筋の横断面積の増加(いわゆる筋肉が太くなること)を伴わない筋力の増加がみられ、これは主に神経の働きの改善、すなわち活性化される運動単位の増加によるものです。また、トレーニングを一定期間において継続していくと、筋の横断面積の増加を伴った筋力の増加が起こります。この筋肥大は筋原線維の太さの増加と数の増加によって引き起こされます。 トレーニング開始初期は、見た目にはそれほど筋肉が太くなりませんが、運動を行うことで神経系の働きを改善し、力を発揮する機能を向上させるという効果が期待できます。つまり、トレーニングにより神経機能が発達すると、筋が収縮する際により多くの筋線維を動員できるようになり、大きな力が出せるようになるというわけです。さらに、トレーニングを継続すると、筋肉が徐々に肥大し、絶対的な力が増加します。 筋力を生み出すためには、筋肥大、神経発達、瞬発力のそれぞれの要素が必要であり、いかに多くの筋線維を同時に働かせることを神経に学習させるかが大切となってきます。これら要素は、同一のトレーニングによって発達するものではなく、それぞれを意識した適切なトレーニング方法や期間、休養などを組むことが有効であるといわれています。筋力増強のためには、やはり適切な運動を継続して行うことが重要であると感じます。 リハビリテーション科 奥山智啓 |
ヒトが運動を行うためには、丈夫な身体とエネルギーが必要です。ヒトは、食事により体外から糖質や脂質、タンパク質といった栄養素を取り入れます。これらを消化吸収し、あらゆる代謝過程を経ることで、筋肉など身体を構成する全てのものを丈夫にし、また、運動に必要なエネルギーも得ています。 通常では、主に血中のブドウ糖をエネルギーとして使用し運動しています。低血糖時は、血中のブドウ糖が減少しているため、肝臓に貯蔵されたグリコーゲンを分解してブドウ糖とし使用しています。食事をとらない状態が続き、肝臓のグリコーゲンが枯渇すると、筋肉中にあるタンパク質などを分解し、アミノ酸からブドウ糖を産生しエネルギーを供給するようになります。 このように栄養が不足している人が過度に運動を行うと、一日のエネルギー消費量が増加し、筋肉の分解を進めてしまいます。つまり、栄養が不足しているときに筋力向上のためのリハビリを行っても、効果が薄れてしまうということになります。リハビリと栄養管理どちらが欠けても日常生活の向上に繋がらないので、しっかりとバランスのとれた食事をとって運動することを心掛けていきましょう。 リハビリテーション科 服部 司 |