リハビリ通信 No.76 変形性股関節症について②

2013年06月27日(木) QAリハビリテーション科1QA整形外科1新着情報

変形性股関節症になると可動域制限や筋力低下、歩行障害が生じます。これらが生じる原因として①骨の変化、②関節包の変化、③筋の変化に分けることができます。

①骨の変化について、変形性股関節症の進行具合はX線像により判別することができます。初期では大きな骨変化は認められませんが、進行するにつれて骨棘の形成や、骨の扁平化が生じ、運動制限が出現します。

②と③の軟部組織の変化について、関節の安定性が破綻し、それを制御するために軟部組織の短縮や拘縮が生じ、運動制限が生じます。

骨の変化については理学療法で対処することが困難となります。理学療法は、軟部組織に対して筋収縮やストレッチなどを行い、疼痛や可動域制限の改善を図り、変形性股関節症の進行を遅らせる目的で行っています。

リハビリテーション科 服部 司


リハビリ通信 No.75 転倒予防とバランス能力について

2013年06月21日(金) QAリハビリテーション科1新着情報

近年、高齢者の転倒予防において、バランス能力の重要性が注目されています。しかし、『バランス』とは明確に規定されている用語ではなく、様々な要素が含まれています。

一般的にバランス能力とは、姿勢を保つ能力や不安定な姿勢から速やかに安定した姿勢に回復させる能力を意味します。それには、①感覚系、②中枢神経系、③運動器系の3つの要素が重要な役割を果たしています。例えば、片脚立ちに姿勢を変化する際には、感覚系(視覚・表在感覚・深部感覚・前庭感覚)で身体の位置や動きを感じ、中枢神経系(小脳・脳幹など)で情報を整理して指令を出し、運動器系(筋・関節)で身体を動かして姿勢の調整を行っています。

したがって、バランス能力とはこれらの3つの要素の協調的な働きが重要であり、いずれかの機能が働きにくくなると、バランス能力は低下します。

運動器の理学療法においては、筋やアライメントが原因となる姿勢制御の障害がアプローチの主な対象となります。具体的には、各関節における可動域制限の改善、重心移動練習における全身の運動連鎖を伴った筋活動の学習、高齢者の筋力低下においては運動速度とタイミングを速い訓練にすることなどが有効であるといわれています。その中でも、足の指(特に母趾)の柔軟性と足趾屈曲の筋力強化、股関節周囲筋の柔軟性と協調的な筋活動の促通がバランス能力を向上するために重要となります。

リハビリテーション科 奥山智啓


リハビリ通信 No.74 骨の折れ方について

2013年06月13日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

骨折は受傷機転によって骨にかかる外力が違ってきます。

骨に対する力の加わり方は①ずれる ②ねじれる ③引っ張る ④圧縮 ⑤屈曲 に分けることが出来ます。例えば円背の高齢者が尻もちをついて転倒すると、外力は殿部から脊椎に加わり前部が圧縮されます。また、足をねじりながら転倒すると骨にねじる外力が伝わります。

つまり、骨折と言っても、折れ方、方向、外力の大きさ、どのように外力が伝わったかにより骨折の状態が変わります。同様に外力の強さも骨折の状態(単純な骨折線・第3骨片の有無・粉砕骨折)を変える一要因となります。

理学療法は骨折線の状態、受傷機転からどのような外力が骨折部周囲の軟部組織に影響を及ぼしたか、考察し治療をすすめます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.73 変形性股関節症について①

2013年06月06日(木) QAリハビリテーション科1QA整形外科1新着情報

変形性股関節症とは、関節軟骨の変性や摩耗により関節の破壊が生じ、進行に伴って骨増殖(骨硬化、骨棘)が起こる疾患です。わが国における変形性股関節症の発生要因として、一次性要因よりも先天性の股関節脱臼や臼蓋形成不全などを伴う二次性要因によるものが圧倒的に多く、また、男女比としては、女性に多いと言われています。

変形が進行すると、関節の安定性が破綻し、それを制御するために軟部組織の短縮や拘縮が生じます。拘縮により正常な関節運動が遂行できなくなると筋出力バランスも破綻し、筋力低下が生じます。これらの要因が疼痛を引き起こす原因となります。

これらの関節障害に対して、理学療法では、ストレッチや筋収縮を促し、軟部組織の短縮・拘縮の改善を図ります。また、歩行の中で、体幹の動揺がなく、筋肉が協調的に働くための訓練を行っていきます。

リハビリテーション科 服部 司


リハビリ通信 No.72 筋力トレーニングの原則

2013年05月31日(金) QAリハビリテーション科1新着情報

筋力トレーニングの3大原則には、①過負荷の原則、②特異性の原則、③多様な運動プログラムを行うことが挙げられます。

まず、筋肉は普段使っている以上の負荷を受けると、そのレベルに耐えられるように適応する生理機能を持っています。したがって、筋力の増強を目的とする場合、ある程度の負荷を加える必要があり、負荷によって筋力が増強すれば、そのレベルに合わせてさらに負荷を少しずつ増していくことが重要となります。これを過負荷の原則といいます。

また、生体に一定の負荷をかけると生体はそれに見合った特異的な現象を起こします。したがって、トレーニングはその種類によって鍛えられる機能が変わってきます。つまり、ある筋肉を鍛えたい場合、その筋肉が働きやすい状況でトレーニングを行う必要があり、目的とする活動に必要な筋収縮を行うことが重要となります。これを特異性の原則といいます。

さらに、運動プログラムは多様に変化させることが効果的であるといわれています。したがって、一つの部位に偏った決まった運動パターンよるトレーニングは、基本的にはその筋肉の収縮パターンのみにしか効果が現れず、局所への過剰な負担を招く可能性があります。つまり、周囲の筋肉との協調性を含めた、多様な運動プログラムを行うことが重要となります。

以上のことから、筋力トレーニングでは、各個人の機能や目的とする活動に合わせた負荷量やプログラムを設定することが大切になります。筋力増強はトレーニングによって刺激を受けた筋肉が修復する過程で発揮されるため、適度な負荷と休息のバランスが重要であると感じます。

リハビリテーション科 奥山智啓