神経は大きく分けて中枢神経(大脳~脊髄前角)と末梢神経(脊髄前角~体の先端)があります。更に言うと大脳からの指令を筋へ伝える運動神経(運動ニューロン)と皮膚・内臓・その他軟部組織などから痛み、違和感などの刺激(情報)を大脳へ伝える感覚神経(感覚ニューロン)があります。また、自分ではコントロール出来ない自律神経があります。 例えば脳梗塞で麻痺になっている人の場合、大脳など指令を発する部位(運動皮質の上位運動ニューロン)での問題で、脊髄~運動神経(下位運動ニューロン)へ「動け!!」と言う情報(電気信号)が随意筋へと伝わらず麻痺の状態のままとなります。 事故等で脊髄が損傷した場合、大脳からは「動け!!」と言う情報を発する事が出来ますが、途中の経路である脊髄で情報が遮断されるので、損傷した部位以降は随意筋へ伝わらず麻痺となります。 膝・腰・肩に違和感・痛み・痺れがある場合、脊髄から筋までの下位運動ニューロンの途中で圧迫・癒着・神経の滑走性低下などの理由により各関節で発症します。理学療法士は状態を評価し適切な治療を実施します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
松葉杖は、歩行の安定性の獲得や体重を保持するために使用します。下肢の骨折や靭帯損傷などの様々な疾患に対して松葉杖が用いられます。 使用目的として損傷部位に負担をかけないように免荷すること、支持性の拡大などが挙げられます。 松葉杖の合わせ方として、足の前外側約15cmのところに杖先を置きます。続いて脇の下に松葉杖を入れて、脇と松葉杖の間を約卵一個分(指2~3本)の隙間をあけてグリップを握ります。このグリップの高さは大転子(大腿骨の外側にある骨隆起)に合わせます。 ここで注意することは脇の下で体重を支えないことです。脇の下には、神経が通過しているため脇で支えると、その神経が圧迫され、神経障害が生じる可能性があります。必ず脇をしめて、上腕と体幹で松葉杖を挟み、掌で支えて使用します。 最後に疾患により荷重制限や使用方法が異なります。使い始めは、慣れないので転倒の危険性があるため、松葉杖を使用する際は、医師や理学療法士の指導のもとで使用してください。 リハビリテーション科 服部 司 |
橈骨遠位端骨折とは、前腕にある2本の骨(橈骨と尺骨)のうち、親指側にある骨の骨折です。この部位は骨折の好発部位であり、発生率は全骨折の1/6を占めるとされています。 この骨折では、骨折形態によりますが手術をしなければならない場合もあります。(手術をしなくてもよい場合はギプス固定が施行されます。)骨折し、固定期間が終わると手関節や手指に可動域制限が生じているため、リハビリで可動域訓練を行います。 手術をせず、ギプス固定が施行された患者さんにおける「可動域制限」としてよく経験するのが、橈骨の背側を走行する腱(長・短橈側手根伸筋腱、長母指伸筋腱)の滑走性低下です。長・短橈側手根伸筋は手関節を反らすために働く筋肉であり、長母指伸筋は、テーブルに手をついた肢位から親指を起こしてくる時に働く筋肉です。これらの筋肉の延長部にある腱が問題となることが多いように思います。(骨折は橈骨で生じているので、橈骨周辺で制限が生じやすいということは容易に想像できると思います)。制限となるのはこれだけではないですが、患者さんのリハビリをしていく中で、これらが多いように感じます。 私達理学療法士は、これらの腱を運動より滑走させ、可動域制限の改善に努めます。 リハビリテーション科 小野正博 |
脊柱は頚椎7、胸椎12、腰椎5、仙骨から構成されています。脊柱の中でも胸椎は体を捻る(回旋)動作をする場合、全脊椎の回旋動作中、約40%の回旋動作を行います。その他では頚椎で55%、腰椎で5%です。各々の特徴的な骨形状で言うと、腰椎は屈曲・伸展で働きやすく(回旋時は働きにくい)、胸椎は回旋でより働きやすいと考えられます。 日常生活・スポーツを行う場合、胸椎の動きが悪いと十分なパフォーマンスを発揮できず、頚椎・腰椎・肩関節・股関節に代償による負担が増え、疼痛・変形を誘発する一要因になると考えられます。例えば、肩関節周囲炎・変形性膝関節症・腰痛などの疾患は治療時に胸椎の柔軟性を導き出すことも選択肢の一つとして実施します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
人工股関節置換術(THA)後の合併症には、術中の血管損傷や神経麻痺、術後の脱臼などが挙げられます。この中でも、術後問題となる脱臼についてお話していきます。 手術の進入路には、前方や側方、後方があり、それぞれの方法により軟部組織の損傷度や脱臼肢位など異なった特徴があります。 例)後側方アプローチの場合… しゃがみ込みや床からの立ち上がり、座位での内股の動作など、過度に股関節を屈曲(股関節を曲げる)する動作を行うと脱臼する危険性があるため、脱臼する肢位を行わないように注意を促すことが必要となります。 我々理学療法士は、術前や術後ともに、脱臼肢位について繰り返し動作指導や運動療法を行い、脱臼リスクの軽減を図っています。 手術方法により脱臼肢位が異なるため、脱臼動作についてわからないことがあれば気軽にお尋ねください。 リハビリテーション科 服部 司 |