私たち理学療法士は、リハビリ室に訪れた患者様に対して、すぐに治療を行うのではなく、患者様の症状や障害を把握するために評価を行います。その後、評価で得た情報を分析・考察し、目標設定と治療プログラムの立案を行います。理学療法で行う評価には、以下のものがあります。関節可動域測定や筋力検査、感覚検査、片麻痺機能検査などたくさんの評価項目に分けることができます。 今回は関節可動域検査についてお話していきます。関節可動域測定とは、各関節を自動的にあるいは他動的に動かしたときの関節の運動範囲を測定することをいいます。測定する際に必要となる器具を角度計(ゴニオメーター)といい、2本の腕木があり、その中心を支点として腕木を動かすことにより角度を測定します。関節運動は、筋肉などの軟部組織が正常に働くことによって行われますが、これらに異常(軟部組織の拘縮や骨変形)があると関節可動域制限が生じます。 私たち理学療法士は、関節可動域測定を行うことで、関節運動を阻害している因子を発見したり、治療効果の判定など知ることができます。 リハビリテーション科 服部 司 |
橈骨遠位端骨折は、手関節部での骨折であり、転倒した際に手を地面について受傷することが多い骨折です。手をついた時、肘関節が伸展位(肘が伸びた状態)で地面につくと肩関節に負荷が加わり、「骨折部以外の痛み」として肩関節周辺に症状が出現することがあります。 手を地面についた時、上腕骨(腕の骨)には上方へと突き上げられるような力が加わります。そのため、図の水色楕円形の部分が押し潰されるため、この部位で炎症が生じ、肩関節での痛みが発生します。その後、拘縮(関節が動かなくなってしまうこと)を生じてしまいます。 「手首の骨折なのに肩が痛い。」というのはこういった事があるためです。 私たち理学療法士はリハビリを行う際、手関節部での制限はもちろんのことですが、肩関節など、隣接関節部まで痛みや可動域制限が生じていないかどうかをチェックをしながらリハビリを行います。 リハビリテーション科 小野正博
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筋は伸びたり、縮んだり(収縮・弛緩)する事により筋として作用します。筋は付着している場所により、起始・停止があり、収縮方向は停止から起始へ一方向に向かいます。 基本的に筋は関節を跨ぐ様に走行していますが(単関節筋)、大きな力が必要とする部位では二つの関節を跨いで作用する二関節筋として走行しています。(大腿四頭筋・ハムストリングス・上腕二頭筋・上腕三頭筋) 関節が動き、筋が大きく滑走しながら収縮する等張性収縮、関節が固定し筋の長さに変化がない状態で収縮する等尺性収縮があります。 手術・ギプス固定など関節を動かしてはいけない場合、等尺性収縮を実施することにより、拘縮を予防し、また可動域の改善・筋力向上には等張性収縮、等尺性収縮、ストレッチングなど、軟部組織の状態により適切に選択し、実施します。 理学療法では各々の収縮の特徴を理解し治療に利用します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
股関節を屈曲(曲がる)する際、周囲の筋肉が協調的に働くことにより、股関節が屈曲してきますが、その中でも腸腰筋が最も重要な筋肉だと言われています。 腸腰筋とは、腸骨窩から起始する腸骨筋と腰椎から起始する大腰筋を合わせた筋肉のことを言い、ともに大腿骨にある小転子に停止します。 作用として、股関節屈曲の他に、骨盤の前傾や腰椎の前弯する作用をもちます。また、股関節を過伸展した際に、骨頭の前方不安定性に対して、周囲の靭帯とともに制動し、支持する作用もあります。 股関節屈曲拘縮の主要因となる腸腰筋は、股関節痛や、しばし腰痛や跛行を引き起こす原因となります。 このような症状に対して、私たち理学療法士は、腸腰筋が拘縮していないか評価を行い、ストレッチや筋収縮を行い、改善を図っています。 リハビリテーション科 服部 司 |
足首の骨折(足関節果部骨折など)や膝関節周辺および大腿骨の骨折などを受傷した場合、松葉杖などを用いて歩行訓練を行います。この時、体重のかけ方が重要であり、適切な時期に適度な負荷のかけ方が重要となってきます。 負荷のかけ方は時期・骨癒合状態により4つに分けられます。 ①免荷 → 仮骨(骨折部で新しくできてくる骨のことをいう)形成がまだない時期に行 ②接地 → 仮骨形成が出現してきた時期に行います。この時期はまだ形成された仮骨もまだ不十分なため、足を地面に接地する程度の負荷(地面に足を置く程度の負荷)で歩行訓練を行います。 ③部分荷重 → 徐々に仮骨が形成されてきている時期に行います。レントゲン写真を主治医がチェックし、骨折したところの状態によって負荷量を決定します。※通常1/3荷重、1/2荷重、2/3荷重と徐々に負荷量を上げていきます。 ④全荷重 → 仮骨形成が十分であり、骨癒合状態となった時期に行います。全ての体重をかけ、歩行が安定していれば松葉杖を抜去して歩きます。 このように、徐々に負荷量をコントロールしながら歩行訓練を進めていきます。適切な時期に適度な負荷をかけることは、骨折部の骨癒合を促進するような刺激となります。しかし、仮骨形成が不十分な時期における過負荷は、同部位の再骨折とつながりますし、全く荷重をしていない時期が長くなると骨萎縮が生じてしまうために注意が必要となります。 私達理学療法士は、リハビリ室および日常生活動作の中で、過負荷となっていないかどうかをチェックし、適切な時期に適度な負荷を加えるような歩行訓練を実施します。 リハビリテーション科 小野正博 |