私達理学療法士は、骨や筋肉・関節などを操作する職種です。その中で、各組織を的確に動かすためには、どのような組織がどこにあるのか、どのように動いているのかをイメージし、その組織を確実に触れる「触診」という技術が求められます。 実際、問題となっている組織が直視できるものではなく、皮膚で覆われているために正確な解剖学的知識と、そこに存在する治療ターゲットとなる組織を触診しなければなりません。例えば、関節の動きが制限されている場合、どの筋肉が関節の動きを制限しているのか、どの組織の動きが悪いのかなどを確認する際に触診を行います。 触診技術は非常に難しく、理学療法を行う上で最も重要な技術と言えるのではないかと考えます。我々理学療法士はこの触診技術の精度を更に高めるため、日々努力しています。 リハビリテーション科 小野正博 |
投球肩障害における理学療法は痛みの原因を評価して治療を行います。 同時に投球フォームの指導も進めて行きます。 正しい投球動作を行う上でゼロポジションがポイントになります。ゼロポジションとは上腕骨と肩甲棘が一致する肢位で、肩甲骨面上150°挙上位になります。肩関節周囲筋・インナーマッスルが均一にバランスのとれた状態となっており、投球動作時に負担が、少ない姿勢であると言えます。 プロ野球選手の場合(大人である程度フォームが完成している人)、矯正してバランスを崩しフォームがバラバラになるならば、選手生命が短くても投球の行いやすいフォームでプレーし続ける事もあります。基本は子供の時から正しいフォーム身に付ける事が重要です。 他のスポーツでもバレー(スパイク)、テニス(サーブ)でもゼロポジションを意識したフォームが大切です。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
徒手筋力検査(MMT)とは、各関節の筋または筋群の筋力を量的に測定する方法のことを言います。MMTは、麻痺や廃用性萎縮による筋力低下などの筋の評価として用いられ、診断や治療プログラムの立案、効果判定と臨床場面で多く用いられています。 MMTの判定基準は、下記の0~5の6段階で評価します。 5 Normal(N) 強い抵抗と重力に抗して完全に運動できるもの 4 Good(G) 弱い抵抗と重力に抗して完全に運動できるもの 3 Fair(F) 重力に抗してなら完全に運動できるもの 2 Poor(P) 重力を除けば完全に運動できるもの 1 Trace(T) わずかに筋の収縮が認められるが、関節運動は認められない 0 Zero(活動なし) 筋収縮が全く認められないもの 長所としては、器具などを使わず簡便に行う事ができます。短所として、技術の熟練が必要だと言われており、検査者の主観的な判断による部分が大きく、他の検査者が行った時との比較には、再現性がないなどの弱点があります。 私たち理学療法士は、廃用性萎縮や外科的手術などによる筋力低下に対して、筋収縮訓練や筋力トレーニングなどの様々な方法で訓練を行い、改善を図っています。 リハビリテーション科 服部 司 |
腰部脊柱管狭窄症とは、教科書的には「様々な型の脊柱管、神経根管、あるいは椎間孔の狭小化であり、骨性または靭帯性要因により、骨性脊柱管、硬膜管、あるいは両者の狭窄化が生じた状態である。」とあります。難しい事が書かれていますが、簡単に言えば、神経の通り道が骨の変性(骨折も含む)や靭帯の肥厚、骨の配列に異常などにより狭くなってしまい、症状が出現するものです。その典型的症状として「馬尾性間欠性跛行」というものがあります。 馬尾性間欠性跛行とは、しばらく歩いていると脚が痛くなってくるが、休憩するとまた痛みが消失し、歩くことができるといった症状です。腰部脊柱管狭窄症は症状として、腰痛は無く、このような症状が出るという特徴があります。この馬尾性間欠性跛行は今まで理学療法では治らないとされてきていましたが、近年、その効果が注目されつつあります。 しかしながら全ての脊柱管狭窄症に効果があるわけではなく、脊柱管(神経の通り道)の変性が軽度であり、腰椎が過前彎(腰を反っている姿勢)しているケースには効果があるそうです。 腰を反っている状態で拘縮(固まってしまっており、動きが出ない状態)していると脊柱管内の圧(硬膜外圧)が上昇するため、理学療法では腰の筋をリラクセーションしたり、腰の関節(腰椎の椎間関節)の可動域訓練を行います。このようにしてわれわれ理学療法士は、馬尾性間欠性跛行の症状緩和・改善を図ります。 リハビリテーション科 小野正博 |
投球肩障害についてプロ野球選手・プロチームのDr.・プロチームのトレーナーの先生方が、経験から各々の立場において講演をされました。工藤公康先生(元プロ野球選手・解説・評論家)は少年野球における成長段階での投球フォームの重要性、肩にかかる負担軽減について話をされました。 原正文先生(医師・ダイエーホークスチームDr.・福岡大学臨床教授)はメディカルチェックの評価・診断について現役のプロ野球選手に、実際おこなっている事と評価の意味について話をされました。 鵜飼先生(理学療法士・元中日ドラゴンズメディカルトレーナー・現中部学院大学准教授)は投球肩の局所に対するアプローチ、局所以外のアプローチ両面で診て、治療の方向を考え具体的に、実技を交え説明して頂きました。 小学生から高校生まで投球肩障害の選手は多数おり、今後は治療だけではなく、発症防止など幅広く活動を出来ればと考えています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |