一般的に「肩関節」というと、図の①の部分をイメージすると思います。しかし、解剖学的に肩関節と言うと、①肩甲上腕関節、②肩甲胸郭関節、③肩鎖関節、④胸鎖関節、⑤肩峰下関節(第2肩関節)といったものを総称して肩関節といいます。 肩関節はいろんな方向へ運動することが可能ですが、それは上記した各関節が一つ一つしっかり動くために運動が可能となっています。そして、これらの関節の動きが悪くなってしまうと、可動域制限・運動時痛といった機能障害を引き起こすこととなってしまいます。 われわれ理学療法士は、これら各関節における可動性をチェックし、どの部位で制限が生じているのか、どの関節が原因で痛みが生じているのかなどを評価し、運動療法を行っています。 リハビリテーション科 小野正博 |
上腕骨と肩甲骨で構成されるのが一般的に肩関節と言われる肩甲上腕関節です。上腕骨と肩甲骨は軟部組織(筋・靭帯・関節包)で繋がっています。 腱板断裂はcuff筋(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋)の停止部で上腕骨の付着部に向かう腱の一部が断裂をします。原因としては加齢による変性、スポーツによるオーバーワーク、転倒・外傷により断裂します。断裂と言うと真二つに切れるイメージがあると思いますが、浅層・深層部位で裂けていたり穴があいていたり多種多様にあります。 腱板断裂が起きた場合、断裂部位や範囲により手術による治療か、保存療法(手術をしない治療)かを選択します。腱板断裂の特徴として小さな断裂は知らない間に治癒している方も結構います。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
足関節の靭帯には、外側側副靭帯と三角靭帯があります。 外側側副靭帯には、腓骨の外果から起始する前距腓靭帯、踵腓靭帯、後距腓靭帯の3つからなり、足関節の外側を補強します。三角靭帯には、脛骨の内果から起始する脛舟部、脛踵部、後脛距部、脛舟部の深層にある前脛距部の4つからなり、足関節の内側を補強します。外側側副靭帯、三角靭帯ともに足関節の肢位により靭帯の緊張部位が変化し、足関節背屈すると前方の靭帯が弛緩、後方の靭帯が緊張し、底屈すると前方の靭帯が緊張、後方の靭帯が弛緩します。 臨床上、最も発生頻度の高い損傷として外側側副靭帯の損傷が挙げられます。外側側副靭帯の損傷は、スポーツ活動時の内反捻挫の際に生じることが多いです。 理学療法として、急性期にはアイシングや浮腫管理を行います。その後、靭帯の修復過程を考慮しながら軟部組織の癒着予防、関節可動域や筋力の改善を図り、軽い運動から開始し、徐々に負荷を上げながらスポーツ復帰を目指しています。 リハビリテーション科 服部 司 |
外傷や麻痺により、筋肉の機能しなくなってしまった、または改善が見込めない場合、その機能を再建する目的に「腱移行術」という手術が行われます。 当院にも、そのような手術を受けられた患者様が来院され、術後の理学療法を行うことがあります。「腱移行術」では、損傷・麻痺が生じた筋肉を切離し、他の筋肉へと縫着させることで機能再建を試みます。しかし、手術をした後、すぐ思うように動かせるというわけではなく、少しリハビリをしなければうまく使えません。例えば、指を伸ばす筋肉が作用しなくなり、手関節を曲げる筋肉へと移行するような手術が行われた場合、頭の中で「指を伸ばそう。」と思っても、指が伸びないです。それは、手関節を曲げる筋肉につなげているからです。つまり、頭の中での「手首を曲げよう。」という指令のもとに指が伸びることになります。このように、もともとあった筋肉固有の作用とは異なる働きで運動を完成させなければならないため、リハビリが必要になります。 我々理学療法士は、手術によって機能再建を図った筋肉を最大限に使えるよう運動をサポートし、運動制限の改善に努めます。 リハビリテーション科 小野正博 |
関節リウマチは自己免疫疾患と言って、本来、体の外部から侵入して来る病原体から身を守るはずの免疫系に異常があり誤って自分の身体を攻撃することにより発症します。さらに詳細に説明すると外部から侵入する病原体を攻撃する免疫系のT細胞が体内には備わっています。通常はどの病原体に対して免疫反応を起こすか、T細胞が司令塔的な役割をして決めていますがT細胞の不制御(T細胞の中でも自分で自分を攻撃するT細胞)により自分の身体を攻撃し始めます。それらが原因となり関節リウマチが発症すると考えられています。 今まで関節リウマチは免疫系が何に対し攻撃し関節炎へと至るのか、そのプロセスが謎であったが、京都大学の研究チームが特定しました。T細胞が認識する攻撃対象はRPL23A(60s ribosomal protein L23a)分子と言うタンパク質です。関節リウマチの患者さんの約17%に、この分子の免疫細胞が反応していました。原因となる分子からT細胞を抑制する根本的な治療へと関節リウマチの治療が対処療法から根本的な治療へと変換する可能性があります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |