「野球肘」は投球動作の中で肘関節の内側・外側などに痛みが生じるものです。そして当院でも、この野球肘で理学療法を受けられる患者さんが多くいらっしゃいます。野球肘では、図の○印のタイミングで肘関節痛が生じることが多いです。 痛みが生じる部位は肘関節なので、もちろん肘関節で問題が生じているのですが、野球肘の患者さんでは、○印のタイミングで肩甲骨が後ろにしっかり引き切ることができない方が非常に多いです。それは筋肉の柔軟性が低下しているがために肩甲骨を後ろに持っていけないケースと、筋肉の柔軟性はあるけれども筋力低下によって肩甲骨を後ろに持っていけないケースの2パターンがあります。 様々な理由で肩甲骨を後ろに持っていけなくなると、○印の時期に腕を後ろに持っていけなくなるので、早期から体が開いて肘が下がったり、早期から肘が前に出さないと投げられなくなります。このような投球フォームを繰り返すことにより肘関節の内・外側に負荷がかかり続けて野球肘を発症することとなります。 そのため当院の理学療法士は、症状が出ている肘関節はもちろんのこと、肩甲骨の可動性チェックや筋力評価、フォームチェックなどを行うことで患部の負担軽減を図り、症状改善に努めています。 リハビリテーション科 小野正博 |
昨冬のインフルエンザ予防接種の効果は低かったと思われます。世界保健機構(WHO)の予測と違うA香港型(H3N2型)が北半球で流行の主流となったからです。通常は平均50~60%とされるワクチンの効果が、昨冬のアメリカで19%、イギリスでは3%と報告されました。ワクチンの効果は患者の年齢、持病などの要素にも左右されます。 日本では毎年、国内のインフルエンザワクチンの接種者は推定5千万人、人口の約4割と言われています。効果として感染の完全な阻止はできず、目的としてはインフルエンザによる発症・受診を減らす事と、最も目的として重要視されるのは高齢者、持病のある人の重症化を防ぐ事だと考えられています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
腸脛靭帯炎とは、膝関節の屈伸時に大腿骨外側上顆と腸脛靭帯との間で過度の摩擦が生じることで大腿骨外側上顆周囲(右図のピンク丸)に疼痛が生じる疾患のことを言い、長距離走やジャンプなどの膝関節の屈伸をよく行う選手にみられる障害です。右図のように腸脛靭帯は、大腿の外側に存在しており、大腿筋膜張筋と大殿筋から起始し、脛骨のGerdy結節に停止します。 疼痛の要因として大腿筋膜張筋や大殿筋の柔軟性低下や下腿内旋などの不良姿勢が挙げられます。疼痛誘発テストとして、grasping testがあり、大腿骨外側上顆の近位で腸脛靭帯を徒手で圧迫し、膝関節を屈伸させた際に外側上顆部に疼痛が出現すれば陽性となります。 理学療法では、上記の評価を行い、筋の柔軟性の改善や不良姿勢の是正を行い、疼痛の軽減を図っています。 リハビリテーション科 服部 司 |
「結帯動作」とは、手を後ろに回す動作です。ズボンの後ろポケットに手を入れる、シャツをズボンの中に入れる、そして女性であれば下着の着脱を行う動作になります。 肩関節周囲炎を患っている患者さんでは、この結帯動作時に可動域制限や痛みのために動作ができないということが多く、改善すべき動作の一つだと考えます。このような制限を認める方は、肩甲上腕関節の上方に位置する組織(棘上筋、棘下筋、肩峰下滑液包、など)での問題を抱えている場合が多く、理学療法ではこれらの組織の拘縮(固まっている状態)、癒着や滑走障害を改善するような治療を行います。そして、この治療ターゲットとなる部分は肩関節周囲炎による炎症が波及した部分であり、且つ神経分布が豊富なため、無理な動きが入ると非常に強い痛みを伴います。 当院の理学療法士は、痛みを出さないように細心の注意を払いながら治療をおこなっております。 リハビリテーション科 小野正博 |
脊髄の中には神経線維の束が通っています。体を動かそうと言う脳からの指令は神経線維を経由して筋肉・関節に伝えられます。痛み、熱さ、寒さなどの感覚も神経線維を通して脳に伝えられます。様々な要因で脊髄が損傷すると神経繊維もダメージを受け損傷場所により手足の麻痺が起きます。神経線維が断裂・損傷した場合、再生しにくいため機能の回復は難しいと考えられています。 しかし、最近、新しい治療法が開発されました。「嗅粘膜移植」と言って、嗅粘膜を移植し機能回復を目指す治療が脚光を浴びています。嗅粘膜には例外的に神経の再生が起こっている嗅神経が存在し、嗅神経を含む嗅粘膜を脊髄の損傷部位に細かく切り詰め込むように移植します。この治療法はポルトガルのカルロス・リマ医師が2000年代に入り開発した治療法です。日本では大阪大学の臨床試験で8人中5人に効果がありました。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |