iPS細胞から作った神経細胞を人間の脳に初めて移植し、パーキンソン病の治療を目指す臨床研究が京都大学iPS研究所で開始されます。パーキンソン病は手足のふるえや筋肉のこわばりが進み、体が動かせなくなる難病です。ドーパミンという神経の中で情報を伝える神経細胞が減る事で起こります。現在は薬での治療が主に行われていますが薬での治療には限界があります。 京大では患者自身の細胞からiPS細胞を作り、ドーパミンを作る神経細胞に変えてから針を使い患者の脳に注入する研究をしているそうです。移植した細胞がうまく働けばパーキンソン病の進行を抑えられる可能性があります。しかしながらiPS細胞は目的の細胞に変化しないまま体内に入ると無秩序に増えガン化する危険性があります。臨床研究を進め安全性の確立が出来れば将来的には保険適用を目指し治療を行う予定だそうです。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
肘関節は上腕骨と橈骨、尺骨の3つの骨より構成される関節のことを言います。肘関節は上腕骨と橈骨からなる腕頭関節(赤丸)と上腕骨と尺骨からなる腕尺関節(青丸)、橈骨と尺骨からなる近位橈尺関節(緑丸)の3つに分けることができます。肘関節の運動は、屈曲、伸展と前腕の回内、回外があり、外傷などによりこれらの運動が制限されます。 運動制限が生じた関節に対し理学療法を施行しますが、肘関節の場合、異所性骨化といい、過度に運動療法を施行すると本来できない場所に骨が形成され、可動域制限が生じることがあります。私たち理学療法士は、運動制限が生じた関節に対して、レントゲンを確認しつつ、理学療法を施行しています。 リハビリテーション科 服部 司 |
指の外傷の一つとして「マレットフィンガー」というものがあります。これは、突き指などをした際、指の最も末梢の関節(DIP関節)が強制的に屈曲されて生じる骨折です。指の最も末梢の骨(末節骨)には指を伸ばす筋肉(総指伸筋腱)が付着し、この部位が強制的に屈曲されることにより、筋肉の付着部で骨折が生じます(上図)。 この骨折の治療は、骨折部の整復を行うためにワイヤーを挿入するような手術が行われます。ワイヤーによって骨折部が固定され、骨が癒合してきたらワイヤーを抜去します。 骨片が転位してしまわないようにワイヤーを挿入しなければならないのですが、挿入しているが故に、同部位での癒着が生じ、筋肉が滑走できなくなってしまいます。この癒着を剥離し、筋肉がしっかり滑走できるようにリハビリをするわけなのですが、なかなかうまくはがれてくれないために、難渋することも多々あります。 我々理学療法士は、この癒着部位の剥離、可動域制限の改善を目標に運動療法を行っています。 リハビリテーション科 小野正博 |
医療事故調査制度とは国内全ての医療機関と助産所、約18万施設を対象に医療事故が起きた場合、医療事故を調査しなさいという制度です。患者の予期せぬ死亡事例の第三者機関への届け出と院内調査を義務付ける事が2015年10月1日から始まります。主な基本的項目として ①医療機関が自ら調査する。 ②結果報告を受ける第三者機関は警察に通報しない。などが取り決められています。 厚生労労働省によると医療に関連した患者の予期せぬ死亡事例は年間1300~2000件あると言われています。これだけ多くの方が死亡しているのに、この様な制度がなかったのは、刑事責任追及につながる医療者側の反対があったように言われています。原因究明を願う遺族と、責任を追及しすぎると医療側が委縮しリスクを回避する事により医療の進歩が滞ってしまう現実とのバランスが今後の課題になると考えられます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
半月板損傷とは、膝関節の屈伸や荷重位での回旋力が加わることで半月板が損傷、断裂、剥離した状態のことをいいます。 診断方法はMRI検査や関節鏡検査にて確定しますが、臨床症状の確認や徒手検査法などもあります。臨床症状として、関節裂隙の圧痛や膝くずれ、弾発音、引っかかり感、膝関節の屈伸時の疼痛などが認められます。半月板損傷に対する徒手検査法としてApley test(左図)とMcMurray test(右図)とがあります。 前者は、腹臥位にて膝関節を屈曲位にし、脛骨長軸に軸圧をかけながら内外旋させることで半月板にストレスをかけて疼痛を誘発するテストのことをいいます。後者は、背臥位にて膝関節を屈曲位から、下腿を回旋させつつ伸展させたときの弾発音や疼痛を再現させるテストのことをいいます。 MRI検査や関節鏡検査がなくても受傷機転や臨床症状の確認、徒手検査法等で所見を得ることが大切となります。 リハビリテーション科 服部 司 |