リハビリ通信 No.186 人工膝関節全置換術後の運動療法について

2016年02月07日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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人工膝関節全置換術(Total Knee althroplasty:TKA)は、変形性膝関節症や関節リウマチなどにより変形した関節を人工関節とする手術です。当院においても、同手術を受けられた患者さんの運動療法を行う機会があります。

TKAは大腿骨、脛骨の骨切りをした部分に金属製の人工関節を挿入します。術後炎症は表面上のものではなく、骨切りした部分をはじめ、かなり深層から生じます。炎症が生じた場所では発痛物質をはじめ、関節拘縮を引き起こすような物質が多く出現します。つまり運動療法において表層へのアプローチばかりしていると関節の可動域制限が生じ、運動が制限されることとなってしまいます。

TKA後の運動療法では筋の滑走性改善、癒着剥離を行い、関節可動域の獲得を目指します。その中で「筋収縮」を用いたアプローチがあります。各筋にはそれぞれ作用(筋肉の動き方)があります。この筋の作用を考慮しながら筋収縮を促し筋の延長部にある腱の滑走性を維持し、拘縮・可動域制限の改善を図ります。

当院の理学療法士は、この「筋収縮」を用いたアプローチを実施しています。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.185 術後回復強化プログラム(ERAS)について

2016年01月31日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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手術前後の絶食を減らし早期退院につなげる術後回復強化プログラムERAS(Enhanced Recovery After Surgery)が医療費削減につながるとして欧米で普及し日本の医療機関でも導入されつつあります。

大きな手術では手術の前日から絶食し術後はベッドで点滴をして、食事開始は4~5日後となっています。術前の絶食は全身麻酔時に嘔吐を起こして肺炎、窒息を防ぐためであり、術後の絶食は縫合不全などの合併症を防ぐためです。しかし、ERAS(イーラス)では手術の6時間前までは食事をとり、2~3時間前まではスポーツドリンクを飲むことが許可されています。術後は翌日からスープ食、5分粥を食し、歩行訓練・筋力向上訓練などの運動療法が始まります。

近年の研究で手術前後の絶食は消化管の機能回復を遅らせる事と安静期間の長期化が筋力低下を招く事が周知され、その結果退院日数の延長になり患者さんにも大きな負担がかかっていました。1990年代に北欧でERASは始まり、その後、各国に広がりました。英国、オランダ、スペインは医療費削減の国家戦略として実施をしています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.184 関節リウマチについて

2016年01月29日(金) QAリハビリテーション科1新着情報

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関節リウマチとは、関節内を覆っている滑膜が炎症を起こし、関節痛や進行すると軟骨や骨が破壊され、関節が変形してしまう病気のことをいいます。関節リウマチが進行すると日常生活動作に制限を来し、介助が必要になるなど生活をする上での機能障害が生じてしまいます。現在、日本の関節リウマチの患者様は、60~70万人いるといわれています。また、発症年齢は30~50歳代で男性よりも女性の方が4倍も多く発症します。

治療方法として、進行状況に合わせて関節の痛みや変形を抑える薬物療法、関節可動域の改善や疼痛や筋のこわばりの軽減を目的とした運動療法などがあります。関節リウマチは、早期から適切な治療を行えば、症状のコントロールや関節破壊が進行するのを防ぐことができるといわれているので、まずは専門医に相談して下さい。

リハビリテーション科 服部 司


リハビリ通信 No.183 単関節筋と二関節筋について

2016年01月25日(月) QAリハビリテーション科1新着情報

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全身には数多くの筋肉が存在します。筋肉は骨に付着し、そして骨に停止します。そのため、筋肉が収縮することで骨が牽引され、運動が遂行されます。この筋肉の始まりの部分を「起始」と言い、終わりの部分を「停止」と言います。通常、この起始と停止の間には関節が位置するので、関節運動が可能となります。

筋肉の起始・停止の間に関節が一つ位置する場合、その筋肉は「単関節筋」と呼び、関節が二つ位置する時には「二関節筋」と呼びます。例えば図1の筋肉(上腕筋)は、肘関節前面に位置し、筋肉の起始・停止の間に関節が一つだけ(肘関節だけ)が位置する単関節筋です。この筋肉は肘関節の運動に関わる筋肉であり、肩関節などの隣接関節までまたぐものではないため、他の関節のポジションに影響を受けることはありません。

図2の筋肉(上腕二頭筋)では、筋肉の起始・停止間に肘関節と肩関節の二つが存在しており、二関節筋となっています。筋肉の働きとしては肘関節の運動(肘関節の屈曲)に関わるため、作用としては上腕筋と同じです。このような二関節筋では、肩関節のポジションの影響を受けます。肩関節屈曲位(腕を挙げた肢位)では、この上腕二頭筋の筋肉は緩んでしまい、筋の収縮効率が低下します。つまり、肩関節下垂位よりも挙上位では作用が低下することとなります。

筋肉にはこのような特徴があります。当院の理学療法士はこのような筋肉の特性、機能解剖学をもとに治療にあたっています。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.182 紅茶成分で骨粗鬆症を改善する。

2016年01月11日(月) QAリハビリテーション科1新着情報

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骨は絶えず新陳代謝をしており、健康な骨を維持するには骨を壊す破骨細胞と骨を作る骨芽細胞の数のバランスが重要と言われています。

骨粗鬆症はバランスが崩れ、破骨細胞が多くなった状態です。骨粗鬆症の方は日本では1千万人以上いると推測されます。破骨細胞が作られるのに関係する物質と反応する酵素があり、紅茶に含まれるTF-3というポリフェノールの一種によって酵素の働きを抑制することが最近の研究でわかってきました。

体重60kgの人が3日に1回60杯を飲むと、破骨細胞の数が減り健康な骨に改善されるそうです。カルシウムの摂取と合わせてTF-3ポリフェノールを摂取すると、骨粗鬆症の予防や症状の改善につながると将来に期待できそうです。

リハビリテーション室長 見田忠幸