投球動作とは下肢からの運動連鎖により、体幹・上肢を使って効率よくエネルギーをボールまで増幅させ伝達する全身運動のことをいいます。 日々の練習や試合により下肢や体幹、上肢の筋肉・靱帯などの軟部組織の機能低下が生じることでパフォーマンスも低下します。この状態で投球動作を反復して行うと肩関節に負荷が加わり外傷や障害が生じる危険性があります。 理学療法では、その障害に至った経路を評価・推察し、運動連鎖の破綻がどのような形で肩関節の損傷を生じたかを把握することが必要となります。 リハビリテーション科 服部 司 |
手関節の手のひら側にある骨(手骨骨)と靭帯(手根横靭帯)により構成されるトンネルのことを手根管と言います。そのトンネルの中には指を曲げる筋肉の腱(浅指屈筋腱、深指屈筋腱、長母指屈筋腱、橈側手根屈筋腱)と正中神経が通過します。そして、この手根管内で正中神経が狭窄されて生じる疾患を「手根管症候群」と言います。手根管症候群の原因は様々なものがありますが、神経が紋扼されるため、母指~環指の橈側(親指側)のしびれや痛み、母指球筋の筋力低下といった神経症状を呈します。 治療法は手術により神経の圧迫を除去するという方法がとられます。神経は圧迫を受けるとへこんでしまいます。圧迫されている期間が短い場合、手術により圧迫要因を除去することでへこんでしまっていた部分が元に戻り、神経症状も消失してきます。しかし、圧迫を受けたまま長期間経過しているようなケースでは、へこんでしまった神経が元の形に戻らず、術後もしびれのような神経症状や筋力低下がなかなか改善しないという場合もあります。そのため、手(指)のしびれを自覚するような場合は速やかに受診することが大切であると考えられます。 リハビリテーション科 小野正博 |
通常、生体肝移植後の拒絶反応を防ぐために免疫抑制剤を使用します。しかし、副作用があり大きな問題になっています。例えば免疫が低下しているので感染症にかかりやすい、ガンになりやすい事など、その中でも一番の大きな問題は免疫抑制剤を一生飲み続けなければいけないという事です。 最近、生体肝移植後の患者さんに起きる拒絶反応を防ぐ治療について副作用の多い免疫抑制剤に頼らない新たな開発に北大と順天堂大の研究チームが世界で初めて成功しました。 新たな治療は移植手術前に患者さんと臓器提供者の血液からリンパ球を取り出し特殊な抗体を混ぜて、2週間培養した後、患者さんのリンパ球を一度、体内に戻します。患者さんのリンパ球は提供者の臓器を異物として認識しない「制御性T細胞」と言うリンパ球に変わります。これを術後13日目の患者さんの体内に戻した後、抑制剤を減らし1年半後に投与を中止します。 免疫抑制剤を飲まずに拒絶反応を抑える治療法は患者さんにとって血液のリンパ球を取り出すと言う手法で済み、体にかかる負担が少ない点で画期的です。 現在、臨床試験では合併症も確認されておらず体内で必要な免疫機能も維持されています。今後は他臓器にどこまで応用できるかが課題になります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
消炎鎮痛剤(NSAIDs)は、関節の腫脹や疼痛を和らげる作用があります。速効性がありますが炎症を根底から消失させることはできません。また、継続的に服用し続けると胃潰瘍や十二指腸潰瘍になる可能性があるため注意する必要があります。 抗リウマチ薬(DMARDs)は、リウマチの第一選択薬で関節リウマチの原因である免疫の異常に作用し病気の進行を抑える作用があります。治療効果を得るまでに1ヶ月~半年かかるためNSAIDsと併用することがあります。 ステロイドは、関節の腫脹や疼痛を和らげる作用があり、効果も強力です。上記の消炎鎮痛薬や抗リウマチ薬を用いても、炎症症状が抑制できない場合に用いられます。ステロイドを継続的に使用し続けると感染症や糖尿病などを引き起こす可能性があるため使用する場合は注意する必要があります。 生物学的製剤は、最近の関節リウマチの治療薬に用いられるようになり、関節破壊の進行を抑える作用があります。使用方法には、皮下注射や点滴があり、1週間に2回から2ヶ月に1回など様々な薬があるので患者様の生活スタイルなどに合わせて治療薬を選択することができます。 関節リウマチの治療薬には様々あり、医師と相談し患者様の病気の症状などに合わせて選択していきます。 リハビリテーション科 服部 司 |
日常診療の中で、患者さんから患部を「冷やした方がいいんですか?温めた方がいいんですか?」ということをよく聞かれます。その際、「熱感があれば冷やしてください。局所的に熱感がない場合や、慢性的な痛みがある部位は冷やす必要はありません。」とお応えしています。熱感とは、患部局所の炎症により循環障害が生じている状態であり、受傷後急性期に生じるものです。例えば足首の捻挫をしてすぐは腫れますし、受傷した部位は熱感が生じています。そういった場合は冷やした方がいいと思います。 同じように「腫れる」という状態で浮腫というものがあります。これもまた循環障害により生じるものではありますが、熱感を伴いません。つまり、冷やす必要はない「腫れ」です。パッと見たら、腫れているので冷やした方がいいのではないかと迷ってしまうかもしれませんが、まず腫れている部位を触れてみて、熱感があるかどうかを確認することが重要だと思います。 当院では、術後の患者さんの理学療法を行います。術後炎症がまだ残存しているようなケースでは、リハビリ室でのアイシングを行ったり、自宅でのアイシングを指導したりしています。 リハビリテーション科 小野正博 |