腰痛の原因は様々ですが、腰部の筋肉や腰椎の支持組織、そして骨に何らかのトラブルが生じることで発生します。その中でも運動時痛はほとんどの症例で認めるため、痛みを回避するためには「疼痛回避肢位」といった姿勢が重要となってきます。そこで考えたいのが、どの姿勢が腰椎に大きな負荷がかかるのかということです。 図にあるように、仰向けで寝た姿勢が最も腰椎への負荷が少ないとされています。しかし、腰痛を有する症例では股関節の拘縮を合併していることが多く、仰向け姿勢よりも側臥位(横向きに寝る姿勢)の方が痛くないというケースもあります。 当院では、腰痛の治療で物理療法を受けられる方がいますが、できるだけ痛みの少ない姿勢で治療を受けていただくため、治療肢位を考えながら対応させていただいています。 リハビリテーション科 小野正博 |
入院患者を別の医療機関などに搬送するために、病院が所有している救急車(病院救急車)を自宅で療養している緊急性の低い高齢者に対し、搬送する取り組みが東京で始まっています。地域の医師会が運用する仕組みで、かかりつけ医が救急車の出動を要請します。無論、所有している病院以外の医療機関にも搬送するのが特徴で消防署の救急車負担減につながると言われています。 病院救急車の出動では緊急性の低い患者を対象として2014年12月~2015年12月までの一年間で63件の出動がありました。費用は国の地域医療再生基金を利用し、搬送料の負担はありませんでした。 消防署に配備されている救急車の出動件数は10年前に比べ20%も増加しており、とくに高齢者の出動要請が増加しています。その他にタクシー代わりに安易な救急車の出動要請も増加しています。こうした状況が重篤患者の搬送に支障を及ぼすと問題になっています。二つの問題に対し一つ目の問題である安易な救急車の出動要請では搬送料金を請求する事と二つ目の高齢者の増加については高齢者が消防署の救急車を可能なかぎり呼ばないようなシステム作りが必要であり、病院救急車を活用するのも一手段であると考えられます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
投球動作のphaseには、多くの分類が用いられており、分類により何相かに分けることができます。例えば下記の図のように①~③:ワインドアップ期、③~④:早期コッキング(アーリーコッキング)期、⑤~⑥:後期コッキング(レイトコッキング)期、⑥~⑦:アクセレレーション(加速)期、⑧~⑨:フォロースルー期の5つに分けることができます。 各phaseでの投球動作に問題があると特定の部位に負担がかかり疼痛が出現します。疼痛の出現する原因には様々あり、投球側の肘下がりや肩甲骨周囲筋の筋力低下、下肢・体幹の柔軟性低下などが挙げられます。 当院を受診する投球肩障害は、10代の患者様が多く、とくに少年野球をしている患者様は投球フォームの未完成や骨の未成熟、筋力不足、また練習過多などの原因により肩関節に疼痛が生じています。 理学療法では、上肢・下肢・体幹の可動性や筋力、投球動作のチェックを行い、問題点を抽出し治療を行っています。 リハビリテーション科 服部 司 |
「拘縮」とは、関節外の軟部組織が原因で生じる関節可動域制限のことを言います。その原因組織は皮下組織や腱、腱膜、皮膚、そして筋肉など、様々なものがありますが、その中でも最も関連性のあるものが筋肉です。例えば、骨付きの鶏肉(関節を含む部分)を動かそうとしてもなかなか動きません。しかし、この骨付き鶏肉から肉の部分を取り払ってしまえば関節部分はどこまででも動くようになります。拘縮も同じように考えることができます。つまり、人間の体から筋肉の要素を取り払ってしまえば、関節は自由自在に動けるようになると思います(もちろんその他の組織由来の可動域制限もありますが)。 整形外科疾患に限らず、理学療法を受けられる患者さんのほとんどがこの拘縮に悩まされています。そのため、拘縮治療をいかに上手くやるか、どれだけ拘縮を取り除くことができるかということが治療成績を左右すると考えています。 拘縮治療は主に「筋収縮」を用いて行います。拘縮によって筋自体の柔軟性が低下している場合、筋収縮を促すことで筋肉を運動させて柔軟性を獲得していきます。また、筋肉によっては他の軟部組織と連結している部分があります。そのような解剖学的特徴がある部位では筋の収縮力を用いて連結している組織を引っ張ったり、滑走させたりします。このようにして筋およびその周辺軟部組織へのアプローチを行い、拘縮の除去・可動域制限の改善に努めています。 リハビリテーション科 小野正博 |
中南米、ブラジルを中心に流行が続いているジカウィルス感染症(ジカ熱)は胎児の「小頭症」、手足に麻痺が出るギランバレー症候群との関連が疑われています。ジカウィルスはデングウィルスと同じフラビウィルス科に属します。1947年ウガンダのジカの森にいたアカゲザルから初めて見つかりました。世界保健機関(WHO)によるとジカウィルスはアフリカ、東南アジア、太平洋諸国、ブラジルの順で広がっていったと考えられています。ブラジルで見つかったジカウィルスは遺伝子解析の結果、ポリネシアから持ち込まれました。 日本では2016年2月にブラジルから帰国した10代の男子高校生、3月にブラジルから帰国した30代女性の感染が確認されています。いずれも感染流行地域への渡航者でした。ジカ熱は主に感染者の血液を吸った蚊が別の人を刺す事で広がるとされています。 一般的に全身に症状が出るウィルス感染症は血液による感染の可能性が高いと言われています。2016年にはブラジルでオリンピックが開催され、さらに世界中に広がる可能性が考えられ注意が必要です。ジカウィルスの解明に向け現在、世界中で解析が進められています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |