リハビリ通信 No.206 隠れメタボについて

2016年07月07日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

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肥満ではないのに高血圧や高血糖などの異常を複数持つ「隠れメタボリックシンドローム」の患者が全国で914万人に上るとする推計を厚生労働省研究班がまとめました。肥満でなくても高血糖、脂質異常などの代謝異常が重なると心臓病、脳梗塞などのリスクが高まります。

研究班は1977年~2012年に40~79歳の男女約4000人の健康調査データを解析しました。男性の10.9% 女性の13.6% が体格指数BMI25未満で、腹囲もメタボの基準未満なのに、高血圧、高血糖、脂質異常のうち2つ以上の異常を持つ人が、全国で男性380万人、女性534万人(合計914万人)に見られました。

日本人は血糖値を下げるインスリンの分泌能力が低い人が多く、痩せていても糖尿病になりやすい傾向が見られます。とくに①運動習慣がない ②朝食抜き、早食いなどの悪い食習慣を続けると隠れメタボの危険性が高まります。対策として①一日5500歩以上歩く②たんぱく質、カルシウム、青魚に含まれる不飽和脂肪酸を積極的に摂取するなどは効果的でした。

現在、日本ではメタボ、肥満対策は積極的に行われていますが隠れメタボは放置されています。今後、隠れメタボが重篤な疾患に移行し、高齢者の寝たきりを防ぐためにも対策が必要です。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.205 Zero Positionについて

2016年07月04日(月) QAリハビリテーション科1新着情報

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zero positionとは、肩甲骨の肩甲棘軸と上腕骨軸が一致する肢位(上図)のことを言い、肩関節130~150°挙上位がzero positionであると報告されています。

投球動作において、このzero positionが重要な理由として、肩関節は構造上、不安定な関節になります。zero positionをとると臼蓋が上腕骨頭を支持するので骨性の安定性を得られること、また、rotator cuffの緊張が均等となるので軟部組織による機能的安定性を得られること、この2つの理由からzero positionが肩関節の最も安定した肢位であると言われています。

当院を受診する患者様の多くはzero positionがとれない方が多く、その要因として肩甲骨固定筋の筋力低下、肩関節の可動域制限などが挙げられます。

リハビリテーション科 服部 司


リハビリ通信 No.204 骨粗鬆症と高齢者の4大骨折について

2016年06月26日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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骨粗鬆症とは骨組織の微細構造の以上の結果、骨に脆弱性が生じて骨折が生じやすくなる病気です。そのために転倒による骨折のリスクが非常に高くなってしまうために注意が必要です。

特に上腕骨頸部骨折、脊柱圧迫骨折、橈骨遠位端骨折、大腿骨頸部骨折などは「高齢者の4大骨折」と呼ばれ、当院でもよくみかけます。中でも「脊柱圧迫骨折」や「大腿骨頸部骨折」は歩行能力に直結し歩行困難となる方は非常に多く、骨折後の日常生活動作レベルを大きく低下させてしまいます。

骨粗鬆症の発見には「骨密度検査」を行う必要があり、当院でも簡単に検査できます。早期発見・早期治療が非常に大切となってくる疾患ですので、気になる方は受診をお勧めします。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.203 選定療養費について

2016年06月12日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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選定療養費とは200床以上の大病院が紹介状なしの初診患者に請求する特別料金であり、平均設定額が2365円(2014年)です。厚生労働省の調査によると大病院の約半数にあたる1201病院が選定療養費を設定しています。選定療養費の最低は210円で最高は10800円でした。

なぜこのような選定療養費が設定されるのかと言うと、例えば軽い症状でも診療所や中小病院ではなく大病院を受診する患者さんが多いために、大病院が重症患者の治療に専念できなくなり、患者さんの待ち時間が長引き、勤務医の過重労働につながるなどの問題があるからです。こうした問題を是正し、医療機関の役割分担を促すために選定療養費は導入されました。

しかしながら患者さんの負担増加になっても、紹介状なしで大病院を直接訪れる軽症患者は後を絶える事がありません。そこで厚生労働省は2016年4月から大学病院、500床以上の拠点病院など240病院について紹介状なしの初診患者について最低5000円の負担を請求することを実施しています。実際には軽度な症状で、念の為に高度な医療を受けたい患者さんの意識と現実との間で大きなズレがあり、その部分が問題である様に考えられます。将来的には最低負担額がさらに大きくなると予想されます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.202 下肢の機能低下と肩痛の関連性について

2016年06月05日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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投球動作とは、下肢からの運動連鎖により、体幹・上肢を使って効率よくエネルギーをボールまで増幅させ伝達する全身運動のことをいいます。投球障害肩の要因には、肩関節の可動域制限や肩甲骨固定筋の筋力低下、下肢・体幹の機能低下などが挙げられます。

下肢の機能低下と投球障害肩との関連性について、小・中学生を対象にメディカルチェックを行った結果、下肢の機能低下が生じても肩痛がある人とない人がいたということで直接的な関係性はなかったと報告されています。しかし、下肢を治療しないというわけではありません。

投球障害肩の発生要因として運動連鎖の破綻や下肢の機能低下により下肢からボールへとエネルギーを伝達する運動連鎖が困難となり「いわゆる手投げ」状態になります。この状態で練習しすぎると肩関節の機能低下が起こり、投球動作で大事なzero positionでの投球が困難となり、肩関節に疼痛が生じてしまいます。

理学療法でのfirst targetとなるのが肩甲帯であり、肩関節の可動域制限や肩甲骨固定筋の改善を図り、その後下肢・体幹へと治療を進めています。

リハビリテーション科 服部 司