関節が曲がる、伸びると言う動作が起きた場合、関節を支点に関節を中心とした運動動作状態を関節運動と言います。関節運動は、その運動の行う一方向を規定して、運動の軸を設定します。例えば膝関節の屈曲・伸展運動の軸は大腿骨の外側上顆と内側上顆を結ぶ線を一つの運動軸とします。その運動軸を支点に脛骨が移動し膝関節の屈曲・伸展と言う関節運動が成立します。 理学療法で膝関節の関節可動域を治療する時に、内側上顆と外側上顆を結ぶ運動軸が水平と考えた場合、本来の生理機能解剖学的な膝関節の運動からは逸脱しており、関節可動域の治療をすると膝関節の周辺軟部組織にかかる負担は大きいものと考える事ができます。 内側上顆と外側上顆を結ぶ本当の膝関節の運動軸は外側前上方より内側後下方へ、斜めに運動軸は存在します。 膝関節の屈曲・伸展はこの運動軸に沿って施行する事が負担のかからない本当の生理機能解剖学的な関節運動になります。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
肩関節の挙上動作(手を挙げる動作)には上腕骨の動きに追随するように肩甲骨の運動が伴います。肩関節の挙上動作における上腕骨と肩甲骨の協調性は肩甲上腕リズムと呼ばれており、上腕骨に対する肩甲骨の動きは2:1という一定の度合いで動いていることが報告されています(図1)。 この肩甲上腕リズムの乱れは、肩関節の挙上制限や疼痛に関与することが考えられています。肩甲上腕リズムは、加齢や姿勢、肩周囲組織の硬さおよび筋力低下が影響します。 リハビリテーション科 河田龍人 |
整形外科の治療は、手術を用いた観血的治療と手術を用いない保存的治療に大別されます。 観血的治療が行われた場合は、手術の効果を最大限に発揮するための理学療法が必要となります。一方、保存的治療では、薬物療法、注射とともに理学療法は重要な治療の一つとされています。 リハビリテーション科 河田龍人 |
年齢と共に腰椎の後弯は進みます。つまり、年齢と共に筋力は低下し、椎間板の変性が起き、解剖学的な構造上、脊椎の後弯、前屈みが更に起きやすくなります。要因としては長時間、腰部脊柱起立筋群・腰背筋膜が姿勢の均衝化を続ける事により、これらの筋緊張が強くなります。筋緊張が強くなる事により血液の循環動態が停滞し、徐々に筋が阻血状態へと進み萎縮を惹起します。そして腰椎後弯、前屈みが悪化し、経時的な腰椎の後弯化がさらに進み、神経に牽引刺激、絞扼刺激が加わります。その結果、殿部痛、腰痛が出現すると考えられます。 理学療法では過緊張にある腰部筋群の自発収縮を誘導するように、軽い収縮を促して行きます。最初は筋のリラクセーションを中心に行い、そして段階的に筋力の負荷を高め、筋力向上exを進めて行きます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
腰痛の治療において多裂筋は重要な筋の一つです。多裂筋は仙骨から第2頸椎まで走行しており、最も強大なのは腰部です。多裂筋は腰椎に走行している他の脊椎背側筋群と比べ腰椎レベルで占める割合が大きい、つまり数多くの軟部組織の中で腰痛の一要因として考えられます。 実際に腰椎疾患の患者さんでは多裂筋のスパスム、腫れ、腫脹が見られる事が多く、理学療法でも治療の一つとしてリラクセーションなど多裂筋に対しアプローチを行います。 リラクセーションを実施する場合、骨盤を後傾させ、腰椎の前弯を可能な限り消失させた状態で多裂筋の走行を考慮して収縮を促します。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |