リハビリ通信 No.216 母指CM関節症について

2016年10月02日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

 

 

図1図1

図2図2

母指CM関節症とは、母指(親指)の付け根にある関節(図1)の変形性関節症であり、物を把持した時、親指と人差し指で物をつまむ動作で痛みが生じるのが特徴であり、日常診療の中でよく遭遇します。このCM関節症の治療法は「装具により固定する保存療法」と「手術療法」の2つがありますが、まずは保存療法が行われ、それが無効だった場合、外科的治療が行われます。

保存療法としては、患部を使うと痛みが生じてしまうため、固定による患部の局所安静、関節の安定化を目的とした装具(図2)をしばらくの間装着する方法が行われます。しかし、この装具は患部の動きを完全に制動できるものではなく、「装具をつけていてもなかなか痛みが取れない。」という声もよく聞きます。したがって、本疾患に対する保存療法はまだまだ課題がたくさんあり、改良していかなければならない分野です。

どのように痛みを改善していくのか、どのような治療法が効果的なのかを日々考え、少しでも患者さんの痛みの緩和につながるよう努めていきます。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.215 果実アレルギーについて

2016年09月20日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

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果物を食べると口の中がかゆみ、唇の腫れなどの症状が出る。「果物アレルギー」が増えています。花粉症と関連がある新しいタイプのアレルギーと考えられています。果物や野菜には花粉症のアレルゲン(アレルギーの原因となるタンパク質)と似た構造のタンパク質を含むものがあります。花粉症患者がこれを食べると症状が出る場合があります。花粉症になって数年後に果物アレルギーを発症するケースが多く見られます。なぜ遅れるか?理由ははっきりとしません。

花粉症の原因となる植物の種類によってアレルギー症状が出る果物は違ってきます。シラカバ・ハンノキの花粉症はリンゴ・モモ・サクラ、ブタクサはメロン・スイカの患者が多く、スギ花粉症はトマトで症状が出るが、報告は少ないと言われています。飲食して5分以内に口の中や唇にかゆみ違和感が出現し別名で口腔アレルギー症候群とも呼ばれ子供から大人まで幅広い世代で発症します。

とくに大きな問題点として、アレルギーの低年齢化と重症化の2つの問題があり、低年齢化は3歳で花粉症を発症、5歳で果物に反応する例もあり、とくに子供は症状をうまく伝える事が出来ないので注意が必要です。また、重症化の問題では口の中がかゆいだけではなく、呼吸困難などに移行する事もあり注意が必要です。

対策としては、口腔アレルギー症候群の原因となる果物のアレルゲンは加熱することにより分解されるので、ジャム、缶詰は症状が出現しないことが多く、一度に同じ果物、搾りたてジュースを多量に飲食しない、その他にアレルギーの専門医を受診し適切な治療を行いコントロールして行くことです。アレルギーは正しく理解し適切な治療を行えばコントロールできる時代と言われています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.214 浮腫に対する理学療法について

2016年09月11日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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浮腫には、心臓や肝臓、腎臓疾患などが原因で生じる全身性の浮腫とリンパの障害や術後や外傷後などが原因で生じる局所性の浮腫に分けることができます。主として理学療法の対象となるのは後者の局所性の浮腫が中心となります。

浮腫に対する理学療法として

①挙上:患部を心臓より高くすること。

②圧迫:弾性包帯を用いて遠位から近位にむけて同じ圧を加えながら均等に巻くこと。

③筋収縮:筋肉の収縮・弛緩を繰り返し、循環をよくすること。

この3つを複合的に行うことで浮腫の改善に役立ちます。

リハビリテーション科 服部 司


リハビリ通信 No.213 触診について

2016年09月04日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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最近、私は「触診」の勉強・練習を継続することに取り組んでいます。「触診」とは読んで字のごとく、「触れて、診る」という技術です。

我々理学療法士は、患者さんに触れる職業です。関節がしっかり動いているのか、筋肉がしっかり動いているのか(収縮できているのか)といった判断をする上で触診が必要となりまし、実際に今、触れている組織が何なのかを認識する上でも触診が必要不可欠です。各組織を正確に触れることができ、正確な操作をすることが良好な治療成績に直結する、つまり触診の技術が治療結果につながるため、この触診という技術の精度を上げることは非常に重要となってきます。

そのために勉強と練習を繰り返し、少しでも良好な治療成績を出せるようにしたいと思い、日々取り組んでいます。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.212 耐性菌について

2016年08月19日(金) QAリハビリテーション科1新着情報

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抗生物質(抗菌薬)が効かない耐性菌に注目が集まっています。世界保健機関(WHO)は世界中で危険なレベルに達しているとして、主要国首脳会議(伊勢志摩サミット)でも対策が議論され世界的な課題となっています。

抗生物質は1929年、英国の学者フレミングがペニシリンを発見した事から始まりメチシリン、バンコマイシンなど様々な抗生物質が開発され細菌の感染治療に用いられましたが耐性菌が次々に出現し、いたちごっこの状況が続いてきました。耐性菌は遺伝子が突然変異したり、細菌が持っている耐性遺伝子が他の病原菌に乗り移ったりして生まれます。耐性菌が感染を繰り返すと複数の抗生物質への耐性を獲得し多剤耐性菌になります。つまり、使用できる抗生物質が限られ治療は困難になります。耐性菌の中でも特に対策が急がれているのがカルバペネム耐性腸内細菌科細菌(CRE)です。大阪の病院で大規模な院内感染が起こり健康な人でも重症化する恐れがあります。

対策として

①国や学術機関を中心に抗生物質の開発を進める必要がある。

②幅広く菌に効く薬ではなく、各々の菌にピンポイントで効く薬が必要である。

③抗生物質の正しい服用が重要で使いまわしはせず、必要な時にだけ処方された量を守って服用することが大切である。

④手洗いなど基本的な日常感染対策を習慣づける。

今後、新しい抗生物質が開発されなければ感染菌による死亡者数が更に増えると考えられます。

リハビリテーション室長 見田忠幸