リハビリ通信 No.226 肩関節周囲炎の夜間痛について

2017年01月22日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

図

肩関節周囲炎は拘縮による可動域制限、運動時痛や安静時痛といった痛みなど、様々な症状を呈します。その中で「夜間痛」というものがあり、就寝後、だんだん疼く(うずく)ような痛みが生じ、その痛みのために目が覚めてしまうというものです。※ここでの痛みは就寝後に生じる「安静時痛」であり、「寝返りをした時に痛い。」というものは運動時痛であるために除外しています。

この夜間痛の原因として、「肩峰下滑液包の炎症」が関与しています。この肩峰下滑液包には神経が非常に多く分布しているため、同部位での炎症が生じると安静時痛・運動時痛ともに強く出現することとなります。

我々理学療法士は、この肩峰下滑液包に負担をかけない可動域訓練、同部位の癒着や拘縮の除去などを行い、夜間痛の軽減に努めています。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.225 鼻水はなぜ出るのか?

2017年01月03日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

%e3%83%aa%e3%83%8f%e3%83%93%e3%83%aa%e9%80%9a%e4%bf%a1no-225

くしゃみと同様に鼻に入った異物を排除する防衛反応の一つが鼻水と言えます。

鼻の機能には2つあり、吸った空気が肺に送られる前に適切な温度や湿度になるように調整するエアコンのような機能と吸い込んだ空気中に含まれる異物を取り除く、フィルターのような機能があります。

例えば細菌、ウィルス、花粉、ハウスダストなどの異物が鼻の中に侵入し、鼻の粘膜が炎症を起こし時に、鼻腔の異変を察知した副交感神経が大量に粘液、つまり鼻水を作り異物を体外へ排除しようとします。また、鼻に入った異物の種類により鼻水の成分が変わります。細菌が入った場合、細菌の死骸、白血球の一種が含まれるため粘度が高く黄色い鼻水になります。一方、花粉などアレルギー物質に反応した鼻水は白血球に加え血液中の水分が混じり水鼻になります。

鼻をかむ時は両側の穴を同時にではなく、片方ずつ穴を押さえて交互にかむことが大切です。両側を同時に強くかむと鼻水が耳に逆流し他の症状を発症する恐れがあるためです。また、鼻水が垂れるからといって強くすすることも逆流の原因になります。鼻と耳は鼓膜の奥の耳管でつながっています。鼻水には細菌やウィルスなど異物が混じっているため耳まで達すれば中耳炎の原因になり、強くかみすぎると耳の中に圧力がかかり、耳が痛くなることもあります。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.224 組織の修復期間について

2016年12月22日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

イラスト

理学療法を行う上で「各組織の修復期間」を考慮することは非常に重要であると考えています。

例えば外傷後の方、手術後の方は筋肉や靱帯、関節包といった様々な軟部組織にダメージが加わった可能性があり、その組織はある程度の時間をかけてゆっくりと組織が回復してきます。この組織の修復期間では、少しずつ痛みも楽になってきます。この時期、いわゆる「治りかけ」の時期に無理をしてしまう方は非常に多く、無理をすることで損傷組織の修復を阻害してしまい、痛みが出現したり、組織の回復が遅れたりします。

そのため、我々理学療法士は患者さんに対する組織の修復に関する説明を行い、しても良い動作、してはいけない動作といった動作指導もしっかりと行わなければなりません。当院ではできる限り早期の回復を目指すため、このような方法で理学療法を行っています。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.223 高額新薬と公的医療保険の破綻について

2016年12月08日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

%e3%83%aa%e3%83%8f%e3%83%93%e3%83%aa%e9%80%9a%e4%bf%a1no-223

オプジーボは免疫の働きを利用する新薬で肺ガン患者の2〜3割に高い治療効果があるとされています。しかし価格も高く、際限なく薬剤費が膨らむ恐れが指摘されています。

2年前の9月の発売時は、年間470人程度の皮膚ガン患者で採算がとれるように価格が決まりました。しかし、昨年12月に肺ガンに使えるようになり、対象患者は1万5000人程度に急増し2016年度の販売予測は1260億円と前年度の6倍に、さらに腎臓ガンの一部への使用が承認され血液のガンなどの承認を申請中と今後、広がる勢いです。

オプジーボ100ミリグラムの値段は英国で約15万円、米国で約30万円、日本は約73万円、体重60キロの患者で年間3500万円かかり、費用に上限を設ける「高額療養費制度」を利用すれば患者の負担は多い人でも月、約30万円に収まります。患者負担を除く費用を賄うのは保険財政であり、高額な新薬が日本の医療を支えてきた国民皆保険体制や国家財政を破綻させる可能性があります。国民医療費約40兆円のうち、薬剤費は10兆円足らずですが、高額薬が次々に出れば薬剤費はすぐに倍になると思われます。患者5万人がオプジーボを1年間、使用すると1兆7500万円かかると国は試算しました。

オプジーボの問題点は2点あり①治療効果がある患者は2〜3割だが投与前にどの患者に効くか分からない②効果が持続する期間の見極めが困難で、やめ時が決めにくいなどである。2つの問題点を通して言えることは無駄が多くなり時間・労力・費用を浪費してしまうということです。

高額新薬は今後も次々に登場する予定で厚生労働省は薬価引き下げの仕組みづくりを検討中ですが、同省の強硬姿勢に製薬業界は反発しており、医師会も保険給付の範囲縮小につながらないようにと述べています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.222 足のアーチについて

2016年11月20日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

%e8%b6%b3%e3%82%a2%e3%83%bc%e3%83%81

足部には「内側縦アーチ」、「外側縦アーチ」、「横アーチ」という3つのアーチがあります。人が歩行や立位保持といった地面に足を付く動作では荷重分散を行う必要があり、ここでこの足部の立体的なドーム構造(アーチ構造)が重要となってきます(上図)。また、この足部アーチが崩れると、足部だけではなく隣接する関節である膝関節、股関節、または腰椎などにも影響してくると言われています。

これらの各アーチが崩れることにより各骨の偏位、荷重分散機能の低下、圧集中などが起こり、様々な機能障害・症状が出現するため、アーチを保持する機能を持つ筋(前脛骨筋、後脛骨筋、長腓骨筋、短母趾屈筋、母趾内転筋、母趾外転筋など)の筋力が非常に重要となってきます。しかし、アーチが崩れる、つまり骨が偏位してしまうと各筋の走行も変化してしまうためにアーチを保持する筋力を発揮できなくなってしまっているケースもあります。そういった場合、治療は足底挿板(インソール)を用い、崩れてしまったアーチを保持することを行います。

当院でも足部アーチが崩れてしまい、各関節に症状が出現している方もおられます。我々理学療法士は、足部アーチの状態を詳細に評価し、どこから痛みが生じているのかを考察しながら運動療法を行っています。

 

※外側アーチ=外側縦アーチ

内側アーチ=内側縦アーチ

前側アーチ=横アーチ

 

リハビリテーション科 小野正博