最近、握力と「寝たきりや認知症のリスク」との関連性などが報告されており、関心を持っておられる方も多く、「どうやったら握力を強くすることができますか?」という質問を受けることがあります。 握力とは「握る力」であり、指を曲げる筋肉や手首を掌屈する筋肉のトレーニングをすることで強くなっていくというイメージを持たれていることが多いようです。しかしながら実際は拮抗筋である手の甲側に位置する指を伸ばす筋肉、手首を反らす筋肉の筋力がないと握力は向上しません。 そのため我々理学療法士は、握力強化を行う際、主動作筋とともに拮抗筋のトレーニングも併行して筋力の向上を図っております。 リハビリテーション科 小野正博 |
近年、ロコモティブシンドローム(運動器症候群)が注目されるようになり、それを予防するための運動の一つに片脚立位があります。これは、バランスを取る上で重要な動作であり、歩行はこの片脚立位の繰り返しでもあるためにロコモティブシンドロームを予防する運動(ロコトレ)の一つとなっています。 片脚立位では支持脚と骨盤を結ぶ筋肉(主に中殿筋しっかり働くことで骨盤が水平化され、安定した片脚立位が可能となります。そのため、この中殿筋の筋力低下が生じると骨盤水平位を保つことができずにバランスを崩してしまうため、同筋の筋力トレーニングとして片脚立位が行われます。 そしてここで少し考えたいのが、トレーニングをする際の姿勢です。片脚立位を行う際、骨盤の肢位によって作用する筋肉が変化します。骨盤前傾位では中殿筋の後方の線維が作用し、骨盤後傾位では中殿筋の前方線維や大腿筋膜張筋といった筋肉が作用します。そのため、骨盤の肢位によって作用する筋肉が変化するため、我々理学療法士は、姿勢を変化させながらの片脚立位にて筋力低下を起こしている筋肉を見つけ、選択的に筋力トレーニングを行うといった運動療法を行っています。 リハビリテーション科 小野正博 |
スギやヒノキの花粉が飛び始め、花粉症の患者さんにとって憂鬱な時期になって来ました。花粉症は植物の花粉が引き起こすアレルギーの一種です。近年、花粉症対策のスイッチOTC薬が増えているのは医療用医薬品の抗アレルギー薬の成分転用承認が相次いでいるからです。スイッチOTC薬とは医師の処方箋が必要な医療用医薬品に含まれる成分を、転用(スイッチ)した一般用医薬品です。OTCは「Over The Counter」の略語で薬局のカウンター越しで買えるとの意味があります。 スイッチOTC薬は ①安全:ある程度、安全が確立されていて副作用が少ない。②便利:医師の診察を受ける時間がない人にとって夜間、営業の街中のドラックストアなどで購入できるスイッチOTC薬は便利である。③効果が明確:医薬用の成分配合で検査はしなくても自分の感覚で効果がわかる。例えば咳・鼻水・痛みが止まるなど効果が明確である。 花粉症市販薬の市場規模はこの数年、内販薬、点鼻薬、目薬の3種類で150〜230億円で毎年の花粉症の飛散数によって大きく増減するとの事です。今春のスギやヒノキなどの花粉症飛散量は、全国平均で昨年の4倍を超える見込みです。近畿から九州の西日本で大幅増が予想されています。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
「肩関節周囲炎」とは、中年以降(特に50歳代に多い)に発生する肩関節の痛みと運動制限を伴う病気の総称であると定義されています。骨には異常を認めず、骨以外の軟部組織における炎症・拘縮が主な病態です。 当院でもこの肩関節周囲炎の患者さんは多く、運動療法を受けておられる方もたくさんいます。その中で「四十肩とか五十肩じゃないの?」と質問されることがあります。 「四十肩」、「五十肩」は肩関節周囲炎の状態を示す上でよく使用されている言葉ですが、それらは病名ではなく俗名であり、40歳代に発症したから四十肩、50歳代に発症したから五十肩というわけではありません。今よりも平均寿命が短かった時代、50歳代になると肩が痛くなる、動きにくくなることが多かったために「五十肩」という言葉が生まれたという説もあります。どちらにしてもこの「肩関節周囲炎」という状態を説明する際、しっかり伝わるよう、わかりやすく説明するように努めたいと思います。 リハビリテーション科 小野正博 |
厚生労働省は2020年東京五輪・パラリンピックに向け喫煙範囲を狭める「受動喫煙防止対策案」について罰則付きの法制化を目指しています。 厚生労働省は各関係団体から聴取を行なったところ反対意見が相次ぎ強い批判が起こりました。厚生労働省がまとめた受動喫煙防止策の案では①医療機関、小学・中学・高校は敷地内禁煙 ②官公庁・社会福祉施設・運動施設(スタジアムなど)・大学は建物内禁煙 ③飲食店・ホテル・旅館などのサービス業施設、事務所(職場)・オフィス・ビルなどの共用部分、駅・空港ビル・船着き場・バスターミナルは原則的に建物内禁煙(喫煙室設置可)④バス・タクシーは全面禁煙 ⑤鉄道・船舶は原則禁煙(喫煙設置可)以上の案をまとめました。 しかし、各団体から様々な反対意見が出ており、足並みは揃っていない、例えばバー・スナックが加盟する全国飲酒業生活衛生同業組合では小規模な施設では喫煙所を設置できないとする意見が出ています。日本旅行協会も宴会場については規制対象からの除外を希望しパチンコ業界団体はパチンコ参加人口1070万人のうち推定される喫煙者は43%と高く完全分煙を実施すると客離れが進むと危機感を持っています。医療界でも日本ホスピス緩和ケア協会から生命予後の短いがん患者が多数入院する病棟では、患者の喫煙習慣に配慮して喫煙を許可している事情があるため、意見がまとまっていません。また、「電気加熱式たばこ」についても罰則対象に含めることも検討しています。 喫煙に対する諸外国の常識と日本国内の常識が乖離しており、スモークフリー社会に向け、厚生労働省が中心になって法制化に向け推し進めたいとしているが難航も予想されます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |