リハビリ通信 No.241 歩行介助と支持基底面について

2017年09月17日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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歩行が不安定な場合、安定して歩くために杖や歩行器といった器具の使用、歩行介助などが行われますが、これらは「支持基底面」を増大させることにより安定させています。この支持基底面とは、体重や重力 により圧を感じることができる支持面と、その支持面の間にできる面のことを言います。この支持基底面から重心が外れると不安定となり、転倒する危険性が生じます。そのため、この支持基底面を広げること(図1)が歩行時の安定性につながります。そして(図2)にあるように、杖をつくことで支持基底面はさらに広がり、安定します。

このように「支持基底面を広げる」ということは、歩行時の安定性につながるので、歩行介助をする際も同様に考えれば不安定性を解消できるのではないか思います。例えば、下の図のように腋窩(腋の下)に手を入れて介助する場合、介助者は反対側の手を把持して支えてあげれば杖をついている状況が再現でき、支持基底面を広げることとなるために安定します。

歩行介助のやり方は様々なものがあると思いますが、どんな方法であっても「支持基底面を広げる」ということが重要であると思います。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.240 血液1滴で早期がん発見検査について

2017年09月01日(金) QAリハビリテーション科1新着情報

リハビリ通信No.240

国立がん研究センターは血液1滴で乳がんなど13種類のがんを早期発見する新しい検査法を開発し臨床研究を始めました。細胞から血液中に分泌される微小物質「マイクロRNA」を利用して乳がん・肺がん・胃がん・大腸がん・食道がん・肝臓がん・膵臓がんなど各々、固有の「マイクロRNA」を特定し、血液1滴でステージ1を含め95%以上の確率で診断でき、乳がんは97%の確率で診断が可能になりました。

利点: ①多数のがん検査を受けなくても良い

②早期発見が可能である(今までのがん血液検査では、がんが大きくなるまで腫瘍マーカーが検出できなかった)

③一度に複数の種類のがんを診断可能である

欠点: ①診断の確定に精密検査が必要である(まだ確立されておらず将来的には、がんのステージや特徴も分かるようになると考えられている)

欧米でも「マイクロRNA」を使った病気の早期発見を目指す研究が盛んですが、日本では多数の患者さんで解析をしており今後の研究に有用性・実効性があると考えられています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.239 関連痛について

2017年08月13日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

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関連痛とは、患部ではないところに生じる痛みのことであり、日常診療の中では、肩関節周囲炎における運動時痛や夜間痛などがこれにあたるのではないかと考えています。肩関節周囲炎では、患部は肩関節であるにも関わらず、上腕の近位外側部や肘関節の外側部などで痛みが生じます。そのため、「肩だけじゃなく、他の所も痛くなってきた。」という訴えをよく耳にします。そのため、痛みが生じる部位(ここでは上腕近位外側部や肘関節外側部など)を圧迫してみて、「圧痛」があるかどうかを確認することが重要になります。もしそこで圧痛があるのであれば、圧迫した部位に何か悪いものがあるのではないかと言えるのですが、ほとんどの場合、痛みが生じている部位での圧痛は認めません。そのため、疼痛を引き起こしている組織は痛みが生じている組織とは別であるということがわかります。

当院の理学療法では、このような確認作業(評価)を行い、原因組織が何であるのかを鑑別しながら運動療法を行っています。

リハビリテーション科 小野正博

 


リハビリ通信 No.238 エアコンをつけて寝ると朝だるいのはなぜか?について

2017年08月07日(月) QAリハビリテーション科1新着情報

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人間は深部熱が体の表面、皮膚に放散され深部体温が下がった時にスムーズに入眠できます。睡眠中は深部の体温が放熱し体温が冷えやすくなります。睡眠中に汗をかけば汗の蒸発により更に体温が奪われます。体温が下がりすぎる事も、だるさ要因と考えられます。夜明け頃、深部体温は最も低下していますが、表面の皮膚の体表温度は深部からの熱の発散で上昇しています。朝の覚醒は深部温度と体表温度の差が小さい程スッキリと起きる事ができます。つまり暑いと深部体温が下がりにくく寝付きにくい、しかし、寒いと皮膚温が冷えすぎだるくなります。この2つの特性を上手にバランス良く組み合わせる事が重要だと考えられます。

対策として寝付き時は睡眠サイクルを考え、3時間程、冷房時間が必要です。もし一晩中、冷房を続けるならば高めの温度で26〜28℃、または夜中の3〜4時頃にタイマーを設定します。また、送風の強さを下げ、氷枕を使用する(頸動脈が冷やされ放熱を促進し深部体温が下がる)、吸湿性優れた長袖・長ズボンの寝間着を使用などの工夫をします。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.237 腰痛と股関節の可動性について

2017年07月13日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

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腰痛に苦しめられている方は非常に多く、当院でも多くの腰痛患者さんが来院されます。腰痛の原因疾患には筋・筋膜性腰痛や腰椎椎間板ヘルニア、腰椎終板障害、椎間関節性腰痛、腰椎分離症および辷症など、様々なものがありますが、これらのほとんどに「股関節における可動域制限」を認めます。

股関節は腰椎の土台であり、両者は互いに協調し合って様々な運動を遂行しますが、土台である股関節が拘縮(固まってしまう状態)してしまうと、股関節での可動性が低下した分だけ腰椎で代償しなければならない状況となります。その結果、腰椎への過負荷が蓄積し、腰痛が生じてしまいます。

当院の理学療法士は腰痛を有する方に対し、腰椎へのアプローチに加え、股関節の可動域制限を改善する操作も行い、腰椎と股関節の協調した運動を獲得することを目標に運動療法を実施しています。

リハビリテーション科 小野正博