(日本リハビテーション医学会評価基準委員会より) 前額水平軸における矢状面上の運動で、前方への動きを屈曲といい、その反対の後方への動きを伸展といいます。肩峰を通る床への垂直線を基本軸とし、上腕骨を移動軸としてみることで角度を測定し判断します。0°を基準とし、屈曲へ180°、伸展へ50°動く範囲が参考可動域とされています。 肩関節は、鎖骨や肩甲骨、上腕骨、胸椎などたくさんの骨や関節を介することで大きな可動性を可能としています。従って、炎症や痛みなどで動きが制限されたとしても、あたかも動いているように見えて実は各関節が補うように代償し可動性を確保している場合があります。その場合、各関節を固定したり介助したりすることで、どこに制限があるかを探り運動療法へと繋げていきます。 リハビリテーション科 堤 豊 |
筋肉は力を入れ収縮、力を抜いて弛緩させるだけでは筋肉痛にはなりません。痛みを出すには負荷がかかることが必要です。筋肉痛は筋肉が伸張しながら負荷が加わる伸張性運動で起きます。原因は筋線維の損傷よりも結合組織(筋束・筋周膜・筋内膜・筋外膜)の損傷が主な理由だと最近わかってきました。 伸張性運動を繰り返し行うと結合組織に微細な傷がつき、傷ができると修復する為に免疫細胞が集まり、炎症を起こし痛み刺激に対する感受性を高めます。これが遅発性の筋肉痛です。予防には運動直前のストレッチングは効果が無く、1週間〜前日までに筋肉を伸ばした状態で強い負荷を加える等尺性(関節が動かない)の運動を数回行うだけで筋肉痛の予防が出来ると言われています。また、ストレッチングを合わせて行うとより効果が出ると言われています。重要なのは1週間~前日までに行うことです。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
(図1) 骨は緻密骨と海面骨から構成されています。緻密骨は骨の外側部であり、海面骨は骨の内側部を構成します。レントゲン画像では白いコントラストが濃い部分が緻密骨であり、少し白色が薄くなっている部分が海面骨です(図1)。 この「海面骨」には造血作用を持つ骨随があり、骨折することで同部位から出血を引き起こします。この骨折部周辺での出血により周辺軟部組織の癒着が生じたり、血腫により内圧が上昇するために痛みの原因となることがあります。特に軟部組織の癒着は可動域制限の要因となるため、早期より癒着を予防するような運動療法が予後を左右します。 当院では、骨折後の癒着を早期から予防するような理学療法プログラムを立案し、治療にあたっています。 リハビリテーション科 小野正博 |
関節可動域① ~身体運動の面と軸~ 身体内部に想定される重心を通る相互に直行する3つの面を身体の基本面といい、それぞれ基本前額面、基本水平面、基本矢状面といいます。基本面以外では前額面、水平面、矢状面といいます。また、それらへの軸を矢状-水平軸、垂直軸、前額-水平軸といいます。 人の動きにはバリエーションがあり、3次元上で様々な動きが可能となります。しかし、『肩が上がらない』『足が開かない』といった問題が出た時に、どの方向でどれくらい動いていないのか?ということの指標が必要となります。そこで上記のように、面と軸を基本として各関節を評価することで再現性のある正確な可動域測定が可能となり、また医療者間においても共通した情報を得ることができます。 リハビリテーション科 堤 豊 |
(読売新聞 2018.1.10より) 保険診療の治療件数を集積した国のデーターベースの情報が2年前から公開され国内で行われる人工関節の手術件数、患者の性別、年齢層が正確にわかる様になりました。 2015年度に国内で行われた膝の人工関節手術は7万8600件、股関節は5万4500件で国内の人工関節手術は10年前に比べ倍増しています。年齢的に最も多い膝の人工関節は75〜79歳で2万3000人、股関節の人工関節は65〜69歳で9000人、手術を受けた人の8割が女性、破損や緩みなどによる入れ替えの再手術は全体の数%程度です。 今後、超高齢社会を迎え膝、股関節の変形性関節症は増加が予想されます。人工関節が必要になる程、症状が悪化しない様に可能な限り筋肉の柔軟性と筋力を維持するためのストレッチなど運動習慣が重要です。 リハビリテーション室長 見田忠幸
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