理学療法を行う場合、基本的に代償動作を抑制し問題となる筋や関節にアプローチをします。 関節の機能を最大限改善できるよう努めていきますが、患者様によっては関節や筋肉そのものが使いにくい状態となっているため代償動作を用いて目的を達成できるようにしていきます。 QOLの向上とneedとhopeを考慮したアプローチが重要と思われます。 次回は上記内容をいくつかに分けてご説明させていただきます。 リハビリテーション科 堤 豊 |
理学療法士の治療対象となる疾患は多岐にわたります。腰部・足関節・膝関節・股関節・肩関節・肘関節・手関節・手指・頸部などです。各関節共通の構造は骨、滑膜、関節包、靱帯、筋から構成されています。骨・滑膜・関節包・靱帯は関節構成体と言われています。 評価、治療では関節構成体と筋を分けて考えて行きます。評価では関節構成体が原因となる拘縮なのか、痛みなのか、また、筋・筋膜など筋肉による拘縮・痛みなのか、評価して行きます。治療も同じく関節構成体に対するアプローチと筋肉に対するアプローチを分けて治療を進めて行きます。目的のない場当たり的な評価、治療では大きな改善は期待出来ません。多くの理学療法士は日々深く考察しながら日常の臨床に取り組んでいます。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |
母指CM関節周辺の痛みを有する方は非常に多く、このような場合、同部位(CM関節)の変形性関節症を疑います。しかし近年、このCM関節のすぐ横に位置するSTT関節における関節障害との鑑別が非常に重要であるという報告が散見されるようになってきました。 STT関節とは、舟状骨(Scaphoid)、大菱形骨(Trapezium)、小菱形骨(Trapezoid)から構成される関節(下図を参照)であり、母指CM関節のすぐ隣に位置するために疼痛部位もCM関節症の疼痛と非常によく似ています。しかし、このSTT関節は手関節の運動に関与する関節です。一方、母指のCM関節は母指の運動に関与するため、両者の関節障害を鑑別するためには「母指の運動で疼痛が誘発されるのか」、または「手関節の運動によって疼痛が誘発されるのか」を評価すればどちらの問題なのかが判断できます。 当院では、このように責任病巣がどこなのかを的確に評価できることを目指して運動療法を実施しています。 リハビリテーション科 小野正博 |
肩関節の外旋・内旋は上腕骨の動きですが、教科書的には肘を軸とし尺骨を基準に角度を測ります。 参考可動域は外旋60°内旋80°です。 肩関節周囲炎では特に外旋が制限されること多く、健側と比較すると角度の差を認めます。この時は肩甲骨で代償してしまう場合もあるため、両側で行うと分かりやすいと思います。 リハビリテーション科 堤 豊 |
腱板断裂は腱板と言われる肩甲骨と上腕骨をつなぐ4つの筋(棘上筋・棘下筋・肩甲下筋・小円筋)の腱の部分が加齢による変性に伴い摩耗や損傷を受けやすくなり、その部分に負担がかかり、断裂が起きます。また、仕事、日常生活動作による過度な負担、転倒などの外傷によっても断裂、損傷を起こします。断裂と言っても二つに切断される分けではなく、穴が開きめくれ、裂け、剝がれます。特に棘上筋腱の部分で断裂が多いとされています。症状は痛くて自力で腕が挙がらない、力が入らない、夜、痛みで目が覚める。腕を降ろす時に痛みが起こる。ボールなど上手に投げることが出来ないなどの症状が出現します。 完全に断裂をし断裂部分が大きい場合、手術治療の適応になります。断裂部分が小さい不全断裂の場合、理学療法の適応になります。治療では炎症・損傷により、癒着が進んだ場合には癒着剥離などの治療を行い肩甲骨周囲の筋緊張をリラクセーションして、断裂した部分を補う様にその他の腱板筋で代償をさせるトレーニングを行います。 リハビリテーション室長 見田忠幸 |