リハビリ通信 No.291 腱板断裂の理学療法について

2019年03月24日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

腱板断裂が起きた場合、保存療法を行うか、腱板縫合術などの手術を行うかのどちらかを選択する事になります。手術をする場合、断裂部位の範囲、大きさなどを考慮して行います。手術を行う際も関節鏡(穴を数カ所開ける)か直接、皮膚を切開し術部を拡げて行う方法があります。術後の理学療法は可動域を改善し筋力が発揮できる様にし、その経過後、日常生活上では問題のない肩関節機能の獲得を目標とします。

術後から縫合した部分に負担がかからない様に関節を動かして行きます。許可が出るまで腱板筋群は自動運動をせず注意をしながら治療を進めます。自動運動の許可が出た後は積極的に可動域と筋力の改善を進めて行きます。腱板筋群の働きと肩甲骨周囲筋の働き、アウター外側の大きな筋の働き、これらが複合的に働く事により肩関節が動き上肢は挙上します。拘縮を可能な限り作らない様にし、一刻も早く筋力トレーニングを行い日常生活へ復帰する事が理学療法の一連の流れです。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.290 拘縮による痛みについて

2019年03月19日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

拘縮とは、筋や靱帯、関節包といった軟部組織が「固まった状態」のことをいいます。これらの軟部組織の柔軟性が低下すると関節可動域が制限されたり、関節が不正な運動を行うために痛みが生じたりするため、日常生活動作に支障をきたすことがあります。

この拘縮により関節運動が制限された患者さんのほとんどは痛みを訴えて来院され、当院では理学療法による拘縮除去を実施したり、日常生活動作の中でできるだけ痛みが生じないような生活指導、自宅でできる自主トレーニング等の指導も実施しています。

拘縮により生じた関節可動域制限を改善していくためには、柔軟性の低下した組織に対して筋収縮を促したり、伸張操作を加えてみたりして拘縮除去に努めていくのですが、無理な動きが入ったり、可動域の範疇を超えるような運動が生じると強い痛みが生じます。場合によっては患部での炎症が生じることもあり、更に拘縮を進めてしまうこととなります。そのため、「適度な負荷を適切な回数加える」ことが重要であり、非常に難しい部分ではありますが、当院の理学療法士はそのような考えのもと、理学療法を実施しています。

リハビリテーション科 小野正博


リハビリ通信 No.289 代償動作(トレンデレンブルグ徴候とデュシェンヌ跛行)

2019年03月14日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

代償動作とは本来使うべき機能以外の部分を使って動作を行う事をいいます。

その中で股関節に起こる特徴的な現象をご紹介します。

股関節の外転筋力が低下した際、支持した反対側の骨盤が沈下する現象をトレンデレンブルグ徴候といいます。また、支持した側に体幹部が側屈する現象をデュシェンヌ跛行といいます。

どちらも片脚立位や歩行時においてバランスをとるための代償といえますが、筋力や柔軟性、関節の可動性によって様々なパターンがあるといえます。

リハビリテーション科 堤 豊


リハビリ通信 No.288 小中学生のスポーツ障害について

2019年03月07日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

小中学生のスポーツ障害で多い疾患は付着部炎、骨折、軟骨剥離、軟骨損傷、離断性骨軟骨炎などが見られます。スポーツを行っている小中学生が、なぜこの様な病態に到るのかは成長期で急激に体が成長するからです。成長期に入り、骨が伸びて行きますが骨の成長速度と骨周囲の軟部組織の成長速度が違うからです。軟部組織(筋・腱・靱帯・筋膜)に比べ骨の成長速度の方が早く、常に軟部組織は引っ張られた状態で負荷が加わり、張力が直接、骨に付着している部分にかかり、大きな負担となり炎症を起こします。

また骨折、軟骨損傷、離断性骨軟骨炎に到るには、骨が小中学生では、まだ完成されておらず、骨端線が埋まっていない未完成な状態です。スポーツでの繰り返しの運動により筋が引っ張り強度を増し、負荷が骨端線部分に加わることにより骨の離開ストレスが進み軟骨損傷へと至ります。理学療法では病態を理解し損傷部位に負荷をかけないように治療を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.287 痛みの評価について

2019年02月21日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

整形外科を受診される患者さんは、「痛み」で苦しんでおられる方がほとんどであり、「痛みを何とかしたい、痛みを取りたい。」という思いで受診されます。そのため、理学療法を実施する際、「痛みの評価」が非常に重要となってきます。

まず、痛みを2つに分けて考えます。

1つは「指1本で示すことのできる痛み」であり、これをone point indicationと言います。このような限局した痛みがある場合、患者さんが「ここが痛いです。」と指1本で示してくれるので、主たる病態がその痛みの位置にあると判断します。

そしてもう1つは「手のひらサイズの痛み」であり、これをpalmar indicationと言います。患者さんに「どこが痛いですか?」と問いかけると、「この辺りが痛い。」と、少し広い範囲で痛みを訴えることがあります。そういった場合、主たる病態は痛みが出現している部位ではなく、他部位で認めることが多いです。

理学療法士はこのようにして「痛みの評価」を行うことで病態の推察をし、運動療法を実施しています。

リハビリテーション科 小野正博