リハビリ通信 No.356 股関節の靱帯について

2023年06月11日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

股関節には3つの大きな靱帯があります。恥骨大腿靱帯、腸骨大腿靭帯、坐骨大腿靱帯です。この3つの靱帯は関節包靱帯と言って関節包の線維膜部分の軟部組織が肥厚した靱帯です。靱帯は伸張・剪断力等、メカニカルストレス時に形態が変化せず、靱帯実質の緊張による静的安定化作用により関節を安定させます。逆に筋はメカニカルストレス時に伸張・収縮で筋の形態を変化させ筋出力・協調性の働きによる動的安定化作用が関節を安定させます。

股関節に於いては関節包靱帯が多く厚い部分では筋の走行が少なく、関節包靱帯が少なく薄い所では筋の走行が多く、お互いに補完するように構成されています。股関節は強い安定性が求められ静的安定化作用と動的安定化作用が協調しあい股関節の安定化に寄与しています。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.355 膝関節内側構成体の機能について

2023年04月02日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

膝関節は自由に動かせる事と支える事の両方の機能が必要とされます。とくに膝関節の内側構成体の機能は重要です。Warrenと Marshallは、膝関節内側部は解剖学的に見ると3層で構成され、各々の軟部組織は各層を縦断し影響していると述べています。

理学療法では膝関節の機能を診て行く上で疼痛、違和感が出現した場合、疼痛出現箇所が要因ではなく、他に要因があり二次的に疼痛が出現している可能性を考えます。更に疼痛・違和感を評価して行く上で触診し、場所、疼痛の種類、圧痛所見、安静時痛・運動時痛か伸張時痛、荷重時痛か疼痛出現肢位、逆に疼痛が消失する肢位を確認、評価します。

膝関節内側軟部組織の治療対象は概ね腓腹筋内側頭、半膜様筋腱付着部、内側半月板、浅層・深層内側側副靱帯、内側側副靱帯POL、内側広筋、内側膝蓋支帯、関節包、脂肪体となります。理学療法の治療では可動域改善、筋力向上、疼痛改善を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.354 頚椎と姿勢について

2023年02月09日(木) QAリハビリテーション科1新着情報

頸椎は7つの椎骨があり、第1頸椎は環椎、第2頸椎は軸椎と呼ばれ形態が他の頸椎の椎骨とは違います。第1、2頸椎は頭部を支え、あらゆる方向に動かすために特殊化され球関節と類似しています。

背中が丸くなった姿勢(胸椎が後彎)をすると頭部は前方に突出し平衡を保とうと下位頸椎は屈曲し上位頸椎は過伸展します。頭頚部(後頭下筋群・僧帽筋上部線維・肩甲挙筋)肩甲帯(胸鎖乳突筋・大胸筋・小胸筋・菱形筋・前鋸筋上部線維)は過緊張し、頭頚部の(頭長筋・頸長筋・前頭直筋・外側頭直筋)肩甲帯(僧帽筋中・下部線維、前鋸筋中・下部線維)は弱化します。

理学療法では胸椎の柔軟性を含めた頸椎軟部組織の改善、治療を行います。また、self exも合わせて実施し、脊柱(頸椎・胸椎)の姿勢を良肢位になるように理学療法を進めます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.353 アキレス腱炎について

2022年12月06日(火) QAリハビリテーション科1新着情報

アキレス腱炎はアキレス腱実質部、アキレス腱付着部周囲2~6cmでの障害、炎症です。アキレス腱付着部2~6㎝近位は血流の少ない部位があり、アキレス腱実質部は腱鞘に包まれておらずパラテノンという膜に覆われています。アキレス腱自体はストレスを受けやすく付着部にかかる牽引ストレスはとても大きいのですが、解剖学構造(enthesis organ wrap around 構造、滑液包、Kager’s fat pad脂肪体、アキレス腱付着部での捻じれ構造)で強い牽引ストレス、つまり力学的ストレスの分散作用と栄養血管を供給する作用があります。しかし、アキレス腱炎・障害の患者さんは何らかの要因によりアキレス腱に負担がかかり炎症を惹起していると考えられ、理学療法ではアキレス腱周囲部、股・膝・足関節全体を評価し筋の柔軟性低下によるものなのか、その他軟部組織(脂肪体、靱帯)の癒着・拘縮、滑液包の炎症、距骨下関節の拘縮などを考えます。同時に足底板・インソールの処方も考えて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸


リハビリ通信 No.352 小児の肘骨折について

2022年10月30日(日) QAリハビリテーション科1新着情報

小児肘関節周辺骨折は小児の全骨折の5~10%を占めています。肘周辺骨折の中でも多い順から①上腕骨顆上骨折(50~70%:4~7歳に好発)、②外側顆骨折(10~20%:4~10歳に好発)、③内側上顆骨折(8~10%:7~15歳に好発)です。小児の肘関節は軟骨成分が多く主体になっています。受傷時の負荷は脆弱な部分に伝わり骨折に至ります。また、軟骨成分のため、成長過程において骨端核が出現し、位置・形態などの理解が必要です。

理学療法では小児の骨折に対する知識・理解が必要であり、理学療法の対象が小児であるため治療時にとくに疼痛を出さない様に理学療法を進める工夫が重要です。疼痛を出現させた場合、理学療法を拒否される可能性がある事と精神的に未熟な小児では治療での疼痛が情緒不安にさせてしまうため注意深く肘の関節機能解剖(軟部組織の癒着剥離操作、肘関節周囲筋の収縮)を踏まえて理学療法を進めて行きます。

リハビリテーション室長 見田忠幸