名張市のケーブルテレビ、アドバンスコープが「nava」という広報誌を月に2回発行しています。 nava11月23日号の「健康と生活」のコーナーで「膝関節の痛みについて」が掲載されました。 これは11月のケーブルテレビ放映での企画番組で私が担当させていただいた内容を、うまく図解付きでまとめてくれているものです。 皆様、是非参考にご覧下さいませ。 |
先日、みえ脊椎を語る会が開催され、講演会に出席しました。 私は脊椎を専門とする研究会に出席したことが今回初めてでしたので、興味深く聴かせて頂きました。 特別講演1は「高齢者の脊椎疾患に対する我々の治療戦略 -腰部脊柱管狭窄症から矢状面バランス異常まで-」で講師は岐阜大学大学院医学系研究科脊椎骨関節再建外科学准教授の宮本敬先生でした。 腰椎は前弯といって前方に凸のカーブで並んでいますが、カーブが少なくなったり後方に凸になると腰椎後弯といいます。加齢とともに腰椎後弯が進行した姿勢異常を腰椎変性後弯症といいます。所謂、腰の曲がった高齢者の方の状態ですね。腰椎の矢状面アライメント(前後方向の骨の並び)不良は、QOL(Quality of life、生活の質)に悪影響を与えます。同じく腰椎の異常で間欠性跛行などを来す疾患に腰部脊柱管狭窄症があります。宮本敬先生によりますと、腰椎変性後弯症と腰部脊柱管狭窄症とは共に歩行困難を来すことなどから臨床的に混同されることがあるようです。腰椎変性後弯症に対する手術治療はQOLの改善を見込めますが、再手術を要することがあるという問題点もあるようです。 腰椎変性後弯症は高齢女性に多いですが、台所仕事の時に肘で身体を支えて仕事をされることが多いようです。その場合に肘や前腕伸側に皮膚色素沈着、鱗屑、皮膚肥厚、胼胝形成などの皮膚異常を認めることが多く、これを宮本敬先生はKitchen-Elbow Signとして腰椎変性後弯症患者に特徴的として強調しておられました。成る程、これはわかりやすいですね! また宮本敬先生は腰に優しい椅子を考案し、業者が受注販売しているようです。これは外来診察での長時間の待ち時間に、患者様が腰痛を悪化させないようにという配慮から考案されたそうです。宮本敬先生のアイディアと心配りに感心致しました。 |
先日、奈良県医師会スポーツ医学部会講演会があり、出席しました。講師は順天堂大学整形外科・スポーツ診療科先任准教授池田浩先生で講演は「サッカーにおける下肢の外傷・障害~日本代表チームでのメディカルサポートも含めて~」でした。池田浩先生はサッカー日本代表チームドクター、J1サッカージェフユナイテッド市原・千葉チームドクターを兼任され、豊富なスポーツドクターとしての経験を披露して下さいました。 池田浩先生によりますと、スポーツドクターの役割は手術治療よりも予防医学の方が重要で、綿密な疫学調査によりスポーツ外傷・障害の予防に努めることが肝要であるということです。 サッカーJリーグにおきまして、1試合平均0.65件の外傷が発生しているそうです。そのうち下肢の外傷が60~70%を占めるそうですが、意外と頭頚部外傷も多く20%くらいを占めるそうです。下肢の外傷では肉離れ(筋損傷)と靱帯損傷が多いそうです。肉離れ(筋損傷)はハムストリングス、大腿四頭筋、下腿三頭筋、内転筋に多く、靱帯損傷は足関節外側側副靱帯損傷、膝内側側副靱帯損傷、膝前十字靱帯損傷などが多いようです。 膝前十字靱帯損傷は先日の日体協スポーツドクター研修会の講習でも紹介されたバスケットボール選手においてもそうであったように、サッカーでも女子選手が男子選手の8倍多いそうです。しかしながら男子選手でも前十字靱帯損傷の起こる頻度は高くなくても手術治療に至る場合は多いようです。前十字靱帯損傷に対する保存治療(手術をしない治療)の成績は不十分な場合が多く、膝くずれ(歩行時などに膝がガクッとはずれるように力が抜けてしまうこと)が起こりやすく、二次的に半月板損傷や軟骨損傷を起こしてしまうことが多いようです。前十字靱帯損傷に対する手術治療(靭帯再建術)の成績は良好で、トップアスリートであっても80%以上は復帰可能なようです。しかしながら前十字靱帯再建術後に復帰まで早くて6~8ヶ月間要することが問題です。再建術では池田浩先生は損傷した前十字靱帯を温存した再建術を施行し、更に良好な結果を得ているようです。また国際サッカー連盟(FIFA)が作成し展開している前十字靱帯損傷の予防にも役立つThe 11+という外傷・障害予防トレーニングを紹介して頂きました。。 肉離れ(筋損傷)は従来MRI像における出血量の多さによって重症度を区分していましたが、出血を起こしている解剖学的部位による重症度分類に変わってきているようです。血行の良くない腱周囲損傷では、出血量の多さに関わらず復帰までの期間が長くなるようです。 サッカーにおいて特徴的に多い疲労骨折は第5中足骨疲労骨折で、人工芝のグラウンドでは発生率が高いようです。保存治療では再発率が高いために手術治療を要することが多いようです。手術治療の成績は良く保存治療よりも復帰までの期間が短縮されるようですが、それでも復帰が早すぎると再骨折の危険性があるようです。 Jリーグチームのチームドクターとして年中昼夜を問わずチームをサポートし、なおかつ日本代表チーム帯同チームドクターとして年間60日くらいは選手、スタッフとともに遠征などホテル生活になるそうで、家を空けることが多く家族の方の理解と支え(忍耐も?)も必須なようです。また外国チームに所属する選手の健康状態、怪我の状態などを外国のドクターとやりとりをしたり、海外遠征に向けて全ての選手に多くの感染症の予防接種をしたりと、色々なご苦労を紹介して頂きました。 池田浩先生はスポーツドクター、チームドクターとして現場に求められているものは優れた技術以上に現場のニーズに応じた対応であると述べておられました。現場で奮闘しておられる先生ならではの言葉かと思われました。 |
昨日、天理親里球技場で第93回全国高等学校ラグビーフットボール大会奈良県大会準決勝が行われ、グラウンドドクターとして参加致しました。 昨日の2試合では、特に目立った外傷もありませんでした。将来性豊かな選手たちが大きな怪我に見舞われることがなく、安堵致しました。 勝ち上がったのは天理高等学校と御所実業高校です。両チームともに実力はかなり高く、どちらが勝っても全国大会でも活躍できると思われます。 来週の決勝戦は激戦必至ですね!とても楽しみです。 |
先日、日本体育協会公認スポーツドクター研修会が和歌山市で開催され出席しました。 今回のテーマは「ドーピング防止活動の最近の動向」、「日本におけるスポーツ外傷サーベイランスシステムの構築」、「スポーツ選手の脊椎障害と内視鏡手術」、「スポーツに関連した突然死とその予防」でした。 2020年東京オリンピック招致成功を受けて、日本のスポーツ界では様々な動きがあるようです。2020年に向けて、どんどん盛り上がっていくといいですね。 ドーピングに関してはまさにスポーツ界の負の側面でしょう。ドーピングはスポーツの価値を否定し、フェアプレイの精神に反し、競技者の健康を害し、反社会的行為であるなどということから厳格に禁じられています。ドーピング違反に対する制裁措置が現在2年間資格停止ですが、今後4年間に延長される可能性があるということです。今までは尿検査だけでしたが、これからは血液検査も施行されるようです。また今回の東京オリンピック招致成功には、ライバル国に比べてドーピングに関して日本がクリーンであるという評価が高かったという側面もあるようです。 スポーツ外傷サーベイランスでは、部活動中のスポーツ外傷の発生率は約10%で、1年間に10人に1人が受傷する割合だそうです。 中高生の部活動中の重症頭頸部外傷は種目ではラグビー、柔道、体操などの競技に多く、特に高校生ラガー、中2、高1の柔道選手に発生率が高いようです。 中高生の部活動中の膝前十字靱帯損傷は、女子が男子の3倍の発生率で起こるようです。種目別では男子では高校生ラガー、高校生柔道選手、女子では高校バスケットボール選手に多く発生し、特に高校女子バスケットボール選手では1年間で100人に1人の部員が膝前十字靱帯損傷を受傷しているそうです。中高生の部活動中の膝前十字靱帯損傷は増加してきており、年間3000件も起こってきているそうです。これには何らかの対策が必要ですね。 中高生の部活動中の足関節捻挫は、女子が男子の2倍の発生率で起こるようです。種目別ではバスケットボール、バレーボール、サッカー、ラグビーなどに多く発生する様です。男子では中2、高2のバスケットボール、バレーボール選手、女子では中学バスケットボール選手に多いようで、1年間に20人に1人の部員が足関節捻挫を受傷する様です。これにも何らかの対策が必要と思われます。 日本におけるスポーツ外傷サーベイランスシステムの構築として、全国的なスポーツ外傷統計は児童、生徒以外は十分とは言えず、特に大学生、社会人での取り組みが必要であるとのことです。スポーツ外傷・障害の予防プログラムの開発や検証については、各競技で進めていき、長期的に継続してみていく必要があるということでした。 スポーツ選手の腰椎椎間板ヘルニアに対しては、内視鏡手術と術後のアスレチックリハビリテーションを施行することにより、94%が2ヶ月以内にスポーツ復帰が可能であったそうです。 スポーツ中の突然死の頻度は20万人に1人の割合で、一見健康な若い運動選手が運動中に心室頻拍または心室細動を突然発症し、急死してしまいます。男性は9倍多く罹患し、アメリカではバスケットボール選手、フットボール選手、ヨーロッパではサッカー選手、日本では剣道選手のリスクが高いそうです。 肋骨、胸骨、心臓自体の構造的異常がなくても、前胸部の打撲で心室細動が誘発されて起こる心臓振盪は、野球、ホッケー、ラクロス、空手などの打撃系のスポーツでよく起こります。2007年に岸和田市で高校野球の試合中に胸部に打球を受けた選手がその場で倒れ、心肺停止状態になった事例がありました。観戦していた同市消防本部の救急救命士がAEDを使うなどしたため、一命を取り留めたそうです。 心臓突然死を防ぐためには心電図なども含めた健診を受けることとともに、失神の既往などの問診、家族内(3親等以内)突然死の既往などの家族歴が重要です。 研修の時に日本体育協会の方に配って戴いたのですが、日本体育協会では「フェアプレイで日本を元気に」キャンペーンを行っているそうです。日本体育協会の考えるフェアプレイには行動としてのフェアプレイとフェアプレイ精神(フェアな心、魂)の2つの意味があるそうです。具体的な行動としては「あくしゅ、あいさつ、ありがとう」の実践を掲げています。2020年東京オリンピックに向けて、フェアプレイの精神と気運が日本で拡がっていくといいですね! |