映画「神様のカルテ2」を観ました。 24時間365日という看板を掲げる地方の基幹病院で、ほとんど休みも取らずに救急医療に携わる若手医師の一止が主人公です。物語は医療の場で奮闘する一止、辰也、貫田の3人の医師とその家族との絆や苦悩が描かれており、仕事、家族、人間らしく生きることなどの意義を問いかけてきます。日本の勤務医には当直明けというものは基本的に存在しないということも、まだまだ一般には認知されていないでしょう。救急医療に携わったことのある者には身につまされることも多いかと思います。緩やかなストーリーの流れと信州の素晴らしい風景が相まって、観ていて微笑ましく感じる場面の多い映画でした。 あんなに悪役の事務長は滅多にいないと思いますが、一止が「医師の話ではない。人間の話をしているのだ!」と叫んだところは作者の思いが最も込められているように思いました。登場人物は三人の医師をはじめ、事務長を除いて本当にいい人ばかりです。その点もこの映画を安心して観られるところでしょうか。 貫田医師が自分の最後を悟り、「人生に後悔はないよ。」と言ったことが、貫田医師の人生を総括しているように思えました。そのように総括できる人生は価値が高いと思います。また貫田医師夫婦に対する皆のチームワークの結晶は感動的でした。観ていて胸が熱くなる思いでした。 本編では貫田医師の申し送りのためのカルテが神様のカルテと表現されていましたが、実際は作者の夏川草介氏は「医者にできることは限られており、助かる人は助かるが、介入しても助からない人は助からない。夜中に患者さんが亡くなって死亡診断書を書いていると、人それぞれが“神様がつくったカルテ”を持っていて、僕ら医者はその道をただ追いかけるだけ。少しだけ側にいて患者さんを励ましたり寄り添ったり、それが数少ないできることではないか、そういう感覚がどんどん芽生え、その思いを“神様のカルテ”というタイトルにしました。」と述べておられます。 ところで今日、入場前に配られたチラシでは夫婦50割引のサービスなどが3月31日までとのこと。なんと明日までです。新サービスは「毎日55歳以上1100円」などです。確かに夫婦で来れば二人とも1000円では随分お得だなとは思っていましたが、いきなり一人1800円に戻るとなると高い感じがしますね~。まあ、仕方ないですね。あと4年すれば、また1000円です! |
3月7日、8日に奈良市で第12回日本フットケア学会が開催されました。学会の会長を奈良医大整形外科教授田中康仁先生が務められ、副会長は奈良医大看護学科成人看護学教授石澤美保子先生でした。私は日本足の外科学会には以前から参加しておりましたが、日本フットケア学会に関しては恥ずかしながらあまり認識がありませんでした。本学会は医師、看護師をはじめ様々な職種のコメディカルが参加する活発な学会で、田中教授ももっと整形外科医が関わり注目すべき学会であると指摘しておられました。 私は3月8日の午後のみ参加の予定でしたが午前診が長引いてしまい、ようやく午後2時過ぎにクリニックを出発し、会場に到着すれば閉会まであと2時間あまりという有様でした。なんとか最後のシンポジウム9、フットケアに役立つ糖尿病基礎知識だけは聴くことができました。 天理よろづ相談所病院内分泌内科林野泰明先生は「合併症を克服する!糖尿病合併症とその管理」という演題で糖尿病合併症予防の重要性について紹介して下さいました。日本糖尿病学会は糖尿病患者さんの血糖管理目標値を「HbA1c7%」未満とした「熊本宣言2013」を発表したそうです。そして「熊本宣言2013」のイメージキャラクター?は「くまモン」だそうです。林野泰明先生は当初「くまモン」が体型がぽっちゃりしているのに糖尿病治療のイメージキャラクター?とは合点がいかないと思ったそうです。しかしながら「くまモン」が実は運動神経抜群であるということを知って、成る程!と思ったそうです。 奈良医大附属病院栄養管理部の山口千影先生は「むずかしくない ムリしない 糖尿病食事療法」を講演され治療者の立場ではつい必要以上に厳しくなってしまいがちなことを指摘し、患者さんの立場を理解し簡単な言葉で説明する重要性などを指摘しておられました。またこちらの先入観を覆す意外な食べ物のカロリーの高さなどを紹介して下さり、興味深く聴かせて頂きました。 大阪労災病院勤労者予防医療センター運動指導部門浅田史成先生は「プロが教える糖尿病運動療法」を講演され、糖尿病運動療法指導方法の工夫点などを紹介して下さいました。 医療法人医誠会医誠会病院看護部畑中あかね先生は「糖尿病と仲良く付き合う日常生活」を講演され、フットケアの目標、アセスメントの視点などを紹介し「今までの患者の糖尿病を持ち生活する体験をまるごと理解する視点」を具体的なケアに活かすことの重要性を講演されました。 もっと時間があれば、興味あるセッション、講演も数多くありました。今度は腰を据えて参加してみたいものだと思いました。 |
先日、伊賀医師会館で三重大学大学院医学系研究科病態解明医学講座麻酔集中治療学教授丸山一男先生の「痛みの考え方」~何を・どのように・効かす?~という講演会があり出席しました。丸山一男先生の講演を聴くのは3回目ですがとてもわかりやすく、丸山一男先生は一段とアクションに磨きをかけておられました。 痛みを伝える神経はおよそ15m/secで電気を伝えるAδ線維とおよそ1m/secで電気を伝えるC線維であり、この時間差が受傷直後の鋭い局所の明瞭な痛みと,次いで1秒くらいしてから鈍い疼くような不快な感じが起こる原因です。Aδ線維を通る刺激は自由神経終末から神経線維を通り脊髄後角を介して瞬時に大脳皮質体性感覚野に到達し、これが痛みの場所の局在を担当します。C線維を通る刺激は約1秒後に体性感覚野に到達すると同時に前帯状回、扁桃体、海馬などの大脳辺縁系にも到達し、これが嫌な感じや不快感を担当します。痛みは不快を伴うわけで、道理で痛みを感じている人は自然と不機嫌で怒りやすくなるわけです。これらの刺激は脳幹に伝わり、そこから疼痛の伝達を抑制する仕組みが働きます。これを下行抑制系といいます。うつ状態では下行抑制系が抑制され、結果として痛みが増悪することが知られています。 痛み刺激の伝導はナトリウムイオンの流入から膜電位上昇、脱分極とつながる電気的な変化であり、治療としては神経での活動電位の発生を抑えることとなります。全ての治療薬は、間接的・直接的に痛みの活動電位を抑制していることになります。 痛みに対して最もよく使用されるNSAIDs(非ステロイド性抗消炎薬)は発痛物質の産生を抑制することで痛みの活動電位を抑制します。局所麻酔薬は神経線維での伝導を抑制することで痛みの活動電位を抑制します。オピオイド、セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬、N型カルシウムチャネル阻害薬などは脊髄後角に作用し痛みの活動電位を抑制します。抗うつ薬、ノイロトロピン、アセトアミノフェン、オピオイドなどは下行抑制系を促進し抑制系を強めることで痛みの活動電位を抑制します。 丸山一男先生によりますと、これらの薬の組み合わせのエビデンスはないものの作用機序の異なる薬剤を併用し治療効果を高める工夫が必要であるということでした。 |
昨日ラグビーの第51回日本選手権決勝が東京・国立競技場で行われ、パナソニックが東芝を30-21で下しました。パナソニックは三洋電機時代以来となる4年ぶり4回目の優勝を果たし、チーム初となるトップリーグとの2冠を達成しました。 今シーズン、東芝はパナソニックに一度も勝つことができず、試合の序盤はパナソニックの方が東芝を圧倒的に押しこんでいました。ところが東芝がシンビンの選手が出て、一人選手の足りない時間帯をなんとか凌ぎますと、今度は東芝にチャンスが訪れました。そして東芝はチャンスをものにして2トライを挙げ、前半をリードして折り返しました。 しかしながらその後パナソニックは実力を発揮し逆転、後半23分に13点差をつけたときにはもう勝負があったかと思われました。その直後のキックオフで東芝は集中して圧力をかけて、リーチ主将のトライに繋げます。ここで6点差まで迫り、一転勝負の行方がわからなくなりました。この局面で勝負を決めたのはパナソニックSH田中選手の相手SHへのタックルだったと思います。これでPGを得たパナソニックは残り6分で9点差と点差を開き、勝負ありとなりました。 パナソニック田中選手は世界最高峰のスーパーラグビー、ニュージーランドのハイランダーズで活躍中です。今日の試合には参加していませんでしたが、パナソニックの堀江選手もスーパーラグビー、オーストラリアのレベルズで活躍しています。また最近は日本代表の立川選手もスーパーラグビー、オーストラリアのブランビーズに所属しています。この様に世界最高峰で活躍する日本人選手や、ニュージーランド、オーストラリア出身の国代表レベルの選手が多く出場する今日の試合はレベルが非常に高くて、見応え十分の好ゲームでした。 ラグビーの進化によりレベル向上が著しく社会人と学生の差は開く一方で、学生では無敵の帝京大学でさえ社会人の壁を破ることは容易ではありません。実際、今年の日本選手権でも学生チームは全て1回戦で社会人チームに敗れました。これは致し方ないことだと思います。しかしながらこのレベルの高い熱い戦いが、かつての日本選手権のように再び多くの人の注目を集め脚光を浴びるようになることを心から願っています。 |
先日、奈良県におきまして第27回奈良県スポーツ医・科学研究会~奈良トレーニングセミナー~が開催され出席しました。本会は公益財団法人奈良県体育協会主催、奈良県医師会スポーツ医学部会共催で行われ、多くのスポーツ指導者、トレーナー、医師が参加しました。 特別講演1は「テニス選手の現状と理想」演者は元日本代表プロテニス選手、中村藍子氏で特別講演2は「スポーツメディカルサポート:大会サポートと障害の予防のためにすべきこと」演者は大阪大学大学院医学系研究科健康スポーツ科学(スポーツ医学)教授中田研先生でした。 中村藍子氏は日本を代表するプロテニス選手として活躍しましたが、カナダでの公式戦試合中に膝前十字靱帯損傷を受傷し、その後にプロツアー復帰を果たしましたが2012年に現役を引退したそうです。今回、トップアスリートとして活躍し怪我から復帰したという経験を語って下さいました。 私はテニスのことはほとんど知りませんでしたが、プロテニスツアーの仕組みはグランドスラムを頂点とする様々なレベルの試合があり、ランキングにより参加する試合のレベルが決まるということでした。ランキングを決めるのはポイントシステムによるのだそうですが、このポイントは1年間有効だそうです。これには負傷離脱期間が大きく関わってきそうですね。ランキングを落とさないために、リハビリの期間が左右されそうです。プロテニスツアーのシーズンは12月末から11月中旬までで、オフシーズンは約1ヶ月半だそうです。これは他のスポーツに比べても非常にオフシーズンが短いと思われます。プロテニス選手は遠征のマネージメント、コーチを雇うこと、様々な環境に慣れることなど、自らやらねばならないことが多く、とても厳しい環境に置かれています。またトーナメントは毎週のように行われ、月曜日に始まり日曜日に終わるそうです。そこで体力的にもメンタル的にも切り替えの早さが求められるようです。 中村藍子選手は2002年から本格的にツアーに出場し、2005年全豪オープンで4大大会デビュー、自己最高ランキングはシングルス世界47位、シングルス日本2位と日本のトッププレーヤーとして活躍されました。ところが2009年8月に膝前十字靱帯断裂を受傷され1ヶ月弱で手術を受け、2010年4月に1度目の復帰、2010年7月に2度目の手術を受け、2010年10月に本格復帰と14ヶ月間かけて復帰したという経験をお持ちです。その時の主治医が本セミナーのもう一人の演者である中田研先生でした。 怪我したときの状況は、アメリカ遠征の最終週で体も心も疲労があったそうですが、朝から体の調子が良く切れもあり、テニスの調子は良かったそうです。そして怪我をしたのは終盤であり、アップ不足が原因ではないということでした。この点は中田研先生が提唱するスポーツ外傷を起こさないようにするための予防という点で参考になることがありそうですね。 中村藍子選手はリハビリする際に地元関西でのリハビリか、施設の整った関東でのリハビリか迷ったことや、復帰に向けた体の問題点として急に膝が腫れることや思うように練習できない、1週間通して良い膝の状態でプレーできないこと、心の問題点として怪我をする前のイメージができないことに対して自分を責めてしまうこと、今まで簡単に出来ていたことが出来なくなり自身がなくなることなど様々な葛藤を紹介して下さいました。そして再手術を経て見事プロツアー復帰を果たした中村藍子選手は立派だと思いますし、その言葉にはとても重みがあります。 中村藍子選手はその後2012年12月に現役を引退されました。引退を決めた理由は体の面では1試合で長ければ3時間以上の試合、通常のツアーは1週間、グランドスラムでは2週間、毎日戦い続ける体が必要で、トップで戦うためのフィジカルが必要であること、メンタルでは体に不安を抱えているとメンタルが不安定になる、怪我をする前のイメージが強く、怪我後の自分との差に苛立ちを消すことができなかったことなどを挙げておられます。中村藍子選手は、「自分が目指すところを考えたとき、自分が怪我前に戦っていた場所、記録を抜くというのが目標である。それを考えたときに今の自分がその場所で戦えるかとイメージするとできなくなっていた。」と述べておられました。 現在テニス女子世界ランキング1位のアメリカのセレーナウィリアムズ選手をはじめ、世界のトッププレーヤーは身長も高く筋骨隆々としておりフィジカルの強さが際立っています。間近で見た中村藍子選手は、ごく普通の体格の優しそうな素敵な女性です。この体格で世界のトッププロ選手と渡り合っていたということに大きな感動を覚えました。 |