名賀医師会から「ダニの感染症に気をつけましょう!」という注意喚起のチラシが送ってきました。 最近報道されているように、ダニを介してSFTSウイルスによる重症熱性血小板減少症候群(SFTS)という感染症が起こり死亡例も報告されています。マダニが媒介するのですが、重症熱性血小板減少症候群だけでなく日本紅斑熱リケッチアによる日本紅斑熱、ツツガムシ病、ライム病などもあります。 ただ、全てのマダニがSFTSウイルスを保有しているわけではなく、人から人へも血液や体液を介さなければ感染しないそうです。 やはりマダニにかまれないように予防が大事ですね。 咬まれてしまった場合は根元からピンセットで挟みゆっくりと抜き取るか、難しければ医療機関受診が良いようです。切開が必要な場合も多いようです。 |
先日名賀医師会館で臨床懇話会が開催され、三重大学大学院医学系研究科検査医学講師土肥薫先生の「意外に多い睡眠時呼吸障害」という講演を聴きました。 睡眠時無呼吸症候群(Sleep Apnea Syndrome : SAS)は最近注目されていますが、私はほとんど知識がありませんでした。睡眠時無呼吸症候群とは睡眠中に10秒間以上の無呼吸が5回以上繰り返される病気で、いびきや昼間の眠気、熟睡感がない、起床時の頭痛などの症状があります。昼間の眠気は居眠り運転事故や労働災害につながるという警告もされています。 土肥薫先生によりますと、慢性心不全における睡眠時無呼吸症候群の合併率は非常に高いそうです。心不全との関連性については、私は全く知りませんでした。睡眠時無呼吸症候群が慢性心不全に合併することにより予後悪化に繋がるそうで、かくれた睡眠時無呼吸症候群を見逃さないことが大事であるということです。慢性心不全にともなう睡眠時無呼吸症候群は、ステージが進むにつれて閉塞性無呼吸から中枢性無呼吸へと病態が変遷するそうです。 睡眠時無呼吸症候群に対する治療は、まずは生活習慣の改善(減量、飲酒の制限、禁煙などです。更には持続陽圧換気療法(CPAP)となりますが、中枢性無呼吸に対する新しい治療機械について紹介して頂きました。 |
先日、伊賀・名張地区 疼痛を考える会が開催され、出席しました。講師は三重大学医学部麻酔集中治療学教授丸山一男先生で、「痛みのルートとバトンタッチ」という講演を聴きました。 2年前にも丸山一男先生の慢性疼痛に関する講演を聴き、身振り手振りの実演付きで大変わかりやすい講義であることが印象的でしたが、今回も難しい内容を明快に解説して頂きました。 痛みとは不愉快な、避けたい、嫌な、知覚的・感情的経験で、自身の経験していることを尋ね、その答えから推測する知覚・認識だそうです。有害刺激に対する反応として、組織障害を伴うか、組織障害の可能性がある場合に発生し、愛や空腹が測れないのと同様に、量的に測ることができないものです。 1本に見える神経には6種類の神経線維が含まれており、そのうちAδ線維とC線維が痛覚に関与しているそうです。この2種類の神経線維において伝導速度が異なります。そこで怪我をするとまずはっきりした鋭い局所の明瞭な痛みを起こし,次いで1秒くらいしてから鈍い,うずくような不快な感じを起こすそうです。またC線維の電気刺激は視床下部をも抑制し、抑うつ状態になるそうです。そういえば、痛みがあるときには誰しも自然と不機嫌になってしまいますね。それは自然な成り行きです。 この様に痛みは電気的変化であり、治療としては神経での活動電位の発生を抑えることで、全ての治療薬は間接的・直接的に痛みの活動電位を抑制することを目的としています。現在、様々な疼痛に対する治療薬が開発されていますが、作用機序の異なる薬剤を併用し、治療効果を高めることが肝要です。しかしながらどの薬剤の組み合わせが最も効果的であるかなどの明確なエビデンスはないので、個々の症例で検討を重ねる必要があるということです。このあたりが難しいところですね。 C線維を活性化する痛み刺激が持続すると、脊髄後角細胞の発火が増強し、これをWind up現象というそうです。これは例えば同じ所を叩き続けると、だんだん痛み閾値が下がってきて痛みの程度が増強し我慢できなくなるという現象です。慢性疼痛の場合はしばしばこのWind up現象が起こっている状態になっているようです。この場合は一旦痛みの悪循環を断ち切ることが有効です。これには局所麻酔剤注射などの治療が有効だそうです。これは整形外科外来治療でトリガーポイント注射(圧痛点注射)や各種の神経ブロックとして行います。よく痛み止めの注射は一時的な効果でしょう、と患者様から質問されます。確かに局所麻酔剤の作用時間は数時間ですから注射をしてもすぐに効果が消失してもおかしくはないのですが、実際には個人差はありますが数日あるいはもっと効果の持続する方も多いです。痛みの悪循環を断ち切る方法のひとつとして、トリガーポイント注射などもうまく利用すると有効であると思われます。丸山一男先生は積極的なトリガーポイント注射の活用を勧めておられました。 |
「アイアンマン3」を観ました。 どうしてこの選択になったのかと、ストーリーは?ということは置いておいて…。 いかにもアメリカ映画らしい映画ですね。といっても前作も観たことはないのですが。 ヒーローがわりと普通の感じのおっちゃんという感じで、殻に閉じこもるタイプで不安神経症、パニック障害に悩まされているというところも更に親しみを感じました。そういえばスーパーマンやスパイダーマンもヒーローはこんな感じですね。変身前はあまり冴えないところが…。 わかりやすい展開と、アクションと笑い、そして悪役のちょっと笑える動機などなかなか楽しめました。 エンドロールになってもあまり席を立つ人がいないな、と思っていると最後にオチがあるのですね。皆さん知っているからなのかしら?…と言っても暗くて途中では席を立ちづらいです。 私は知らなかったのですが、映画館のサービスに「夫婦50割引」というのがあります。夫婦のどちらかが50歳以上なら二人とも1000円で映画鑑賞できます。 得したような、嬉しいような?何とも複雑な気持ちになりました。 |
先日、奈良県臨床整形外科医会研修会が開催され出席しました。特別講演は奈良医大整形外科准教授面川庄平先生の「手外科領域における新しいアプローチ」でした。 面川庄平先生は奈良医大整形外科の先輩で豊富な経験と業績をお持ちの先生です。今回は手外科領域におけるトピックスを紹介して頂きました。その一部を紹介いたします。 母指CM関節症は親指の付け根の関節である母指CM関節の変形性関節症ですが、日常よく見かける疾患です。女性に多いことはよく知られていますが、データによりますと閉経後女性の25%に母指CM関節症が認められるそうです。そのうち28%に疼痛を認めるそうです。すなわち全体で見ると閉経後女性の7%が有痛性の母指CM関節症を有することになります。これは大変多い数になりますね。つまりかなり多くの方が母指CM関節症に悩まされているということになります。ところが逆に見ますと母指CM関節の変形を認めるにもかかわらず症状のない方は72%にものぼるということで、これは大変不思議な気がします。またレントゲン写真上変形が強いと思われても症状のない場合やレントゲン写真上変形が軽度と思われても症状の強い場合もあり、レントゲン所見だけでは判断が困難のようです。 母指CM関節症に対する保存治療(手術をしない治療)は装具療法、関節内注射、内服薬、外用薬などになります。注射はステロイドやヒアルロン酸などの注入が行われますが、ステロイドの注射は短期間の効果だけで長期で見るとヒアルロン酸の方が効果はあるということです。しかしながらヒアルロン酸の母指CM関節への注射は保険適応外になります。またステロイドの注射は生理食塩水の注射と効果が変わらないという報告もあるそうで、ステロイドの注射は1回くらいに留めておくことが望ましいということでした。 母指CM関節症に対する手術治療は靭帯形成術、骨切り術、関節固定術、関節形成術など色々あります。面川庄平先生は関節鏡視下に滑膜切除、大菱形骨部分切除、長母指外転筋の半裁腱を用いて靭帯形成を併用した関節形成術を行い良好な成績を収めておられます。これには大変精緻な技術を要するものと思われます。 ばね指(弾発指)は指屈筋腱の狭窄性腱鞘炎です。保存治療として腱鞘内ステロイド注射(トリアムシノロンなど)は有効ですが、症状を繰り返す場合には3ヶ月あけて2回までに留めておられ、更に改善しなければ手術治療を勧めるということでした。弾発指の腱鞘炎はMP関節という指の付け根の関節上の腱鞘に生じますが、手術治療後にPIP関節という第2関節に屈曲拘縮といって関節が伸びない状態が起こることもあるそうです。これは要注意ですね。 更には三次元動態解析を用いて三角線維軟骨複合体損傷(TFCC損傷)の原因となる三角線維軟骨複合体(TFCC)における4本の靭帯の深層部と浅層部のそれぞれの働きや損傷されたときの手術適応を解説して頂きました。手術治療を要する場合は手の外科専門医に委ねる必要があります。 またWide awake surgeryといって、エピネフリン入りキシロカインによる局所麻酔を用いて術中にターニケットも用いずに患者さんに手指などを動かしてもらいながら手術をする試みなども紹介して頂きました。 大変細やかで精密な手技と工夫がなされており、感心しきりでした。 |