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救急医療週間の講演会の3つめの演題は「名張市での認知症の取組み」で講師は名張市地域包括支援センター長田中明子氏、名張市民生委員児童委員奥田眞智氏でした。 初めに名張市地域包括支援センター長田中明子氏から地域包括支援センターの紹介がありました。地域包括支援センターは平成18年介護保険の制度改正にともない創設され、健康作り、福祉活動、介護サービス、介護予防事業など様々な取り組みをしておられるそうですが、高齢者の権利擁護という役割も果たしているそうです。 田中明子氏は名張市の認知症ケアへの取り組みについて紹介してくださいました。認知症ケアの基本的な考え方は認知症になっても住み慣れたまちで安心して暮らし続けられるように、ということだそうです。認知症への理解を進める活動として認知症サポーター養成、認知症予防教室の開催、本人と家族への支援、家族会への支援やつどい・交流会などを行っているそうです。認知症サポーターとは養成講座を受講した人のことで、特別な何かをする必要はなく、認知症を正しく理解し、認知症の人や家族の方に対してあたたかい見守りのできる人だそうです。オレンジリングは認知症サポーター養成講座を受講した認知症サポーターの証であるそうです。 当日配っていただいた資料の「単なるもの忘れと認知症は違います。」という小冊子には、食べたメニューを思い出せないのは物忘れ、食べたこと自体を憶えていないのは認知症の疑いがあります、と書かれています。また認知症者家族がつくった認知症・早期発見の目安として、もの忘れがひどい、判断・理解力が衰える、時間・場所がわからない、人柄が変わる、不安感が強い、意欲がなくなるなどが挙げられています。あれ?なんだか最近様子ちがうな…と最初に変化に気づくのは、家族や友人・近隣の方なので、まずは医療機関や地域包括支援センターに相談することが大事ですね。 地域の身近な相談窓口として開設された「まちの保健室」も紹介されました。まちの保健室は子どもから高齢者の方々の保健福祉に関する地域の身近な相談窓口として市内15地区の公民館・市民センターなどに併設されており、福祉・介護職などの嘱託員が約2名配属されており、地域包括支援センターやその他の関係機関と連携して活動しているそうです。 次に名張市民生委員児童委員奥田眞智氏が民生委員としての活動の実体験話を紹介されました。 出席しておられた皆様は大変熱心に聴いておられました。今後益々地域包括支援センターと民生委員の重要性は増していくことでしょう。 |

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救急医療週間の講演会で特別講演は「そのもの忘れは年のせい?認知症の基本を学ぼう」で講師は三重大学神経病態内科学、認知症医療学講座教授、認知症疾患医療センター長冨本秀和先生でした。 冨本秀和先生によりますと認知症患者は爆発的に増加しており、要介護の原因としても脳卒中に次ぐ頻度になってきているようです。最近では認知症者の不明者も増加しており、認知症者の運転免許返納の問題、認知症者が不幸にして鉄道事故に関わってしまう問題などが取り上げられています。先日も鉄道事故にてなくなられた認知症者のご家族が、介助者もとてもご高齢で要介護者であったにも関わらず多額の責任賠償を求められたというニュースもありました。誰しも他人事ではなくなってきている問題かと思われます。 認知症と老人の良性のもの忘れの違いとして、老人の良性のもの忘れの場合には日常生活に支障がないこと、自覚があること、一部だけ忘れる、作話や取り繕いがない、ほとんど進行しないなどの特徴があるそうです。 冨本秀和先生はアルツハイマー病、脳血管性認知症、レビー小体型認知症、前頭側頭型認知症の4大認知症についてケアのポイントなどを紹介されました。このうちアルツハイマー病と脳血管性認知症で認知症の8割を占め、両者の合併も多いようです。しかしながら治癒可能な認知症(脱水、ビタミン欠乏症、肝性脳症、正常圧水頭症など)を見逃さないことが、まずは重要であるようです。 イギリスでは生活習慣を改善することにより認知症が予防できることが証明されたそうです。生活習慣病を治せば、アルツハイマー病は予防できるということだそうです。 |

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9月11日にアドバンスコープADSホールにおきまして、救急医療週間の講演会が開催されました。 今回も大変大勢の方が来場され、熱心に講演を聴いておられました。 講演1は「AED」の操作方法と実演で名張市消防本部、名張消防署と名張市消防団、本団女性部からの発表でした。AEDは自動体外式除細動器のことで、心室細動の際に機器が自動的に解析を行い必要に応じて電気ショック(除細動)を与え心臓の働きを戻すことを試みる医療機器ですが、動作が自動化されており一般市民でも使用できるように設計されています。傷病者を救命する可能性を向上するには救急車が到着する前に傷病者の近くにいる一般市民(バイスタンダー)がAEDを使用して電気ショックをできるだけ早く行うことが重要で、今回の発表では実演(熱演でした!)がとてもわかりやすく、皆様も使い方を理解しやすかったのではないかと思いました。 |

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9月11日(木)午後2時からアドバンスコープADSホールにおきまして、名賀医師会主催で救急医療週間の講演会が開催されます。 講演1は「AED」の操作方法と実演、講演2の特別講演は「そのもの忘れは年のせい?認知症の基本を学ぼう」講演3は「名張市での認知症の取組み」です。 皆様、是非ご参加ください。 |

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第27回日本臨床整形外科学会の「こまちセミナー」として「ガイドラインから見た軟部腫瘍」の講演が行われ、講師は秋田大学整形外科理学療法学専攻教授岡田恭司先生でした。 軟部腫瘍の診療は良性、悪性の判別が困難であることなどもあり、一般整形外科では苦手に思われることも多いように思います。岡田恭司先生は整形外科でも軟部腫瘍治療を専門としないが、日常臨床においてプライマリーケアで軟部腫瘍症例に遭遇することの多いわれわれ一般整形外科医に、懇切丁寧に軟部腫瘍について解説してくださいました。 臨床症状では軟部腫瘍の痛みと大きさ、腫瘍の存在部位の深さが大切であるということです。良性腫瘍では痛みのない場合が85%、悪性腫瘍では痛みのない場合が70%であるそうです。痛みだけで良性、悪性の判別は難しそうですね。軟部腫瘍の大きさが5cm以上で筋膜よりも深部に存在する場合に、悪性の可能性が高くなるそうです。しかしながら神経系、脂肪系、血管系の腫瘍では例外が多いそうです。これだけ例外が多いことが診断と診療を困難にしているようですね。 画像診断ではMRI検査が有用です。岡田恭司先生はいくつかの特徴的なパターンを呈する症例を紹介されました。 良性、悪性の診断で最も信頼できるのは病理診断です。岡田恭司先生は軟部腫瘍の生検において、生検方法、皮膚切開、進入路の選択、ドレーンの留置方法など留意すべき点について解説してくださいました。軟部腫瘍の生検において適切な方法が選択されないと、後の治療に大変難渋することが多いようです。岡田恭司先生はそういった経験をたくさんお持ちのようです。岡田恭司先生は、軟部腫瘍の生検は十分な知識と経験を持ってから行う必要があり、十分な画像検査もなく局所麻酔下に切除を試みることは厳に慎むべきであると警鐘を鳴らされます。軟部腫瘍切除生検の適応は、①2-3cmより小さい、②皮下に存在する、③血管神経と離れている、④画像検査がある、の全てが揃っていることだそうです。 |
