先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。講演は「肝疾患治療の新しい視点」で演者は三重大学大学院医学系研究科消化器内科学准教授白木克哉先生でした。 今回の内容は主にC型肝炎の新しい治療に関するお話しでした。私は専門外ですのでほとんど肝炎に関する知識はありませんが、興味深く聴かせて頂きました。 白木克哉先生によりますと高齢者を含めC型慢性肝疾患はまだまだ増加傾向にあるそうです。 C型慢性肝炎の治療法には肝臓の炎症を抑え病気の進行を遅らせるための「肝庇護療法」と体内からウイルスを排除して治癒を目指すための「抗ウイルス療法」があります。「肝庇護療法」にはウルソデオキシコール酸やグリチルリチン酸―アンモニウム・グリシン・L-システイン塩酸塩水和物などがあります。 「抗ウイルス療法」として代表的なものはインターフェロンです。インターフェロンも私は名前くらいしか知りませんが、種々の理由によりインターフェロンが使えない場合や効かない場合も多いそうです。効きやすさはウイルス遺伝子型やウイルス量にもよるそうです。しかしながら最近では抗ウイルス療法」として内服薬で新薬が出ているそうです。これも効きやすさはウイルス遺伝子型によるらしいですが、型によっては高率に有効であるそうです。また新薬治療を受けられた患者さまの印象は白木克哉先生によりますと、だるさがとれた、精神的に楽になった、糖尿病のコントロールがよくなった、など概ね良好であったそうです。また透析患者でインターフェロン投与困難である症例にも新薬の内服薬が有効であったそうです。 今までの常識では考えられないように、肝炎治療において注射でなく内服薬で「抗ウイルス療法」ができるようになってきているということです。随分以前とは変わってきているようで、各方面で医学は進歩しているようです。素晴らしいですね! |
先日、第4回ラグビードクターフォーラムが開催され出席しました。 シンポジウムは「スポーツ現場における救命外傷の対応」で顔面領域、腹部損傷、整形領域、World Rugbyと4つの分野についてそれぞれ第一人者の先生から講演がありました。 顔面領域は「スポーツ現場における顔面外傷の診断と治療」で講師は日本大学医学部形成外科学系形成外科学分野准教授副島一孝先生でした。顔面骨折は一般に鼻骨骨折、頬骨骨折、下顎骨骨折、眼窩底骨折の順に頻度が多いそうです。それぞれの骨折について、スポーツ現場での診断法、応急処置、治療の実際について解説してくださいました。質問にもありましたが、顔面領域は脳外科、眼科、耳鼻科、口腔外科などの境界領域であり、専門治療を要する場合にどの科に紹介するか難しい場合もあると思いますが、副島一孝先生はまず形成外科にご紹介くださいということでした。しかしながら形成外科のない病院も多いので、やはり悩ましいところですね。 腹部領域は「ラグビーに関連した腹部外傷における診断・初期治療とピットフォール」で講師は東京慈恵会医科大学消化器外科診療部長三森教雄先生でした。ラグビーにおける腹部外傷は鈍的外傷が主体で、重症臓器損傷に至る頻度は比較的少ないものの、固定された後腹膜臓器(十二指腸、膵臓、腎臓など)、肝臓、脾臓は傷害を受けることがあるそうです。また、腸管穿孔、腸間膜血腫による血流障害なども起こりえるそうです。現場では、迅速に丁寧な腹部触診、打診、聴診をもとに痛みの程度、脈拍、血圧、呼吸状態などから、重症度を推測することが基本になるそうです。軽度損傷では受傷早期に腹膜刺激症状が乏しく初期診断が困難なことがあるので経時的な診察が肝要であるということでした。現場で行うべきことは安静、患部の冷却、下肢挙上などに限られるので、血圧、脈拍の変動を伴うようであれば初期輸液を開始しながら救急医療機関への搬送が必要になります。 整形領域は「ラグビーにおける足関節・足部外傷の診断と治療~応急対応から復帰まで~」で講師は奈良県立病院機構奈良県総合医療センター副院長杉本和也先生でした。杉本和也先生は同志社大学ラグビー部チームドクターでラグビー日本代表カテゴリー帯同の経験も持っておられるラグビーに特化したスポーツドクターの第一人者です。各種靱帯損傷、インピンジメント症候群、骨軟骨損傷、疲労骨折などの診断と治療などに関して詳しく解説してくださいました。免荷による筋萎縮により復帰が遅れないように注意を要することを指摘されました。私は厚生連松阪中央総合病院勤務時代に、光栄にも杉本和也先生に直接ご指導頂く機会に恵まれました。 World Rugbyは「World Rugbyにおけるピッチサイドでの外傷対応(診断と治療)」で講師は流通経済大学スポーツ健康科学部スポーツ健康科学科教授山田睦雄先生でした。山田睦雄先生はWorld Rugby Medical Committeeを務められ日本ラグビーフットボール協会メディカル委員会委員・安全推進対策委員会委員・競技力向上委員会委員を勤めておられます。ラグビーのピッチにおいては頭部外傷・脊髄損傷・心疾患・呼吸器疾患・胸部外傷・腹部臓器損傷・出血性ショックなどを発生しうるし、会場内または観客席では呼吸器疾患、循環器疾患などが発生しうるということです。山田睦雄先生はWorld Rugbyが世界的に展開しているプログラム「Immediate Care In Rugby」を紹介されました。 基調講演は「プロサッカー選手における外傷と治療~日本代表チームにおけるメディカルサポート~」で講師は順天堂大学医学部整形外科講座先任准教授池田浩先生でした。サッカーはラグビーに先駆けて自国でのワールドカップ開催も果たしていますし、人気の面でもラグビーの一歩先を行っています。日本代表チームのチームドクターとして活躍された池田浩先生のお話は大変興味深く参考になるものでした。池田浩先生はラグビーに関わっている人ばかりの中での講演発表なので、完全アウェイでやりにくいと冗談でおっしゃっておられましたが、会場の皆さんは大変熱心に聴いておられる様子でした。 |
第28回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2015での講演Ⅱは「筋トレに関する誤解 医療現場からのアドバイス」で講師はJCHO東京新宿メディカルセンター整形外科部長柏口新二先生でした。柏口新二先生はスポーツ外傷、障害、肘、膝の外傷、障害、関節鏡手術などの大家で、スポーツ医学の第一人者の一人です。現在のトピックは「子どもの運動器検診の普及」と「中・高齢者の健康作り」だそうです。発育期の障害は手術で治すのではなく、障害を作らない“予防”が第一で、次いで検診による“早期発見”が重要と述べておられます。幅広い視点で様々な年齢層に着目し、ご活躍の場を拡げておられます。今回、柏口新二先生はスポーツ医の立場から筋トレに関する誤解を解説してくださいました。 柔道における筋トレの意義は「柔よく剛を制す」「力に頼っては技が身につかない」「柔道に必要な筋力は柔道の稽古だけで身につく」など、かつてはやや否定的な考えもあったのかもしれません。柏口新二先生によりますと、柔道創始者嘉納治五郎師範は「柔剛一体」つまり「バランスよく業(柔)と、剛(体力)を鍛える」と説いたそうです。また柔道全日本強化選手・指導者へのアンケート調査により「競技に役立つ筋力を養いたい」「競技に直結する筋トレ」など肯定的な意見が多かったそうです。 野球であれば投球フォームを模倣した形態の筋トレもありますが、不安定な姿勢で行うために大きな負荷をかけられない、競技動作とトレーニングの動作パターンが異なるなども問題点もあり、競技動作に負荷をかける筋トレはないと解説してくださいました。また標的筋肉にしっかりと負荷をかけるための条件としてトレーニング姿勢が安定していること、関節などに無理な負担がかからない生理的な動きであることなどを挙げられ、筋トレにはその目的に即した固有の最適なフォームがあり動き作り、スキルとは分けて考える必要があるということでした。 筋肉の機能で考えると、支点を作るStability muscleと力源となるMobility muscleに分けられますが、パフォーマンスの向上のためにはしっかりとした支点の確保と大きな力源を得ることが重要で、両方の強化と強調が重要であるということです。Stability muscleが注目されるようになった経緯と背景は、効率よいトレーニングマシンの開発と一部ドーピングによる筋力増強などで驚異的な筋肥大や強化が進み、問題解決のために医師やトレーナーの対応として弱いStability muscleだけが問題視されたそうです。こういった背景や経緯が伝わることがなかったためにStability muscleの重要性が誇張され、従来は肩の障害治療や術後の後療法の一つであった「腱板のリハビリ」が必要以上に強調され“インナーマッスル神話”ができたのではということでした。こういう経緯や背景を知ると、なるほどという感じですね。 柏口新二先生は、重要なことはトレーニングの目標を明確にすることであると述べられました。つまり筋力を強くするトレーニングと動き作り(筋力の使い方)は分けて考える、どちらかが大切かという問題ではなく、その選手にとってどちらが必要かということ、一石二鳥で行おうとすると両方とも中途半端になることが多いということでした。 アスリートの肘内側痛の原因として「上腕三頭筋が発達し過ぎて尺骨神経の障害が起こるという話がありますが、柏口新二先生によりますと尺骨神経の圧迫・牽引性障害は上腕三頭筋の肥大そのものは主因ではなく解剖学的な問題を有する選手が筋トレをすることによって障害を生じたり、あるいは筋トレによって構造上の異常が生じて障害が起きるということでした。 柏口新二先生は整形外科医への提言として、新しいトレーニング理論や方法が出るが、それは枝葉のことが多くトレーニングの本幹(本道)を忘れてはならない、整形外科医は運動器治療の専門家としてトレーニングについても研修する必要がある、スポーツやトレーニングを実践し、動きのメカニズムを体感する必要があるとアドバイスされました。重い言葉だと思います。 柏口新二先生は講演に先立ちまして整形外科医の立場として、スポーツを専門とされている方もおられる中で筋トレの話をするのは、私も筋トレが好きで実践しているからだと述べられました。最先端の治療から予防医学、そして自ら筋トレ実践と、柏口新二先生はまさにスポーツ医学界のリーダーであると思いました。 |
先日、第28回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2015が開催されました。講演Ⅰは「生理学・解剖学からみた筋トレの基本とよくある誤解」で講師は近畿大学生物理工学部人間工学科准教授谷本道哉先生でした。谷本道哉先生は日本オリンピック委員会医科学スタッフ、日本ボディビル連盟医科学委員なども務められ、著書でスロトレなどの筋トレを紹介され、テレビ放映などでも運動の効果をわかりやすく解説しておられます。また自らもトレーニングを実践され、見事に鍛えられた肉体は何より説得力があります。その筋トレのエキスパートである谷本道哉先生が筋トレの基本とよくある誤解についてわかりやすく解説してくださいました。 谷本道哉先生によりますと筋力トレーニングを実施する主目的は、競技練習だけでは得られないハイレベルの筋肥大・筋力増強効果を得るためであり、これを補強トレーニングといいます。そのためには競技練習で筋肉に受ける以上の刺激、つまりオーバーロードをかけなければならないということです。リハビリテーションやサルコペニア予防を目的として行われる場合も、日常生活で受ける以上の刺激でオーバーロードをかけて効率よく筋を発達させる必要があるそうです。これは一見当然のことに思えますが、スポーツ界ではプロスポーツにおいても様々な言い伝えや迷信?があります。例えば「競技で使える筋肉は競技練習でつける。」とか「試合の心拍数に合わせて走る。」などです。これらは試合や競技において実践的に活かせるように思え一見良さそうに思えます。しかしながら形だけ模倣しても競技動作とは異なる筋トレ固有の動作であり、標的の筋肉にしっかりと負荷をかけるためには筋トレにはその目的に即した固有の最適なフォームがあるということです。ただし筋トレだけではパフォーマンスアップには繋がりにくく、スキルを高めるトレーニングも当然必要となります。 谷本道哉先生はその他にも様々な誤った情報が多いことを指摘されました。例えばインナーマッスルという都市伝説、筋トレでつけたアウターは使えない、インナーこそ使える筋肉、インナーは軽負荷で、高負荷になるとアウターばかりのトレーニングになる、ボディビルの筋肉はアウターばかり、インナーは鍛えられない、体幹トレーニングはインナーが鍛えられる、安定したマシンはインナーが鍛えられない、不安定なフリーウエイトの方がインナー強化に有効である…などなど。これらはすべてイメージであり、誤りであると谷本道哉先生は解説してくださいました。トレーニングの王道は筋トレ、パワー発揮トレ、持久トレ、スキルトレであり、それ以外のインナー強化、体幹トレーニング、ファンクショナルトレーニングはあくまで+αの位置づけであると谷本道哉先生は述べられました。流行や誤った情報に流されがちな現在の情報社会に谷本道哉先生は警鐘を鳴らされます。 谷本道哉先生はテレビの情報番組でご自身のトレーニングに関して問われ、1日20分、週に3~4回と答えておられます。今までの蓄積があってこそでしょうけれど、これだけの短時間でこの立派な肉体を維持されているのはスゴイと感心致しました。 |
アイルランド・ダブリンで行われたW杯リミテッド(RWCL)の理事会で開催地が承認され、ワールドラグビーが発表した2019年ラグビーW杯日本大会の開催地は北海道札幌市、岩手県釜石市、埼玉県熊谷市、東京都、神奈川県横浜市、静岡県静岡市、愛知県豊田市、大阪府東大阪市、兵庫県神戸市、福岡県福岡市、熊本県熊本市、大分県大分市でした。 4年後の2019年ラグビーW杯日本大会開催に向けた動きが、着々と進んで行っています。本当に楽しみです! |