先日、骨粗鬆症WEBシンポジウムがあり、スタッフと講演を拝聴しました。講演は「超高齢社会における骨折予防戦略:健康寿命の延伸を目指して」で講師は国家公務員共済組合連合会虎の門病院内分泌センター部長竹内靖博先生でした。 竹内靖博先生によりますと骨粗鬆症に対する薬物治療が正しくなされると、骨粗鬆症による非外傷性骨折をおよそ半分まで減らすことができると推定されているそうです。骨粗鬆症治療が十分に普及していないことより、既存骨折を有する骨折リスクの高い患者を効率よく治療へ導く方策が必要で、効率的なスクリーニングシステムの構築が重要であると竹内靖博先生は指摘されました。そのためには既存骨折の問診と胸腰椎単純X線像評価のルーチン化が重要な課題であるということです。 現在、骨粗鬆症に対する治療薬が数多く開発され、骨折抑制効果も確立されてきているようです。竹内靖博先生は患者さまにとって負担が少なく、無理なく継続できる治療手段を個別に検討することが大切であり、骨粗鬆症治療が長期にわたることが多いために患者さまの状況に応じて数年ごとに治療法を再検討していくことも重要であると述べられました。 今回はWEBシンポジウムであったために院内で講演を視聴することができました。また看護師、理学療法士などのスタッフも一緒に講演を視聴することができました。仕事の合間に有益な講演を皆で聴くことができて、本当によかったと思います。これは便利なシステムですね。 |
一昨日にサクラセブンズ(女子7人制ラグビー日本代表)がリオデジャネイロ五輪出場を決めたという報道がありました。おめでとうございます! 報道によりますと、選手のロッカー室には、元日本代表選手たちの激励の言葉が書かれた日の丸の旗が掛けられており、こんな書き込みがあったということです。<エディーさん、男子のみなさん、ごめんなさい。世界で一番走ってきたのは、わたしたちです>。 想像を絶する努力で、不可能を可能にしてきたのかもしれませんね。 ただただ、敬服するばかりです。 |
先日の「みえ整形外科イブニングセミナー」講演2は「押さえておきたい股関節診療の基本」で講師は京都府立医科大学整形外科教授久保俊一先生でした。 久保俊一先生によりますと股関節は人体最大の荷重球関節であり、体重の数倍から十数倍の負荷に耐えつつ大きな可動域を有する関節であるということです。久保俊一先生は股関節外科医の役割として幅広い素養に基づく的確な診療の実践が必要であると述べられ、診療は察する心、患者の訴えにrespondできる診療と臨床的に治療の選択ができる診療を実践する必要があると述べられました。久保俊一先生は診断学では基礎科学の知識に基づく正しい検査手法と解釈が必要で、新しい検査技術の進歩も把握する必要があり、治療学では保存治療、リハビリテーション、新しい薬剤や治療についての造詣を深める必要があると述べられました。この様な思いから久保俊一先生は教科書を著す必要性を感じられ、「股関節学」という書物を著されたということです。久保俊一先生はこの書物を著されるのに3年間も要したとおっしゃっておられました。実は先日、「股関節学」を購入しておりましたが、1200ページ超にもおよぶ立派な書籍です。この書籍をたった3年間で完成したということに、逆に驚きました。 久保俊一先生は自身が日本股関節学会ワーキンググループ長を務められた大腿骨寛骨臼インピンジメント(FAI)の診断指針について紹介して下さいました。Pincer typeとCam typeに分けてそれぞれ画像所見による評価から診断指針を紹介して下さいました。X線撮影においては正確な撮影の必要性について強調しておられました。 大変勉強になることばかりで、有意義な講演会でした。 |
今日は名張市応急診療所当番に当たっており、勤務しておりました。 先日は伊賀市内の中学校でインフルエンザによる学級閉鎖の措置がとられ、今シーズン県内初であるというニュースもありましたが、現在のところ名張市応急診療所では今シーズンインフルエンザ陽性の方は出ておられないようです。今日も高熱の方が数人おられましたが、インフルエンザ検査は全て陰性でした。しかしながら今週は寒くなるという天気予報も出ていますので、インフルエンザ流行も時間の問題でしょうね。 今は名張市では下痢と嘔吐に高熱を伴う胃腸炎が流行しているようです。今日は大人の方も子どもの方も大勢同様の症状の方がおられました。皆様お気をつけ下さい。 応急診療所勤務は午前9時から午後11時までの長丁場です。また診療科目が「内科・小児科」なので専門外の私は常に強度の緊張感がぬぐえません。今日もなんとか応急診療所勤務を終えてホッと一息ついております。 |
先日、みえ整形外科イブニングセミナーが開催されました。講演1は「関節リウマチ治療の実践」で講師は三重大学整形外科講師若林弘樹先生でした。若林弘樹先生はサンフランシスコでリウマチに関する国際学会発表を終え、帰国後すぐというお忙しい中でご講演下さいました。 関節リウマチにおける関節炎の主病変は滑膜炎であり、滑膜の増殖から次第に周囲の軟骨、骨が侵され、関節の破壊と変形に至ります。従来、関節破壊が10年以上経過してから進行するのではと思われていたのが、実は発病後2年以内に急速に進行することが明らかとなり、関節リウマチに対する治療方針が以前とは大きく変わってきたという経緯があります。若林弘樹先生はEULAR recommendationなどに基づいた関節リウマチに対する治療アルゴリズムのフェーズⅠからフェーズⅢまでの流れを解説して下さいました。フェーズⅠではMTXを使用できるときと使用できずに他のDMARDを使用する場合に分けて、6ヶ月以内に治療目標達成を目指し、フェーズIIでは予後不良因子の有無により生物学的製剤の追加または他のDMARD使用の選択となり、フェーズⅢでは他の生物学的製剤への変更かトファシチニブへの変更の選択となります。若林弘樹先生はアンカードラッグとなるMTXの歴史を紹介して下さいました。MTXは1964年に乾癬に対する低容量パルス療法が行われ、1972年に関節リウマチに対して低容量パルス療法が初めに行われました。欧米で関節リウマチに対する治療薬として承認されたのが1989年で、日本では1999年に関節リウマチに対する治療薬として承認され、日本で16mg/週投与が認められたのが2011年です。通常はMTX投与を6mg/週で開始し4~8週間で効果不十分なら8mg/週に増量します。更に4~8週間で効果不十分なら16mg/週に増量します。予後不良因子があれば8mg/週で開始し、副作用因子があれば2~4mg/週で開始します。 若林弘樹先生はMTXの副作用についても解説して下さいました。容量依存性の副作用として消化器症状、肝機能障害、骨髄抑制などがあります。容量依存性の副作用の場合には葉酸投与が有効である場合が多いです。一方、容量非依存性の副作用として呼吸器症状、皮疹などがあります。呼吸器症状の中でも特に間質性肺炎は重篤となり注意を要します。検査としては血液検査(KL-6)ですが、早期発見には聴診所見が有効ということです。これは血圧計のマンシェットを外すときのバリバリという音であるベロクロラ音が特徴的であるそうです。副作用の感染症は容量依存性に増えるそうです。MTXは高い有効率、骨破壊抑制、生活機能改善という点で関節リウマチに対する第一選択であり、アンカードラッグという位置づけです。その次に使われることの多いDMARDであるブシラミン、サラゾスルファピリジンについても若林弘樹先生は解説して下さいました。副作用についてはブシラミン23.9%、サラゾスルファピリジン23.1%と共に高率ですね。更には、どちらとも無顆粒球症などの重篤な副作用もあるということです。またブシラミンは皮膚障害、蛋白尿など、サラゾスルファピリジンは肝機能障害、呼吸器症状などの副作用も多いということです。 若林弘樹先生は症例を呈示しながら関節リウマチ患者さまの治療の実際を紹介して下さいました。MTXを初めDMARDや生物学的製剤においても副作用出現率も高率で重篤な副作用も多く、細心の注意を要します。内科医との連携は必須であるように思われます。 |