先日、第30回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2017が開催されました。特別講演Ⅰは「女性アスリートの障害とその予防~整形外科の立場から~」で、講師は順天堂大学整形外科・スポーツ診療科助教金子晴香先生でした。 金子晴香先生は陸上競技を中心としてエリートレベルの選手をサポートし、帯同ドクターの経験も豊富です。また、ご自身も陸上競技選手としての経験もお持ちで、その経験を活かしてアスリートをサポートしておられます。金子晴香先生は整形外科医師、そして女医の立場から女性アスリートの障害と予防について解説して下さいました。 金子晴香先生によりますと、アスリートにとって至適トレーニングの量や方法についての十分なデータが不足しているために、指導者の経験によりトレーニングが行われているのが現状であるそうです。オリンピックレベルの選手でもトレーニング中の障害で、棄権せざるを得なくなることがしばしば起こっているそうです。 順天堂大学では金子晴香先生も所属しておられる女性アスリート外来において、女性アスリートが健康で長期的に高い競技力を継続できるよう、医学的側面から総合的に支援するというコンセプトで診療を行っておられます。具体的には月経周期異常、月経痛、月経緊張症、月経周期によるコンディション不良、疲労骨折や外傷、骨や関節・筋の痛み、腰痛、摂取エネルギー不足などが対象となるようです。これらの問題は、女性アスリートの三主徴(①摂取エネルギー不足、②無月経、③骨粗鬆症)としてそれぞれ密接に関係しています。金子晴香先生によりますと、無月経や月経不順などの障害を生じやすいスポーツ種目は、最も多いのが陸上競技で次いで審美系競技(体操、新体操、フィギュアスケートなど)であるそうです。疲労骨折は微小な外力が繰り返し加わることにより起こりますが、リスクファクターとして個体因子の他に動作因子、環境因子などが挙げられるそうです。金子晴香先生によりますと疲労骨折を起こすピークは16歳であるということで、練習時間の長さが疲労骨折の発生に関連していることや週に練習の休みの日がないことが疲労骨折の発生に関連しているデータが示されているそうです。 女性アスリートはコーチや指導者から目標体重、目標体脂肪率などを課せられ、それを厳密に守ろうとするためにエネルギー不足に陥り、無月経、疲労骨折へとつながってしまう場合が多いそうです。金子晴香先生は疲労骨折により長期離脱を余儀なくされた陸上競技の女性アスリートの例や疲労骨折を起こして複数回の手術治療を受けたものの競技を断念せざるを得なかった新体操の女性トップアスリートの例を提示して下さいました。そういった経験を踏まえて金子晴香先生は選手と1対1での個別面談を重視しておられるそうで、体重を落とせば強くなるわけではないことやエネルギー不足がもたらす悪影響の重大さを選手たちに丁寧に語りかけておられるそうです。金子晴香先生の女性アスリートをスポーツ外傷、障害から守りたいという熱意に感心いたしました。 |
「Tarzan」の2月9日号は肩こりと腰痛が特集であったので、久しぶりに購入し読んでみました。 通勤タイム=スマホタイム、電車のホームや車内でよく見かけますね。 通勤時などに立ってスマホをしている姿勢は頚椎前弯が消失し、肩甲骨は開き、骨盤後傾となって、まさに肩こりと腰痛に悪い姿勢ですね。現代人の生活様式は肩こりと腰痛を来しやすいことばかりです。本書では首、肩甲骨、骨盤を自由に動かすための体操、ストレッチを紹介してくれています。 「凝る」の科学、という特集もわかりやすいですね。かなり専門的です。 温めるべき?冷やすべき?、というコーナーもわかりやすくてお勧めです。これは患者様からよく質問されるところです。本当に参考になりますね。 |
先日、第118回三重RA・OA研究会が開催されました。特別講演は「スポーツ外傷・障害の診療~最近の話題から~」で講師は鈴鹿回生病院整形外科院長加藤公先生でした。 鈴鹿回生病院は三重県でも有数の基幹病院で、中でも整形外科は年間手術症例が1600例を超えるそうです。トップクラスの整形外科だけでなく、病院全体を牽引する加藤公先生はさぞかしご多忙なことと思われます。日本オリンピック委員会強化スタッフも務められ、スポーツ医学の第一人者である加藤公先生の講演を興味深く聞かせていただきました。 加藤公先生はまず、鈴鹿回生病院で行っている後足部インピンジメント症候群(PAIS)の治療について紹介してくださいました。後足部インピンジメント症候群は足関節底屈時に足関節外果後方に疼痛が生じる疾患で、サッカーのインステップキックやクラシックバレエのpointe姿勢で疼痛が生じることがあることが知られています。加藤公先生はPAISの内、過剰骨である三角骨がインピンジする三角骨障害に対して、鈴鹿回生病院で行っている鏡視下手術について紹介してくださいました。鏡視下手術の場合、直視下手術に比べてスポーツ復帰が早い、長母趾屈筋腱腱鞘切開や滑膜切除などの処置がしやすい、腓腹神経損傷が少ない、などの利点が認められたそうです。鈴鹿回生病院では三角骨障害の他にOs subtibiare、分裂膝蓋骨、Os subfibulare、遺残性オスグッド病、足根骨癒合症などに対しても鏡視下手術を行っているそうです。疲労骨折として第5中足骨近位部骨幹部骨折であるJones骨折に対する手術治療とそのコツなども紹介してくださいました。 加藤公先生は鈴鹿回生病院で行っている腰椎分離症診療方針についても紹介してくださいました。腰椎分離症は腰椎関節突起間部の疲労骨折であるといわれており、第5腰椎に80%以上起こり、次いで第4腰椎に多いということです。70~80%が両側に起こり、野球など体幹の回旋運動をする場合に起こりやすいということです。年齢は12歳から17歳頃に90%以上が発症するということでした。症状は腰痛ですが、無症状の場合もあるそうです。レントゲン検査では初期は所見が認められないために、症状などから腰椎分離症が疑われた場合にはぞうCT検査、MRI検査を施行し、早期診断につなげるということです。CT検査ではレントゲン検査では描出されない亀裂を認め、MRI検査ではT2強調脂肪抑制像において椎弓根に高輝度変化が認められるそうです。初期分離であれば厳密な保存治療を施行すれば骨癒合の可能性は大ですが、進行期では可能性は低くなり、終末期では骨癒合の可能性はありません。骨癒合の可能性があれば鈴鹿回生病院では保存治療として硬性コルセット着用3~6ヶ月間と体育、スポーツ禁止とするそうです。骨癒合の可能性が低ければ、ストレッチ指導や筋力トレーニング、保存治療を行い、スポーツ復帰を目指します。発症が低年齢であるほど腰椎分離すべり症に移行する可能性が高いということで、加藤公先生は腰椎分離症を腰椎分離すべり症にさせないことが肝心であると強調されました。 加藤公先生は膝離断性骨軟骨炎の鑑別診断として骨端核骨化異常を挙げられました。これは画像上類似するもののnormal variantであり、治療対象になりません。小学校低学年でたまたま見つかることが多く、両側に認められるが多いそうです。画像上異変部位は荷重部より後方であることが多く、MRI検査T2強調像で周囲の高信号領域がないことが特徴であるそうです。 大変参考になることが多く、勉強になる講演会でした。 |
本日をもちまして秋山整形外科クリニック開院6周年を迎えることができました。これもひとえに、患者様、スタッフ、関連する業者の方々、家族など周囲の皆様のご厚情とご支援の賜物と深く感謝申し上げます。 当院ではこれからもスタッフと共に、深い信頼関係でつながった温かいクリニックを発展させるために、日々精進して参ります。 今後とも相変わらずご愛顧を賜りますよう心よりお願い申し上げまして、6周年のご挨拶とさせていただきます。 秋山整形外科クリニック院長 |
先日、伊賀医師会館で伊賀名張地区疼痛治療セミナーが開催されました。講演は「慢性腰痛患者へのアプローチ~薬物療法を中心に~」で講師は三重大学大学院医学系研究科脊椎外科・医用工学講座教授笠井裕一先生でした。 笠井裕一先生によりますと、慢性疼痛保有者は22.5%、非保有者は77.5%であり、実に22.5%の方が慢性的に疼痛に悩んでおられるということになります。一般的に慢性疼痛は3ヶ月以上疼痛が継続していることをいいますが、日本では男女とも慢性疼痛の第一位が腰痛であるということです。笠井裕一先生によりますと、腰痛の患者様が来られますと、まず急性なのか慢性なのか、安静時痛なのか動作時痛なのか、下肢痛を伴っているかなどをチェックすることが大切であるということでした。腰痛の場合に腰椎前屈にて疼痛増悪すれば坐骨神経痛性や腰椎椎間板ヘルニア、腰椎後屈にて疼痛増悪すれば腰部脊柱管狭窄症、腰椎前後屈ともに疼痛増悪すれば、その合併が疑われるということですが、笠井裕一先生はその他にも痛みの発症、増悪パターンや痛みの日内変動のタイプなどからその原因を分類して推察する方法を教えて下さいました。 痛みの種類として侵害受容性疼痛、神経障害性疼痛、混合性疼痛、心因性疼痛など、それぞれに対する薬物療法について笠井裕一先生は解説して下さいました。また心因性疼痛の患者様の特徴なども紹介してくださいました。 最後にいくつかのパターンの腰痛模擬患者と笠井裕一先生のやりとりを示していただきました。これがわかりやすく大変参考になりました。腰椎椎間板ヘルニアでは保存治療にて症状が改善する場合が多く、手術を要する患者様は10人中1人程度であること、骨粗鬆症性椎体骨折は立ったり座ったりで痛いが歩くことはあまり痛くなく、当初レントゲン検査ではわかりにくくMRI検査で初めてわかることが多いこと、慢性腰痛のためにあちこちの医療機関を受診しておられる患者様に認知行動療法を用いた手法でも治療しておられること、腰痛診療においてred flagと言われる危険信号(癌、ステロイド治療中、安静時腰痛、強い神経症状、発熱)などを早期に察知する重要性など参考になることばかりで大変勉強になりました。 笠井裕一先生はミャンマーでの医療支援を長年続けておられ、今まで25回の訪問で300例以上の脊椎手術を行ってきたそうです。ミャンマーはまだまだ医療後進国であるそうで、医療設備も全く整っていないそうです。笠井裕一先生はミャンマーの新病院建設にも関わっておられるということでした。手術だけでなくミャンマーにおける瞑想の研究などユニークな研究もしておられます。笠井裕一先生の献身とバイタリティーに感心いたしました。 |