不眠症で悩まれておられる方も多いようですね。私はどちらかというと眠くなって困るタイプなのですが、寝ようと思っても寝られないというのは本当に辛いことでしょうね。そういう方々にヒントになる有用な情報が、数多く紹介されています。 「寝逃げ」してしまえば悩みは消える、という項目は興味深かったです。寝ている間に脳内で記憶の整理がおこなわれ、問題解決の糸口が見つかったりするというメカニズムです。これは、成る程!と思いました。 |
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。演題は「気胸について」で講師はますだ呼吸器科クリニック院長増田大介先生でした。 増田大介先生は東海大学呼吸器外科出身で、平成28年6月1日から名張市でますだ呼吸器科クリニックを開院しておられます。ますだ呼吸器科クリニックでは、患者さんが気軽に受診し相談できる場の提供、患者さんのニーズに可及的に対応のできる呼吸器疾患・生活習慣病を主とした外来診療(診断と治療)の実施、名張市、伊賀市及び周辺地域の診療施設との病診連携の重視を目標として掲げておられます。増田大介先生は呼吸器外科での豊富な経験を元に気胸について説明して下さいました。 気胸は自然気胸、外傷性気胸、人工気胸、医原性気胸などに分類され、自然気胸は原発性気胸(特発性気胸)と続発性気胸に分類されるそうです。気胸の程度が軽症であれば安静で経過観察となるそうですが、中等度以上になると入院して胸腔ドレナージが必要になります。緊張性気胸は生命に危険のある状況ですので、早急にドレナージが必要です。気胸の手術治療は、原因であるブラの切除です。気胸治療の難しさは再発することであるそうで、若年者自然気胸に対する手術治療後の再発率は決してゼロにはならないということです。この再発率を低くするために治療上工夫を凝らしてきた点などを、増田大介先生は紹介してくださいました。 増田大介先生によりますと、気胸の診断と治療は呼吸器科の基本であるが、実際のmanagementは難しく、奥が深い疾患であるということです。整形外科にも肋骨骨折の患者様はしばしば来られますが、気胸などを合併すると対応困難です。やはり胸部外傷は胸部の専門科でないと対処困難ではないかと思われました。 |
先日、名賀医師会予防接種講習会が開催されました。講演は「ワクチンに関する最近の話題」で講師は国立病院機構三重病院小児科副院長管秀先生でした。 当院ではワクチンはインフルエンザワクチンと肺炎球菌ワクチンの接種のみ施行しておりますが、ワクチンに関する最近の話題を興味深く拝聴いたしました。 最近の三重県の話題として、2月に松阪保健所管区での麻疹集団発生が起こったそうです。松阪の企業内で20歳代から40歳代まで13人が発症したそうです。管秀先生によりますと日本の常在麻疹ウイルスは2010年5月以降には検出されていないそうです。近年の麻疹の特徴として、海外からの輸入例が多い、ワクチン接種率が高くなったにもかかわらずワクチン未接種者と接種歴不明者が多い、医療機関での感染が目立つなどが挙げられるそうです。 Hibワクチンと7価肺炎球菌ワクチンの日本での開発と導入は、2013年4月に定期予防接種開始となったそうですが、アメリカから比べると20年遅れであるそうです。Hib髄膜炎は公費助成開始後2年で92%、3年で98%減少したそうです。これは効果が歴然ですね。高齢者の肺炎球菌ワクチン接種は2014年10月以降導入されていますが、肺炎の年齢別死亡率では95%が65歳以上であることに基づいているそうです。肺炎球菌ワクチンに関しては予防接種がすべての肺炎を防ぐものではないことなどの理解を得ることが必要であるということでした。 水痘の合併症は最近の二次感染、Reye症候群、急性小脳失調症、髄膜脳炎、死亡例などもあるそうです。水痘は年齢の上昇に伴い症状が重くなり死亡率が上昇する傾向があるそうで、30歳から49歳では10万例あたり約25.2例、約4000人に1人は死亡する計算になるそうです。これは非常に高率ですね。人食いバクテリアと恐れられる劇症型溶連菌感染症ですが、小児では水痘が危険因子になるそうです。兄弟から水痘が感染し、不幸にも劇症型溶連菌感染症に感染してしまうことなどもあることを紹介してくださいました。水痘の予防は水痘ワクチン接種で、2014年10月以降は2回法で定期接種となっているそうです。水痘ワクチン定期接種後の様々な問題を管秀先生は提示して下さいました。 B型肝炎ウイルスは免疫系が未熟な周産期における感染では95%がキャリア化し、以降年齢が高くなるにつれキャリア化率は減少するそうです。日本では母子感染防止対策事業により小児期のHBs抗原陽性率が事業開始の約10年間で0.22%から0.02%に激減したそうです。体液によるB型肝炎ウイルス感染が報告されており、ようやく日本でも全ての子どもにワクチンを接種するユニバーサルワクチネーションが実施されるようになったということでした。ロタウイルス感染症は小児重症下痢症の原因ウイルスであり、5歳までの全ての子どもでは最低1度は感染するそうです。管秀先生によりますとわずか10~100個のウイルス侵入で感染成立するそうで、公衆衛生の改善だけでは感染が防げず、ワクチンが最も有効な手段であるそうです。 インフルエンザワクチンは日本ではスプリットワクチンという種類であるそうです。スプリットワクチンの課題として管秀先生は乳幼児、高齢者では発症予防効果が低下する、気道粘膜での感染防御は期待できない、B型インフルエンザに対するワクチンの効果がA型より劣る、鶏卵で培養することによる問題、変異株への対応ができない、アナフィラキシーや高度の局所反応発現の可能性がある、抗体持続期間が短いなどを挙げられました。種々の剤型、投与方法を工夫したインフルエンザワクチンの開発が進んでおり、日本への導入も間近であるそうです。それぞれのワクチンおよび被接種者の特徴をよく理解して、より有効かつ安全と考えられるワクチンを選択することが重要であるということでした。 それぞれのワクチンにおいて、まだまだ発展途上の部分もあるようです。しかしながら管秀先生によりますと、予防ワクチンは過去、現在を含めて最も成功した医療技術の一つであるということです。ワクチンが人間の死亡率削減に及ぼす影響は、安全な飲料水の供給についで大きなものであるそうです。このあたりは一般的な認識を変える必要がありそうですね。大変勉強になる講演会でした。 |
第30回奈良県スポーツ医・科学研究会、奈良トレーニングセミナー2017の特別講演Ⅱは「女性アスリートの指導者が知っておくべき婦人科スポーツ医学の基礎」で、講師は女性のためのヘルスケアクリニック イーク表参道副院長高尾美穂先生でした。 高尾美穂先生は婦人科スポーツドクターとして文部科学省・国立スポーツ科学センター 女性アスリート育成・支援プロジェクトメンバーも務められ、オリンピック選手たちなどエリートレベルのサポートしておられます。またヨガインストラクターもしておられ、多方面でアクティブに活動しておられます。高尾美穂先生は婦人科の立場から婦人科スポーツ医学の基礎を解説して下さいました。 高尾美穂先生によりますと、男性に比べて女性の運動器の特徴として骨盤の幅が広い、それによりX脚である(Q-angleが大きい)、関節が柔らかい、筋力が弱いなどであるそうです。それらにより女性に多いスポーツ外傷・障害として膝蓋大腿関節の外傷・障害(膝蓋骨脱臼・亜脱臼、膝蓋軟骨軟化症)、捻挫、肩関節不安定症、疲労骨折、膝前十字靭帯損傷などが挙げられるということです。膝前十字靭帯損傷は男性の2~8倍発症するという報告があるそうで、高校生の女子バスケットボール中の受傷が高頻度であることが報告されています。 女性特有の問題として月経に関する悩みがあり、月経中のトレーニング方法やモチベーションの維持など、月経が止まっている女性アスリートの問題、月経のある女性アスリートの問題などがあるということです。高尾美穂先生はエストロゲン(女性らしさのためのホルモン)とプロゲステロン(妊娠を継続させるためのホルモン)の働きなどについても詳しく説明して下さいました。これらホルモン分泌に関わる視床下部、下垂体、卵巣、子宮内膜などの相互の働きなどについても解説して下さいました。視床下部にはホルモン分泌をコントロールする機能があり、下垂体にはストレスを感知したり、自律神経中枢を司ったり、女性ホルモン分泌の指令を出したりする部位があるそうです。 高尾美穂先生によりますと、女性アスリートにとって月経が順調にあるということは体に余裕があるサインであるということです。ところがトップアスリートの約40%には無月経を含めた月経異常を認めるそうです。競技別では体操、新体操、フィギュアスケート、陸上、トライアスロン競技の順で多いそうです。審美系や持久系競技種目で多いそうです。高尾美穂先生によりますと、体脂肪率が低いほど無月経の割合が多いそうです。BMI 18.5以下で無月経の割合が多くなるというデータがあるそうです。運動量と食事量のバランスが悪いことに、ストレスや体脂肪率低下が影響し合って、生理が止まったり初経が来なかったりすると女性ホルモン分泌低下となり、骨が弱くなり疲労骨折につながるということです。10歳代後半で無月経が続くと最大骨量低下を招き、将来的に骨粗鬆症に至るということです。3ヶ月以上月経がない場合(無月経)や15歳でも初経発来しない場合は専門医の受診が勧められるそうです。 月経困難症とは月経時の随伴症状が強いもので、下腹痛、腰痛、腹部膨満感、嘔気、頭痛、疲労、脱力感、食欲不振、イライラ、下痢、憂鬱などがみられるそうです。月経困難症には機能性月経困難症と器質性月経困難症があり、器質性月経困難症では子宮内膜症が原因である場合が多いそうです。また月経前症候群は月経開始前に起こる精神的・身体的な症状で精神不安定、浮腫、体重増加など様々な症状を呈し、月経開始に伴い消退するそうです。これらの月経に伴う多彩な症状などは男性にはなかなか理解できなかったり気づかなかったりするものであると思われました。高尾美穂先生によりますと、91%の女性アスリートが月経周期とコンディションの変化を自覚しているそうです。女性アスリートのコンディショニング管理には月経周期の把握と理解は必須と言えそうですね。 最後に高尾美穂先生は女性アスリートとは「小さな男性アスリート」ではない。女性アスリートはアスリートである前に一人の女性である。運動指導者は女性の体について十分理解し、男性とは異なるアプローチを提供する必要があると述べられました。とても重要なメッセージであると、感銘を受けました。 |
本日、無事にききょう健康講座の講演をさせていただきました。ありがとうございました。 しかしながら、実は無事ではありませんでした。持参プロジェクターの調子が悪くて10分間以上はあたふたと悪戦苦闘し、パワーポイントの使用を諦めかけた頃に何とか影像が写り、ちょっと画面はおかしいけれど…、というドタバタの始まりになってしまいました。関係者の皆様方を非常にやきもきさせることとなり、大変申し訳ありませんでした。私自身も、とてもやきもきしましたが…。 本日の参加者は165名であったとのこと、本当に大勢の方がお越しくださいました。皆様の健康に対する意識の高さに、大変感心いたしました。それにしても長時間、誠にありがとうございました。 |