7月16日、17日と2日間にわたって東京におきまして第30回日本臨床整形外科学会が開催され、出席いたしました。2日間とも色々な興味ある講演や演題を聴講し、とても参考になることも多かったです。 今後の診療に活かしていきたいと思いました。 |
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。演題は「今も身近にある結核~基本事項の確認とその対応~」で講師は名張市立病院感染症科医長今井雄一郎先生でした。今井雄一郎先生は小児科専門医ですが、感染症科も専門とされ、小児科、感染症内科の両方の診療に当たっておられるようです。 今井雄一郎先生によりますと、結核は明治時代から昭和20年代までは「亡国病」と恐れられていた疾患でした。しかしながら今日では生活水準の向上に加え、医療の進歩により治療可能となり、その当時よりは大幅に死亡者数も減少しました。このため結核は過去の病気というイメージもあります。しかし、現在でも日本では年間18000人が新たに結核発症しており、2000人が亡くなっているそうです。世界で見れば、毎年150万人が結核で亡くなっているそうです。また日本全国で集団感染も多発しており、結核は紛れもなく現代の病気であるということです。かつては、結核は青年の病気であったそうです。正岡子規、石川啄木、滝廉太郎、樋口一葉らの明治時代の文豪も、みんな若くして結核で亡くなっているそうです。最近でもタレントのハリセンボン箕輪はるかさんとテレビスタッフ2名が結核に感染したことや、2016年には警視庁渋谷署の19人が結核集団感染を起こした事例、そして数々の老人福祉施設などにおける結核集団感染事例が報告されています。これを聞くと決して過去の病気とは言えないですね。9月24日から9月30日までは結核予防週間とされ、ポスターなどによる啓発も行われているそうです。 結核は結核菌による慢性感染症であり、約8割は肺結核であるそうです。しかしながら肺以外の臓器が冒されることもあり、全身全ての臓器が結核を発症し得るそうで、肺外結核と呼ぶそうです。非結核性抗酸菌が人から人へと感染しないのに対して、結核は人から人へと感染するのが特徴であるそうです。結核菌はドイツ人のロベルト・コッホが発見したそうで、結核菌の大きさはおよそ1~4μm、分裂は15~24時間に1回で、細菌の60分の1であるそうです。結核は感染しても、必ずしも発病するわけではないそうです。このあたりは理解の難しいところですね。発病は感染した後で結核菌が増殖し、症状が進むと結核菌を咳や痰とともに排出する(排菌)ようになるそうです。結核は麻疹、水痘などとともに、咳やくしゃみの時の飛沫(しぶき)に含まれる菌が空気中に飛び散り、それを他の人が吸い込むことにより感染を起こす(空気感染)感染症です。 世界的に見れば、都市への人口集中などにより結核の爆発的流行なども起こっているそうです。世界における結核の2大問題点はHIVと結核の二重感染と薬剤耐性結核であるそうです。1970年代まで減少していた結核患者数は1980年代が増加に転じ、1993年にWHOが全世界における結核非常事態宣言を発表しました。南アフリカのスワジランドという国では成人の26%がHIV陽性で、結核罹患率も非常に高く二重感染も多くて、同国の平均寿命がこの20年で60歳から31歳へと半減してしまったそうです。日本の結核罹患率は欧米先進国に比べるとまだまだ高く、世界の中では日本は依然として「中蔓延国」であるそうです。日本では地域差があり、大都市に多く、西高東低の傾向があるそうです。 結核の治療は多剤併用療法ですが、治療期間は6ヶ月から9ヶ月くらいかかるそうで、何よりも内服をきちんと継続することが重要であるそうです。治療が完遂されずに途中でやめてしまうと耐性結核菌の出現を招いてしまうそうです。レボフロキサシン投与により、結核の診断治療を遅らせてしまう場合もあるそうで、診断がついてないうちから安易なレボフロキサシン投与は避けるべきであるということでした。 初期症状はカゼのような症状で、2週間以上咳、痰、微熱が続くこと、意図しない体重減少、寝汗などがあれば、診療の場において結核を念頭に置くことが重要であるということでした。今井雄一郎先生によりますと、結核は肺外結核も含めてどの診療科を受診される場合もあり得るので、注意を要するということでした。 結核は過去の病気ではなく現代の病気であるという認識をまず持つことが重要ですね。 |
平成29年2月10日に「第5回日本医師会赤ひげ大賞」表彰式が開かれたそうです。 今回の受賞者は都市部で活躍されている医師から離島などの僻地で活躍されている医師など、活躍の場は様々です。 薩摩川内市下甑手打診療所前所長瀬戸上健二郎先生は38年間離島・僻地医療に従事しておられるそうです。人気漫画・ドラマ「Dr.コトー診療所」の実在のモデルでもあるそうです。 活躍の場は様々でも、表象された5名の先生方の患者様に対する真摯な姿勢は変わらないですね。 |
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「『腎臓はチョッと苦手』という先生方に役立つ腎臓病診療のポイント」で講師は奈良県立医科大学地域医療学講座教授赤井靖宏先生でした。今回のご講演は主に内科医師が対象であると思われ、私自身が腎臓病診療をすることはないのですが、赤井靖宏先生が大変わかりやすく解説して下さいましたので、とても興味深く拝聴いたしました。 赤井靖宏先生によりますと慢性腎臓病(CKD)の定義は蛋白尿などの尿異常か腎機能低下(eGFR<60)が3ヶ月間以上続いている状態であるそうです。CKDのポイントは蛋白尿と腎機能であり、日本人成人の約8人に1人がCKDであり、CKDの有病率は世界的に見ても日本は非常に高いそうです。赤井靖宏先生によりますとCKDは生活習慣病重症化の指標であり、CKDは万病の元であるということです。 赤井靖宏先生は次のような質問をよく患者さんにされるそうです。「腎臓の働きが半分になると体がだるくなるでしょうか?」この答えはNoなのですが、この理由として末期まで症状が乏しい、検尿、検血などでしかわからない、などの特徴が挙げられます。なってしまうと治らないという特徴もありますが、早期発見にて進行を遅らせることができることなどから、CKDは検診に最適の疾患といえるそうです。 赤井靖宏先生によりますと、なぜCKDが重要かというと、その理由の一つにわが国での透析患者が年々増加しているということもあるそうです。日本では腎臓病患者が透析を受ける割合が非常に高いそうです。単位人口あたりでは透析を受ける割合が世界一高いということでした。日本の透析技術はとても高いそうで、最長40年間以上透析を受けている患者様もいるそうです。しかしながら透析患者一人あたり年間500万円~600万円と言われる医療費の高さが問題となっているようです。 赤井靖宏先生によりますと、CKDは心血管事故、死亡、入院の独立した危険因子であるそうで、多くのCKD患者が透析にいたる前に心血管病で死亡しているという事実もあるようです。 赤井靖宏先生は次のような質問も患者さんにされるそうです。「日本人のCKDの原因の多くは慢性腎炎である。これは正しいか?」この答えは私もついうっかりYesなのかと思ってしまいましたが、実際は生活習慣病であるそうです。CKDの危険因子は加齢、糖尿病、高血圧症、肥満、メタボリックシンドローム、喫煙、過度のアルコール摂取などであるそうです。またある種の薬剤がCKDの危険因子になり得るということで、無用な長期投与は控えるべきであるということでした。日本人のBMIの変化は女性ではやや低下しているそうですが、男性では年齢と共に上昇しているそうで、30歳代から肥満度の悪化が顕著であるそうです。CKDは50歳代から増加するそうですが、これは20歳代から40歳代の生活習慣により50歳代からのCKD発症につながるということです。大学病院などでは進行例の受診が多いですので、プライマリーケアでCKD予防の啓発が重要であるということでした。具体的には高血圧症、糖尿病、メタボリックシンドロームの予防、禁煙、過度の飲酒を控える、肥満防止などであるそうです。しかしながら症状のない状態で注意喚起するのは、なかなか困難であろうと思われました。 赤井靖宏先生によりますと、CKDの治療ではやはり減塩が重要であるということでした。CKD患者では塩分を1日3g以上6g未満が基準とされているそうです。しかしながら、舌は慣れるそうで、塩分制限が厳守されていれば外食は塩辛すぎると感じるようになるそうです。逆に、外食を塩辛すぎると感じなければ、塩分制限が不十分であるということでした。 その他にも色々とわかりやすく赤井靖宏先生はCKDについて解説して下さいましたが、私の知識不足と理解力不足でこれ以上の詳細についてはご紹介しきれません。多くのプライマリーケアドクターに大変有益な講演を熱心にしてくださいました赤井靖宏先生に深謝いたします。 |
先週にFamilie*からクリニックの待合室に飾る新しいお花が届きました。 紫陽花の色合いが涼しげで美しいですね。梅雨の季節にぴったりです。 今のところ空梅雨のようですが、梅雨の合間の夏模様に涼しい風をクリニックに運んでくれているようですね。 |