先日、名賀医師会で介護保険主治医意見書研修会が開催されました。演題は「特別養護老人ホームの生活~その人らしい暮らしの実現に向けて」で講師は社会福祉法人名張厚生協会名張特別養護老人ホーム・コウセイ介護支援サービス副施設長田中泰宏氏でした。 超高齢社会になり様々な施設も急増しているようですが、それぞれの施設の種類や役割などに関してはあまり知られていない部分も多いのではないかと思われます。田中泰宏氏はその中でも特別養護老人ホームの歴史と役割などについて、詳しく紹介して下さいました。 特別養護老人ホームは介護老人保健施設であり、日常生活において常に介護が必要で、自宅では介護ができない方が対象の施設であるということです。つまり特別養護老人ホームは介護保険で要介護(3~5)と認定された人が介護を受けながら生活するための施設であり、利用者が施設と直接「契約」して入所するものであるそうです。それに対して養護老人ホームは身体上、環境上の理由および経済的理由により自宅で生活することが困難な高齢者が入所する施設であるそうです。つまり養護老人ホームは介護が必要かどうかには関係なく、現在おかれている環境では生活が難しく、経済的にも問題がある高齢者を養護するための施設であり、市町村が入所の可否を「措置」として入所させるそうです。特別養護老人ホームと養護老人ホームでこれだけ役割などが異なることも、あまり知られていないことですね。 特別養護老人ホームは老人福祉法の施設設備および運営に関する基準が変更となったそうです。従来型特養では入所者が居宅における生活への復帰を念頭に置いて入浴、排泄、食事などの介護、相談および援助など云々~という基準であったのが、ユニット型特養では入居者一人一人の意思および人格を尊重し、その居宅における生活への復帰を念頭に置いて、入居前の居宅における生活と入居後お居宅における生活が連続したものとなるよう配慮云々~というように、かなりそのコンセプトが変化しているようです。食事に関しても従来型特養では食事を適切な時間に提供~、とあったのがユニット型特養では入居者の生活習慣を尊重した適切な時間に~、と変化しています。また社会生活上の便宜の提供などに関しても従来型特養では教養娯楽施設などを備えるほか、便宜入所者のためのレクリエーション行事と行わなければならない、とあったのがユニット型特養では入居者の嗜好に応じた趣味、教養またが娯楽に係る活動の機会を提供~、と随分変化しています。ユニットケアとは利用者一人一人の個性や生活のリズムに沿ったケアであり、できるだけその人らしい生活が継続できるように支援するものであるそうです。そのためには居室やリビングなどの居住環境(ハード)と入居者中心の暮らしを育むケア(ソフト)、組織や勤務体制などのチームケアを推進する仕組み(システム)、そしてこの3つの実践するための少人数ケア体制(ファーム)が必要であり、何が欠けてもユニットケアは成り立たないということでした。 ファームの面では、少人数ケア体制としており10人前後の入居者のグループに職員を固定的に配置し、一人一人の24時間、毎日の暮らしをよく知ることにより、一人一人を把握しやすくなり馴染みの関係を作りやすくしているということでした。その人らしい暮らしのデータを入手し24Hシートというものを活用しているということでした。 ハードの面では入居者が自分の住まいと思えるような環境をつくるということです。キッチン・リビング・トイレ・入浴・洗面などが分散配置された暮らしの場と地域を感じられる場をつくるということで、自分の居場所(個室)があり、暮らしに必要な場(キッチン、トイレ、浴室)が身近にあり、地域の雰囲気を感じる場があるようにしているということでした。 ソフトの面では、今までの暮らしを続けてもらえるような暮らしをつくるという考えだそうです。治療・入院ではないので、今までと変わらず自由に飲み食いする、炊きたてのご飯を食べてもらう、好きなことをして過ごしてもらう、などという方針であるそうです。一人一人の食事リズムと習慣を知ることにより、食事時間は個別に対応するそうです。ユニットで炊飯、盛り付けすることで、あたりまえの家庭的な食事の風景を大切にしているそうです。「食べる」の考え方の基本は何よりも美味しく楽しく食事できることだそうです。 システムの面では24時間の暮らしを保証する仕組みをつくるために、入居者の暮らしに合わせた働き方のしくみと他職種との連携・情報共有の仕組みを作っているそうです。勤務の仕組みは入居者の暮らしに合わせる、日中の人手を多くする、シフトパターンの工夫などを行っており、24Hシートを活用して申し送り、記録にも工夫を凝らしているということでした。 介護職の方は腰などに負担のかかる仕事も多く、腰痛を発症する方も多いようです。クリニックにも腰痛を患った介護職の方が数多く来院されます。名張特別養護老人ホームでは職員の腰痛防止等、身体に負担がかからない介助方法を工夫しているそうです。入居者にとっても楽で安心できる介助を目指しているそうです。姿勢補助手すり、スタンディングリフト、スライディングボードなどの福祉用具を活用しているそうです。 田中泰宏氏は施設が誰のための場所か、職員の「作業の場」になっていないか、お年寄りの「暮らしの場」になっているかどうかなどと常に自省し、一人では暮らしの場を作れない皆さんのお手伝いをすることが我々の役割であると述べられました。個別ケアで職員と入居者というだけの関係ではなく、人と人、個々の信頼関係が深くなったそうです。「もし自分だったら」という入居者視点で、職員たちも自分たちの施設に入りたいと思えるような良い施設を作っていきたいと述べられました。田中泰宏氏の熱意ときめ細やかな工夫に感心いたしました。 |
山中伸弥、平尾誠二・惠子著「友情」を読みました。 ノーベル賞を受賞された山中伸弥先生は日本医学会の第一人者、平尾誠二氏は日本ラグビー界のスーパースターです。それぞれの道を究めたお二人は私と同世代であり、私も最も尊敬する方々です。平尾誠二氏は一昨年に惜しまれながら亡くなられましたが、生前にこのお二人がこんなにも深い繋がりで友情を温めておられたことは全く知りませんでした。 平尾誠二氏のご冥福をお祈りしますとともに、現在苦境に立たされておられる山中伸弥先生が難局を乗り切られ、再び日本医学会を牽引して頂けることを心から願っております。 |
先日、名古屋で運動器エコーセミナーが開催され、参加いたしました。講師は名古屋市立大学整形外科病院准教授後藤英之先生でした。 運動器エコーの基礎、肩関節、肘関節、足関節、Interventionなどについて、後藤英之先生が詳細に解説して下さいました。大変勉強になりました。 後藤英之先生は来年名古屋で日本整形外科超音波学会を開催されるそうです。可能であれば学会にも参加したいものだと思いました。 |
先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。特別講演は「CKD診療のこれから。~名張での病診連携のありかた~」で講師は鈴鹿回生病院腎臓センター長の村信介先生でした。の村信介先生は第1,3,5週の水曜日に名張市立病院でも診療を行っておられます。の村信介先生は腎臓内科で非常にご高名な先生で、名賀医師会では約5年ぶりに、ご講演を拝聴いたしました。 CKD(慢性腎臓病)とは、腎臓の働き(GFR)が健康な人の60%以下に低下する(GFRが60mℓ/分/1.73㎡未満)か、あるいは蛋白尿が出るといった腎臓の異常が続く状態を言います。 年をとると腎機能は低下していきますから、高齢者になるほどCKDが多くなります。 CKDでは腎機能がある程度まで低下してしまうと腎臓はもとに戻ることはないために、早期発見・早期治療により腎臓の機能をこれ以上低下させないことが重要ですので、の村信介先生は治療が必要な患者様の選別と早期の介入が必要であると説かれます。そのためにの村信介先生は①推算eGFRを用いた腎機能の正しい評価、②ハイリスク群の選別、③早期介入、④重点的治療が重要であるということでした。③、④には病診連携が重要であるということです。一般内科から腎臓内科へ患者紹介される理由は①クレアチニン上昇、②検尿異常、③ESA(赤血球造血刺激因子製剤)の適応、④カリウム上昇などであるそうです。の村信介先生はさらに①血圧が下がらない。②尿蛋白が増えてきた、③ESAが効きにくくなった、④もっと痩せさせたい、⑤もっと食養生させたい、⑥医療費を下げさせたい、など実に多岐にわたる内容での紹介を待っているということでした。腎臓の働きが低下する原因は加齢、糖尿病、高血圧症、高脂血症、高尿酸血症、喫煙、肥満、貧血など生活習慣病、メタボリックシンドロームが原因となることが多いようです。各種疾患の治療による患者満足度と薬剤の貢献度の調査によりますと、CKD治療の患者満足度と薬剤貢献度は他疾患に比べて低いそうです。CKDになってしまえば、なかなか治療も奏効しないようです。そのことも踏まえての村信介先生はCKDになることを防ぐために、高血圧症の治療でもより厳格なコントロールが必要であると説かれます。血圧を下げるために減塩、禁煙、体重や血糖のコントロール、思い切った降圧剤が必要であるということでした。尿蛋白はの村信介先生によりますと腎糸球体炎症の程度を反映しているだけではなく、腎糸球体内高血圧、つまり腎糸球体負荷の上昇を反映しているということでした。尿蛋白の軽重を知ることが重要で、の村信介先生は尿検査では尿蛋白定量検査をすることを勧めておられました。 CKDでは貧血が発症するので、薬物療法としてESA(赤血球造血刺激因子製剤)は重要であるということでした。ある種の高脂血症治療薬がクレアチニン上昇に繋がるので注意を要するということでした。運動はCKD発症に影響を与えるか明らかではないが、適度な運動はすべきであるということでした。喫煙本数が20本/日であればCKD発症、進行因子であるそうです。骨粗鬆症などでビタミンDを服用されている方が感冒などにより脱水症状になるとカルシウム排泄低下により高カルシウム血症になる危険性があるということでした。高カルシウム血症になると意識障害、意識低下、食欲不振ないどを招くために、風邪などひいて脱水状態にある方は、風邪をひいたら1週間くらい休薬する方がよいということでした。整形外科には多くの骨粗鬆症患者様が来られ、当クリニックでも随分多くの方にビタミンDを服用していただいていますが、高齢者が多いですので腎機能にも気を配る必要性と重要性を再認識いたしました。CKDにおける尿酸管理では「6,7,8の原則」というのがあるそうで、治療目標が6、そして7mg/dl以上を高尿酸血症、8mg/dl以上となると治療開始の目安となるようです。以上のように様々なケースでの注意点を教えていただきまして、大変勉強になりました。 ちなみにの村信介先生のお名前の、「の」の漢字は田又の下に土と書くかなり珍しい漢字で、このホームページのワープロソフトでは表記されませんので、仕方なく平仮名の「の」で代用させていただいております。の村信介先生によりますと、文豪「国木田独歩」の代表作である「武蔵野」は原本では「の」の漢字がの村信介先生の漢字の「の」と同じ漢字であるそうです。講演中にはその原本の写真も見せて頂きました。由緒正しい歴史ある漢字ですね! |
日本ラグビー狂会編・著「日本ラグビー 凱歌の先へ」を読みました。本書はラグビーワールドカップ2015イングランド大会の翌年に発表された本で、日本ラグビー狂会とは「面白いラグビーが観たい」というシンプルな要求においてのみ結びついている集団だそうです。日本代表がラグビーワールドカップ2015イングランド大会で活躍し脚光を浴びてから2年余り、気がつけばラグビーワールドカップ2019日本大会はもう来年に迫っています。 昨日は大学選手権決勝が行われ、秋の対抗戦から進化を見せた明治大学をかわした帝京大学が辛うじて1点差の逆転勝利を得るという名勝負を演じました。今日は高校ラグビー決勝が行われ、共に優勝候補筆頭のAシード校を破った大阪勢同士の対戦となりました。前半規律のとれた組織的な防御の素晴らしい大阪桐蔭がリードしましたが、展開力に勝る東海大仰星が後半に逆転し勝利を得ました。こちらも終了間際に7点差を追う大阪桐蔭がゴール前で攻め立て、終了のホイッスルが鳴るまで結果のわからない手に汗握る名勝負でした。残る国内の主な試合は1月13日(土)の日本選手権決勝、サントリー対パナソニックの試合です。こちらは日本最高峰の試合が楽しめそうです。その後はサンウルブズ、日本代表の試合と、翌年にラグビーワールドカップ2019日本大会が控えるシーズンの幕開けとなるようです。 本書ではラグビーワールドカップ2015イングランド大会での日本代表の活躍と、その直後の様子などを詳細に伝えて、来たるラグビーワールドカップ2019日本大会での日本代表の活躍への期待を抱かせます。本書の第六章の「辺境のクリアリング」だけは地方の地元高校の合同チームの話です。こちらも日本ラグビーの情景の一つで、地元高校生たちの経験は尊いものだと思いました。 |