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先日、名賀医師会臨床懇話会が開催され、特別講演は三重大学家庭医療学教授竹村洋典先生の「プライマリ・ケアで知っておきたい睡眠障害のメカニズムとその治療方法」でした。 睡眠障害でお困りの方は結構いらっしゃいます。睡眠障害を主訴として整形外科クリニックを訪れる方はおられませんが、いや実は睡眠障害でも困っているんだと打ち明けて下さる方は少なからずおられます。そのために大変興味を持って講演を聴かせて頂きました。 睡眠の種類には深い睡眠と浅い睡眠の2種類あって、一回の睡眠でそれを繰り返しています。深い睡眠をノンレム睡眠といい、浅い睡眠をレム睡眠といいます。夢を見たりしているのは浅い睡眠のレム睡眠の時です。 日本人の睡眠時間は生活環境の変化などにより1960年には平均8.4時間であったのが、2005年には平均7.5時間と減少しているそうです。またデータによると65歳以上の高齢者の男性は30%、女性は50%が不眠で、全体でも約20%睡眠についての悩みを抱えているそうです。 問題は不眠症と生活習慣病との関連で、不眠症は高血圧症、糖尿病、肥満、脂質代謝異常症のリスクファクターであり、特にノンレム睡眠の眠りが浅くレム睡眠が頻繁に起こる不眠との関連が指摘されています。 睡眠障害の治療は国民性が出るようで、日本人が眠れないときは(1)何もしない44%、(2)寝酒30%(世界一多い国民)、(3)処方薬17%、(4)市販薬7%という方法をとるそうです。諸外国ではアルコールに頼るのは10%くらいで、40%くらいは医師に処方薬を出してもらうそうです。またカフェインを控えるといった工夫も諸外国の方が高いようです。アルコールに頼ると睡眠自体が浅くなってしまい利尿作用もありますので、睡眠障害の対処方法としてはあまり得策とは言えないでしょうね。他にも色々と弊害もあろうかと思います。 睡眠障害の改善にはまず原因を取り除くことが第一です。原因としては身体的原因として加齢、疼痛、掻痒感、尿意、呼吸困難など、心理的原因として心配事、ストレス、恐怖心など、精神的原因として不安障害、気分障害など、薬物的原因としてカフェイン、タバコ、アルコール、各種医薬品など、環境原因として寝室の環境、交代制勤務などが挙げられます。日本茶はコーヒーよりもカフェインが多いので要注意ですね。 睡眠衛生を整えても効果のない場合は、薬物療法が勧められます。睡眠薬は種類が多くありますが、睡眠障害の質(入眠障害、中途覚醒、早期覚醒)による使い分けが必要です。また高齢者の場合は特に転倒、転落の原因になることも多いので注意が必要ですね。睡眠薬の副作用として、内服後のことを忘れてしまう健忘があるために就寝直前の内服が望ましく、またアルコールとの併用で血中濃度が著しく上昇することが知られています。 睡眠衛生として推奨されることは、入眠前の食事は控える、入眠前の入浴は控える、入眠前の運動は控える、温かい飲み物によって体温降下を起こすとよい(体温が下がると眠たくなるから)などであるそうです。 これにはビックリしました。私は時々、帰宅後ジョギングし入浴、食事し、冷たいビールを飲んですぐに就寝、その間1時間あまり、ということがあります。睡眠衛生として悪いことばかりを完璧にやっていますね!それでもすぐに(1分以内に)入眠、爆睡してしまいます。睡眠障害と無縁の人は、どこにでもいるようです。 |

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名古屋での講演会の講演2は琉球大学整形外科教授金谷文則先生の「エビデンスに基づく橈骨遠位端骨折の治療戦略」でした。 橈骨遠位端骨折は四肢の骨折の中で、最も頻度の高い骨折です。橈骨遠位端骨折は大腿骨近位部骨折、脊椎椎体骨折、上腕骨近位部骨折などとともに骨粗鬆症に関連した骨折です。橈骨遠位端骨折は大腿骨近位部骨折、脊椎椎体骨折のように生命予後の悪化には繋がらないようですが、手関節の機能低下を招くために日常生活動作(ADL)の低下に繋がらないように早期機能回復が望まれます。 橈骨遠位端骨折の手術治療では掌側ロッキングプレートが良好な成績を得られており、現在ゴールデンスタンダードになっています。保存治療を行う場合には高齢者の場合には整復位を得られても高率に転位するので、徒手整復するなら内固定をすること(手術)を勧めておられました。 若年時に橈骨遠位端骨折を受傷し放置したために著しい短縮変形が認められるものの20年間大工として問題なく仕事をしている症例や、高齢者でも独居のために手関節機能の障害が日常生活動作(ADL)や生活の質(QOL)に悪影響を及ぼすケースなど、年齢や活動性だけでは推し量れない治療選択のポイントを示して下さいました。まさに患者様お一人お一人としっかりと向き合って、その方にとって最も望ましい治療法を選択していく必要があるようですね。 |

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先日名古屋で2つの講演会があり、聴いてきました。 講演1は東京大学整形外科准教授川口浩先生の「骨粗鬆症新薬ラッシュの中での治療戦略 -骨形成促進剤の位置づけ-」でした。 要介護の原因となってしまう骨粗鬆症を治療、予防するための薬物療法は最近進歩していますが、川口浩先生は明快に治療戦略について解説して下さいました。 骨粗鬆症の定義は、かつては骨量の低下であったが、今では骨強度の低下だそうです。骨強度の危険因子として、骨量、骨代謝回転、骨質などが挙げられるが、骨代謝回転がかなり重要な要素であるようです。 骨粗鬆症治療薬としてよく用いられる経口ビスフォスフォネート剤では顎骨壊死、非定型大腿骨骨折などが合併症として問題になりますが、これらについても解説して下さいました。どちらも頻度としては低いので薬剤の使用はリスクとベネフィットを天秤にかけてということになります。顎骨壊死の頻度が低く、骨折の危険性を低下させるというベネフィットのために、米国などでは歯科治療中でも経口ビスフォスフォネート剤を中止する必要はないという見解だそうですが、日本では3ヶ月間の休薬が勧められています。このあたりは国民性の違いですね。 最近では、骨形成促進剤(注射のみ)も開発され治療選択の幅が拡がってきています。ガイドラインやエビデンスだけでは計れない骨粗鬆症治療薬の使い分けを、川口浩先生は明確に示して下さいました。 |

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四日市で行われた講演会の特別講演は大阪保健医療大学スポーツ医療学研究所教授中村憲正先生の「スポーツにおける軟骨損傷治療のパラダイム 現在と未来」でした。 スポーツ選手における軟骨損傷はスポーツ選手生命に関わる機能障害を生み、難治性であることから有効な治療法の開発が待望されています。その期待のためか、本研究会には大変多くの方が出席しておられたようです。 関節軟骨は無血管組織なので自己修復能力はきわめて低いです。また重度の軟骨損傷は将来的に高率に二次性関節症へと進行してしまいます。 現在の軟骨修復のオプションは①間葉系幹細胞の刺激、②代替物による置換、③細胞移植治療、などであるそうです。間葉系幹細胞の刺激としては、micro fractureなどの骨髄刺激法などがあり、約60-80%の症例で有効で、約半数がスポーツ復帰可能であるが、2,3年後には悪化することが多く、30-50%の病巣内に骨棘形成などが認められたということです。代替材料による置換としては、Mosaicplastyなどの自家軟骨移植などがありますが、ドナー側の障害の問題があります。 中村憲正先生は新しい方法として三次元人工組織(TEC)の作成に成功し、これは強い接着性を持ち移植部位に短時間で生体的に結合するそうです。軟骨損傷症例に対して、関節鏡視下に滑膜などを採取し、細胞培養センターで間葉系幹細胞を培養し、作成したTECを軟骨損傷部に鏡視下に移植することで軟骨修復を得るという臨床応用を目指しているそうです。 実現すれば画期的な治療方法ですね! |

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先日四日市で講演会があり出席しました。 一般講演は市立四日市病院整形外科医長三矢聡先生の「骨盤骨折の治療 -救命から再建まで-」でした。 骨盤骨折は交通外傷や高所からの転落事故などの高エネルギー外傷によって生じます。整形外科の外傷の中でも最も重篤な状態に陥る危険性を孕んでおり、通常は救命救急センターなどの三次救急施設で治療されます。 骨盤骨折でも特に不安定型骨盤輪骨折の場合には大量出血を伴う場合が多く、まず救命処置が優先されます。三矢聡先生は早期の治療としてPelvic Binder(骨盤周囲を圧迫する器具)、骨盤創外固定(骨盤を体外で仮固定する器具)、動脈内塞栓術(放射線科により行われます。)、ガーゼパッキング(直接出血部をガーゼで止血する方法)などを紹介して下さいました。1週間ほど経過して全身状態が落ち着いてから内固定器具を用いた手術治療を施行しています。 この様な重傷の骨盤骨折は三重県下でも毎年360例から540例も起こっているそうです。市立四日市病院でも年間24例もの手術治療が行われているそうです。三重県の三次救急は、三矢聡先生達の努力によって支えられていますね。 |
