先日、三重CKD臨床懇話会が名賀医師会で開催されました。私はWebで参加させていただきました。 特別公演は「CKD患者の骨粗鬆症治療を考える」で講師は医療法人医心会福岡腎臓内科クリニック副院長谷口正智先生でした。谷口正智先生は日本透析学会理事などの要職も務められ、日本腎臓学会、日本内科学会などの専門医の先生で、豊富なデータをもとに詳しく解説してくださいました。 谷口正智先生によりますと、腎機能が低下すると、寝たきりの原因となってしまう大腿骨近位部骨折が増加するというデータが報告されており、加齢に伴う骨粗鬆症および腎機能低下は、大腿骨近位部骨折の危険因子と考えられています。しかしながら多くの骨粗鬆症治療薬は、腎不全の場合は慎重投与か投与禁忌であり、注意を要する点が多いものと思われます。谷口正智先生は、骨粗鬆症治療のポイントと注意点を解説してくださいました。 谷口正智先生は、CKD患者における骨粗鬆症治療の提案として、骨代謝回転を評価したうえで、病態に即した治療法を重要であると述べておられました。PTHを管理目標値内に保ったうえで、骨量や骨代謝回転を評価し、骨代謝マーカーを参考にして、高回転型骨粗鬆症か、低回転型骨粗鬆症かを判断するということです。谷口正智先生によりますと、高回転型で高度の骨量低下や脆弱性骨折の既往のある場合には、デノスマブ、ビスフォスフォネート製剤の投与を検討し、低回転型で高度の骨量低下や脆弱性骨折の既往のある場合には、テリパラチド、ロモソズマブの投与を検討することがよいということでした。谷口正智先生によりますと、ビスフォスフォネート製剤による過度のリモデリング抑制により、非定型大腿骨骨折のリスクが上昇するという報告があるので、ビスフォスフォネート製剤を漫然と長期間投与しないことが重要であるということです。 またデノスマブ治療後に、急激に骨形成が優位となり、その結果血中Ca、Pは急激に低下することが多く、この状態をデノスマブ治療における“hungry bone症状”というそうです。ビタミンDやカルシウム剤の併用が推奨されているようです。ロモソズマブやビスフォスフォネート製剤でも、“hungry bone症状”は起こりえるそうです。 谷口正智先生は、骨粗鬆症治療薬の組み合わせによる骨量の変化も検討されており、重度の骨粗鬆症患者において、骨粗鬆症治療薬の組み合わせを検討することを勧めておられました。 谷口正智先生は大変細やかで、緻密な骨粗鬆症治療戦略を実践しておられ、とても参考になりました。本当にありがとうございました。 |