本日、令和2年度第1回三重県感染対策支援ネットワーク研修会がweb開催され、参加いたしました。本会は「三重県感染対策支援ネットワーク(MieICNet)」が、平常時の感染対策の向上や、アウトブレイク発生など緊急時に的確な対応を行うために、年2回、県内の病院・診療所・高齢者施設・薬局などの感染対策担当者を対象に行われる研修会です。当方のインターネット回線の不調もあり、回線が繋がった時点の、事例報告の途中からの参加となりました。 事例報告は「新型コロナウイルス感染症患者の受け入れ対応の現状と課題~看護管理者としての取り組み~」で演者は市立四日市病院副院長兼看護部長川島好子氏でした。川島好子氏は市立四日市病院の感染管理体制の病院の方針を示し、患者を守るため、看護職員を守るため、職員を守るための取り組みを紹介してくださいました。担当看護師の心理的ケアも紹介してくださいました。今後については、人と人との接触が避けられない医療従事者は、患者を守り、自分を守り、拡大を防ぐために感染予防策を徹底することが重要であると述べられました。 特別講演は「COVID-19の感染対策」で演者は藤田医科大学医学部微生物学講座・感染症科教授土井洋平先生でした。 藤田医科大学病院ではすでに300名近くの新型コロナウイルス感染症患者さんの治療を行ってきているそうで、土井洋平先生は豊富な経験に基づいてCOVID-19の感染対策を解説して下さいました。 新型コロナウイルス感染症の感染者が世界で2300万人、死者は81万人に達したそうです。新型コロナウイルス感染症は約1~2週間の潜伏期のあとで発熱、咳、咽頭痛、鼻水、鼻詰まり、疲労感、息苦しい、呼吸困難、筋肉痛、嗅覚障害、味覚障害、下痢などの症状が出るようです。土井洋平先生によりますと他者への感染の44%は発症前ということです。症状の出ない人も多いようですから、誰しも知らない間に感染を拡げてしまっていることも多いのかと思われます。 感染様式は飛沫、接触、エアロゾルですが、飛沫とエアロゾルによる感染を防ぐには、やはり換気が重要であるということです。土井洋平先生によりますとサージカルマスク着用にて感染リスクは67%下がり、相手(感染者)がマスクを着用していれば更にリスクが下がるということで、双方のマスク着用が効果的であるということでした。濃厚接触を回避するには、医療従事者と患者がマスクをしていれば「濃厚接触基準」にはほとんど抵触しないということでした。 感染対策の基本は飛沫、エアロゾル感染の防止、密集の防止、接触感染の防止ということですが、密接を防止するためのアクリル板などは飛沫を防ぐものの、清掃可能であることや防火性の考慮、そして換気を阻害しないことが重要であるということです。また接触感染の防止のための手袋着用は、手洗い回数が減れば着けっぱなしは当然危険性が高いということです。 検査では土井洋平先生によりますとPCR検査は鼻咽頭ぬぐい液または唾液での検査ですが、唾液での検査によると検査する側の感染リスクの軽減に繋がっているということです。抗原検査、抗体検査は今のところ適用が限られるのでは、ということでした。 藤田医科大学病院では水際対策とともに病棟サーベイランスも行っているそうです。病棟サーベイランスは、水際では防げないことを前提として、万が一院内にウイルスが入った場合の拡大を防ぐシステムであるそうです。また職員の健康管理も非常に重要であるということです。 土井洋平先生によりますと、新型コロナウイルス感染のリスクを適切に低減すれば通常診療の継続は可能な場合が多く、確定症例、疑い症例では適切にPPE(個人用防護具)を使用すればリスクは低くなり、普段から職員が濃厚接触を避けることで、患者が発生した場合のダメージをコントロールできるということでした。また土井洋平先生は長期戦を想定したポリシー作りが必要と述べられました。 新型コロナウイルス感染症流行が拡大している状況で、土井洋平先生は大変わかりやすく具体的に「COVID-19の感染対策」を解説して下さいました。参加者にとって非常に有益であったと思います。ありがとうございました。私も今後の診療にいかしていきたいと思っております。 |