先日、名張市立病院地域医療教育研修センターと名賀医師会名張市在宅医療支援センター共催の「スキルアップセミナー~地域で診るHIV感染症について~」が開催され、クリニックのスタッフとともに参加いたしました。 かつては死の病と恐れられたHIV感染症は、近年の薬剤治療の進歩により、現在は平均寿命を全うできる長期生存が可能な慢性疾患になっているそうです。一方で、HIV感染者が加齢に伴う身体機能・認知機能の低下などで自宅療養が困難になった際には、自宅で介護サービスや訪問看護を受けたり、自宅以外の長期療養先を利用するなど周囲のサポートが必要となるが、まだまだ整備が進んでいないのが現状であるということです。 講演①は「伊賀保健所のエイズ対策事業紹介」で伊賀保健所健康増進課保健師から発表があり、伊賀保健所ではHIV検査を無料・匿名で行っているということでした。 講演②は「非“専門家”のためのHIV感染症との関わり方」で講師は国立国際医療研究開発センター、エイズ治療・研究開発センター医療情報室長塚田訓久先生でした。塚田訓久先生によりますとHIV感染症とは、ヒト免疫不全ウイルスの持続感染の結果、細胞性免疫系が機能不全に陥る疾患であるそうです。HIV感染症診療の2本の柱は免疫不全の原因治療と免疫不全に伴う日和見合併症の管理であるということでした。HIV感染症による高度の細胞性免疫不全に伴い、免疫健常者が発症しないような合併症(日和見感染症など)をきたした状態をAIDSと言うのだそうですが、日本ではHIV感染者が「エイズ指標疾患」を発症した状態を「後天性免疫不全症候群(AIDS)」と定義しているそうです。塚田訓久先生によりますと、日本では新規に報告された例の約3分の1が診断時にAIDSを発症しているということでした。薬物療法の発展は目覚ましく、抗HIV療法の簡便化が進み1997年頃には多量の内服薬を服用し副作用も強かったそうですが、2013年頃には1日1錠の服薬で副作用も軽減されているそうです。安定期のHIV感染者に最適なプライマリケアや専門的医療を提供したり、必要な医療への良好なアクセスを提供することが当面の課題であるということで、塚田訓久先生によりますと現代におけるHIV感染症の問題点は生命予後と社会的予後の乖離であるということでした。 私にとって知らないことばかりで、私がなんとなく知っていた知識は数十年前のものであることがわかりました。塚田訓久先生の解説は大変わかりやすかったです。ありがとうございました。 |