先日、「リウマチ診療の現状」~最新治療から安全性を重視した治療まで~という演題の講演会が開催されました。演者は桑名東医療センター膠原病リウマチ内科医長小寺仁先生でした。 小寺仁先生によりますと様々な疾患に対する治療満足度調査では、関節リウマチに関しては2005年から2015年にかけて大幅に向上しているということでした。これには薬物療法の進歩が貢献しているということで、海外では関節リウマチのアンカードラッグとされるMTXが1998年に、生物学的製剤が1998年に認可され、日本でもMTXが1999年に、生物学的製剤が2003年に認可されたことによるということでした。小寺仁先生は、これからは関節リウマチの患者様がありのままに社会生活を過ごすことができることが目標と考えているということでした。 小寺仁先生によりますとリウマチの語源はラテン語の「流」という言葉ということで、これはヒポクラテスの説だそうですが、リウマチ友の会機関誌も「流」というそうです。 かつて関節リウマチは症状がゆっくりと進行し、長期経過後に関節破壊が生じると考えられていましたが、発症後早期から急速に関節破壊が起こることがわかってきました。小寺仁先生によりますと早期診断・早期治療が重要であるうえに、治療に反応しやすい時期があるということでした。 関節リウマチの関節外症状は眼、口、血管、心臓、肺、リンパ節など様々に生じますが、小寺仁先生によりますとリウマチの関節外症状がある方が生命予後は不良である場合があるということでした。関節リウマチ患者は心血管障害が高いということですが、小寺仁先生によりますとTNF阻害薬とMTXは心血管障害のリスクを下げ、ステロイドとNSAIDsは心血管障害リスクとなるということでした。 小寺仁先生によりますと2010年のACR/EULARの新分類基準に基づき、早期診断・早期治療がなされるようになり、関節リウマチの治療目標・方針は関節破壊の抑制、長期予後改善、生命予後などの改善で、患者様との共同的意思決定が重要であるということでした。 MTX投与禁忌は妊婦、授乳中、過敏症の既往症、重症感染症、重大な血液・リンパ系障害、肝障害、高度な腎障害、胸水・腹水、高度な呼吸器障害などです。MTXの副作用は骨髄障害、間質性肺炎、感染症、消化管障害、肝障害、皮疹、口内炎、脱毛など様々ですが、葉酸投与は骨髄抑制、消化管障害、肝機能障害、脱毛などには有効で、他の副作用には無効であるということでした。MTXの副作用には重篤になるものもあり、MTX関連死亡も数多く報告されているそうです。小寺仁先生もMTXによる血球減少に対して活性型葉酸であるロイコボリンレスキューを何度か経験されたということでした。最近では、腎障害があっても使用可能な免疫調製剤を使用して良好な結果を得ているということでした。 小寺仁先生は豊富な経験に基づき、わかりやすく解説して下さいました。大変勉強になりました。 |