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「変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度」

2017年09月22日(金) 院長ブログ

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先日、第2回名張疼痛セミナーが開催されました。特別講演は「変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度」で講師は三重大学大学院医学系研究科運動器外科学・腫瘍集学治療学准教授長谷川正裕先生でした。

保存的治療で改善しない変形性股関節症に対する手術治療として全人工股関節置換術、保存的治療で改善しない変形性膝関節症に対する手術治療として全人工膝関節置換術はよく行われる治療です。しかしながら長谷川正裕先生によりますと術後疼痛残存は全人工股関節置換術では7~23%、全人工膝関節置換術では10~47%という調査結果であったそうです。手術後の満足度調査では全人工股関節置換術では7%、全人工膝関節置換術では約20%(15~25%)が不満足という調査結果であったそうです。これらの背景を踏まえて、長谷川正裕先生は変形性膝関節症に対する治療の進歩と患者満足度について解説して下さいました。

日本整形外科学会変形性膝関節症診療ガイドラインによりますと変形性膝関節症の治療として推奨度グレードA(行うように強く推奨する)は教育、有酸素運動、減量、歩行補助、NSAIDs、全人工膝関節置換術などです。長谷川正裕先生によりますとNSAIDsは消化性潰瘍の問題があるのでCOX-2選択的阻害薬が望ましいが、12週間単独投与すると15%に胃潰瘍が生じたというデータがあるそうで、単独投与は危険であるということでした。長谷川正裕先生によりますと全人工膝関節置換術は費用対効果も高い治療方法であるということでした。

変形性膝関節症の治療として推奨度グレードB(行うように推奨する)は理学療法、装具、足底板、アセトアミノフェン、外用のNSAIDs、カプサイシン、ヒアルロン酸注射、高位脛骨骨切り術などです。長谷川正裕先生によりますとアセトアミノフェンは欧米では長く第一選択薬とされてきましたが、肝機能障害や消化性潰瘍の問題も指摘され、325mgを超えて含有する合剤は推奨されないということでした。長谷川正裕先生によりますとヒアルロン酸関節内注射は日常よく行われる治療で日本整形外科学会の推奨度グレードBで推奨強度87%ですが、国際変形性関節症会議(OARSI)では推奨強度64%であり、米国では効果少なく副作用多いということから行わないことが強く推奨されているということでした。ヒアルロン酸関節内注射は日本では標準的によく行われる治療ですので驚きましたが、長谷川正裕先生によりますと対象となっている変形性膝関節症のグレードが異なることや、全人工膝関節置換術の適応範囲が広いことなども影響しているであろうということでした。ステロイド関節内注射は逆に海外における評価が高く、OARSIガイドラインでは推奨強度が78%であるのに対して日本では推奨強度63%、推奨度グレードC(行うことを考慮してよい)であるそうです。推奨度グレードBである高位脛骨骨切り術は全人工膝関節置換術の適応を約10年遅らせることができるということですので、長谷川正裕先生は70歳までを高位脛骨骨切り術の適応としておられるそうです。

OARSIガイドラインでは非手術療法としてまずCore Treatment(運動、教育、減量、自己管理)を行い、続いて行うよう推奨される治療法を膝以外の変形性関節症の有無、合併症(糖尿病、心疾患、腎疾患、消化器出血、うつ病、肥満などによる活動制限)の有無により4グループに層別化しているそうです。全てのグループにステロイド関節内注射が含まれており、膝以外の変形性関節症がなく合併症のある場合はステロイド関節内注射に加えて外用NSAIDs、歩行補助具だけが推奨されること、膝以外の変形性関節症があるグループと膝以外の変形性関節症がなく合併症のないグループでデュロキセチンが推奨されることなどが特徴的であるようです。

長谷川正裕先生は全人工膝関節置換術の手術治療を数多く手がけておられますが、最近新たな取り組みとして前十字靱帯、後十字靱帯温存する全人工膝関節置換術や、大腿膝蓋関節症に対して大腿膝蓋関節置換と人工膝単顆置換術の組み合わせなども行っておられるそうです。全人工膝関節置換術の術中にナビゲーションシステムを用いて人工関節の設置や術後のアライメントは一層正確性を増してきているということでした。しかしながら人工膝関節全置換術後に約20%に疼痛が残存するということですが、活動性が高いと膝の症状が軽い傾向があり、高齢者では膝の症状が強い傾向があるそうです。変形性膝関節症に伴う痛みのメカニズムには疼痛感作や下行性疼痛抑制系が大きな役割を果たしており、膝以外の全ての部位で疼痛の閾値が低下していることもあるそうです。

長谷川正裕先生によりますと全人工膝関節置換術での入院期間は約3週間、高位脛骨骨切り術では約5週間であるそうです。以前より入院期間はかなり短縮されているようです。

人工膝関節全置換術後に長期を経て人工関節の弛みが生じないか危惧されるところですが、長谷川正裕先生によりますと手術技術の進歩により人工膝関節の耐用年数は約20年まで延びているのではないかということでした。活動性が高い方が膝の症状が軽い傾向があるとはいえ、以前には人工膝関節全置換後にスポーツなどをすることは考えられなかったと思います。長谷川正裕先生によりますと現在では全人工膝関節置換術後にゴルフはOK、テニスもダブルスならばOKとしているそうです。変形性膝関節症に対する治療として全人工膝関節置換術の進歩は著しいと思いました。


 
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