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「疼痛学的視点からみた変形性膝関節症」

2017年04月06日(木) 院長ブログ

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先日、第38回奈良県骨・関節研究会が開催されました。特別講演は「疼痛学的視点からみた変形性膝関節症」で講師は高知大学医学部整形外科教授池内昌彦先生でした。

変形性膝関節症はcommon diseaseであり、X線学的な変形性膝関節症は日本で約2500万人であるそうです。しかしながら症状を有する症候性変形性膝関節症は約800万人であるそうです。池内昌彦先生はこのギャップがなぜ起こるのか、すなわち変形性膝関節症がなぜ症候性になるのかを解説して下さいました。変形性膝関節症は軟骨の摩耗から始まりますが、軟骨に神経は存在しませんので疼痛は軟骨以外の部位で発生するということです。滑膜には痛みに関連する神経終末が存在し、滑膜増生と疼痛には相関が認められるそうです。滑膜炎を起こすと滑膜から炎症性サイトカインが産生され、変形性膝関節症の病期が進行するそうです。

骨膜は神経に富んでいますが、池内昌彦先生によりますと骨髄内にも自由神経終末が多く認められ、MRI検査にてT2強調像高信号を呈するBone Marrow Lesionが疼痛の原因となっているということでした。Bone Marrow Lesionが認められると変形性膝関節症病期は進行しやすく、なければ進行しにくいという傾向があるそうです。この様に変形性膝関節症の疼痛と関連するMRI所見として滑膜炎と骨髄病変が挙げられるということです。高位脛骨骨切り術後に疼痛が軽減した症例において、Bone Marrow Lesionの消失が認められたそうです。

池内昌彦先生によりますと無症候性変形性膝関節症のMRI所見として軟骨損傷43%、骨髄病変15%、骨棘形成13%、半月板損傷10%、滑膜炎4%も認められたそうです。これらの所見を認めながら症状を有さない症例が多く認められたということは、驚きでした。これらの状態に陥ったときに、疼痛として認知するかどうか?ということには疼痛感作が影響するということでした。滑膜炎や骨髄病変が生じると末梢神経から中枢神経に刺激が伝わって下降性疼痛抑制が働きます。この痛覚伝導路には感覚を司る部分と情動を司る部分があるそうです。また内因性鎮痛機序には脊髄後角介在ニューロン、下降系疼痛調節系、内因性オピオイド、広汎性侵害抑制調節などが挙げられるということです。痛み刺激を繰り返すと痛みを強く感じてしまうという時間的加重を痛みにおける感作といい、脊髄後角の感作で起こる痛覚過敏を中枢感作と呼ぶそうです。中枢感作の特徴として、中枢感作を示唆する身体所見としては痛みの特徴が夜間痛や安静時痛、広範囲である、長引く、薬剤に反応しない、不定愁訴(抑うつ、不眠、イライラなど)、圧痛の閾値が低いなどが挙げられるそうです。

池内昌彦先生によりますと変形性膝関節症を理解するのに、炎症性、メタボリックシンドローム、疼痛感作、過負荷の4つの側面を持ったサブグループの集合体と理解し、その特徴に応じた対処をしたほうがよいということでした。

次に池内昌彦先生は変形性膝関節症の治療について述べられました。変形性膝関節症の治療は、まず教育、運動、減量から始まり、次に薬物療法など、最後に手術治療となります。症候性変形性膝関節症800万人に対して、全人工膝関節置換術を受けた方は約8万人であることを考えると、保存治療(手術をしない治療)の重要性がわかります。保存治療の鎮痛効果は証明されているそうです。変形性膝関節症に対して筋力トレーニングをすることにより、膝関節の機能的安定性が得られ、筋肉が抗炎症性サイトカインを放出し、筋収縮により下降性疼痛抑制が賦活化されるために、筋力トレーニングと鎮痛効果は相関関係が認められるそうです。また水中運動を行うことにより疼痛軽減、筋力増強、歩行スピード向上が認められたそうです。また池内昌彦先生は変形性膝関節症に対する薬物療法についても解説して下さいました。

池内昌彦先生は術後疼痛管理が患者満足度につながるということで、「痛くない人工膝関節置換術」を目指しているそうです。手術中にできる疼痛対策として、局所麻酔薬先行投与、筋・骨への愛護的操作、瘢痕を作らない工夫、低圧ター二ケット、出血対策、術後ステロイド剤などだそうです。術後も神経ブロック、浸潤麻酔、フェンタニル、内服薬など駆使して多角的管理を行うそうです。池内昌彦先生は考えられる全ての疼痛対策を講じていると述べておられました。患者様に限りなく優しい医療を実践しておられる池内昌彦先生の姿勢に感服いたしました。


 
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