先日、第118回三重RA・OA研究会が開催されました。特別講演は「スポーツ外傷・障害の診療~最近の話題から~」で講師は鈴鹿回生病院整形外科院長加藤公先生でした。 鈴鹿回生病院は三重県でも有数の基幹病院で、中でも整形外科は年間手術症例が1600例を超えるそうです。トップクラスの整形外科だけでなく、病院全体を牽引する加藤公先生はさぞかしご多忙なことと思われます。日本オリンピック委員会強化スタッフも務められ、スポーツ医学の第一人者である加藤公先生の講演を興味深く聞かせていただきました。 加藤公先生はまず、鈴鹿回生病院で行っている後足部インピンジメント症候群(PAIS)の治療について紹介してくださいました。後足部インピンジメント症候群は足関節底屈時に足関節外果後方に疼痛が生じる疾患で、サッカーのインステップキックやクラシックバレエのpointe姿勢で疼痛が生じることがあることが知られています。加藤公先生はPAISの内、過剰骨である三角骨がインピンジする三角骨障害に対して、鈴鹿回生病院で行っている鏡視下手術について紹介してくださいました。鏡視下手術の場合、直視下手術に比べてスポーツ復帰が早い、長母趾屈筋腱腱鞘切開や滑膜切除などの処置がしやすい、腓腹神経損傷が少ない、などの利点が認められたそうです。鈴鹿回生病院では三角骨障害の他にOs subtibiare、分裂膝蓋骨、Os subfibulare、遺残性オスグッド病、足根骨癒合症などに対しても鏡視下手術を行っているそうです。疲労骨折として第5中足骨近位部骨幹部骨折であるJones骨折に対する手術治療とそのコツなども紹介してくださいました。 加藤公先生は鈴鹿回生病院で行っている腰椎分離症診療方針についても紹介してくださいました。腰椎分離症は腰椎関節突起間部の疲労骨折であるといわれており、第5腰椎に80%以上起こり、次いで第4腰椎に多いということです。70~80%が両側に起こり、野球など体幹の回旋運動をする場合に起こりやすいということです。年齢は12歳から17歳頃に90%以上が発症するということでした。症状は腰痛ですが、無症状の場合もあるそうです。レントゲン検査では初期は所見が認められないために、症状などから腰椎分離症が疑われた場合にはぞうCT検査、MRI検査を施行し、早期診断につなげるということです。CT検査ではレントゲン検査では描出されない亀裂を認め、MRI検査ではT2強調脂肪抑制像において椎弓根に高輝度変化が認められるそうです。初期分離であれば厳密な保存治療を施行すれば骨癒合の可能性は大ですが、進行期では可能性は低くなり、終末期では骨癒合の可能性はありません。骨癒合の可能性があれば鈴鹿回生病院では保存治療として硬性コルセット着用3~6ヶ月間と体育、スポーツ禁止とするそうです。骨癒合の可能性が低ければ、ストレッチ指導や筋力トレーニング、保存治療を行い、スポーツ復帰を目指します。発症が低年齢であるほど腰椎分離すべり症に移行する可能性が高いということで、加藤公先生は腰椎分離症を腰椎分離すべり症にさせないことが肝心であると強調されました。 加藤公先生は膝離断性骨軟骨炎の鑑別診断として骨端核骨化異常を挙げられました。これは画像上類似するもののnormal variantであり、治療対象になりません。小学校低学年でたまたま見つかることが多く、両側に認められるが多いそうです。画像上異変部位は荷重部より後方であることが多く、MRI検査T2強調像で周囲の高信号領域がないことが特徴であるそうです。 大変参考になることが多く、勉強になる講演会でした。 |