先日、名賀医師会臨床懇話会が開催されました。演題は「地域医療連携における検査依頼と放射線画像診断」で講師は名張市立病院放射線科医長鈴木千織先生でした。 われわれ名賀医師会員は日常診療でMRI検査やCT検査などを要する場合には、患者様の利便性を考慮して多数の方の検査を名張市立病院にお願いしております。名張市立病院からは検査実施と共に詳細な所見を届けて下さっており、大変お世話になっております。いつもありがとうございます。 鈴木千織先生はCT検査とMRI検査との使い分け、造影が望ましい場合、被曝の不安に対する患者様への説明、市の肺癌集団検診に関連する胸部単純X線写真とCT検査、肺結節のFollowについて、早期アルツハイマー型認知症診断支援システムなどについて解説して下さいました。 鈴木千織先生によりますとCT検査とMRI検査との使い分けは、その領域によってかなり異なるようです。整形外科領域ではやはりMRI検査の方が有用である場合が多いようでした。造影剤使用の検査はCT検査でもMRI検査でも行いますが、ヨードまたはヨード造影剤に過敏症の既往のある方や重篤な甲状腺疾患の既往のある方は絶対禁忌であるということです。また気管支喘息、腎障害、多発性骨髄腫、褐色細胞腫などの既往のある方も原則禁忌であるということです。腎機能障害に関しては、e-GFR 60以上の方は外来にて造影検査可能であるが、e-GFR 30未満の場合には造影検査は施行しないということです。Cre 1.5以上の方も原則造影検査をしないということでした。 こちらからよく依頼するMRI検査については心臓ペースメーカー、閉所恐怖症、人工内耳などは禁忌であるということです。全身状態不良、タトゥー、協力困難、妊娠、化粧、脳動脈瘤クリップ(古い場合)などは検査困難であるそうです。 福島原発事故のことなどもあり、検査による被曝に対する不安を訴える方も多く見られます。鈴木千織先生によりますと、医療被曝説明マニュアルがあり、被曝レベルを1,2,3に分類しているということです。レベル1は50mGy、レベル2は50mGy~200mGy、レベル3は200mGy以上と分類されるそうです。そして被曝レベルに応じた説明をするということでした。レベル1は単純レントゲン検査や単純CTなど、レベル3は血管造影、IVR、心臓カテーテル検査、注腸造影検査などが該当するそうです。妊娠初期(受精から8週間まで)には生殖腺に100mGyの被曝をした場合に胎児への影響があるので、レベル2以上の検査はしない方がよいということでした。被曝を伴う検査は被曝をするデメリットと検査をしないデメリットのトレードオフです。検査をしないデメリットを丁寧に説明し、理解を得ることが重要ですね。数値とレベルで説明すると確かにわかりやすいものだと感心いたしました。 どれも参考になる話ばかりで、日常診療に活かすことのできる講演でした。 |